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王子と姫の間でオロオロ
しおりを挟む「アーネラ…様がアティカスを…??」
えっ、本当に?でも分からない。アーネラ様って後宮入りを望んでいるんだよね?
アーネラ様は、フーフーと息を落ち着かせながら、ハンカチで額に浮かぶ汗を拭く。
うん、一度落ち着いた方が良いよ。
「アーネラはアティカスの側にいたいが為に、この国の後宮入りを願っていたんだ。そうだよね?アーネラ」
「…あなたは最初から分かっていた訳?」
「君のアティカスに対する態度を見ていれば誰でも分かると思うけど。気付いてないのは本人だけじゃないかな」
「…ふん、あなたのそういう所が好きじゃないのよ」
「まあ、君に何て思われようがどうでもいいけど、俺にはどうもしてあげられないよ」
「それは…ニナの為よね」
スッとニナに視線を寄こし、ニナを優しげに見つめる。
「待って、アーネラ様はアティカスが好きなのに、王子の後宮に入ろうと思っていたって事?」
「…愚かな願いだとは分かっていたのだけれどあの方の側にいられるならと、ルイの婚約者候補の話しに飛び付いてしまったの。
他の国に嫁いでしまえば、もう2度とお会いする事が出来ないような気がして…それならばせめてお近くにいたいと」
そういう事か…。そうだよね。お姫様となれば自由に恋愛をするのは難しいのだろう。
「軽蔑しましたか?ニナ…」
切なそうに肩を落とすアーネラ様。オレはアーネラ様の側に行き、アーネラ様の両手を握る。
「そんな訳ないよ。オレ、アーネラ様の事大好きだよ。だからそんな顔しないで」
「ニナ…」
「アティカス、めちゃくちゃ良い男だもんね!」
「…はい…」
頬を赤く染める、アーネラ様が可愛い。
これってどうにかならないのか?
ちらりと王子を見る。
ふぅっとオレの顔を見て、ため息をつく王子。
「さっきも言ったけど、アティカスとアーネラなら何とかなるんじゃないの?」
「勝手な事を言わないで。私はあなたから断られた身よ?国と国との関係だって危ういじゃないっ」
「今回の事で、それ相応のモノは君の国に返しているし君のお父上とは上手く話をつけたよ。
それよりも、暴走してうちの屋敷にまで出向いた娘を、申し訳ないと恥じていたけど」
「うっ…」
「アティカスの事も話しておいた。
有能で立派な家柄の騎士がいるとお話ししたら、興味を示されていたよ。
君のお父上は、確固たる国と国の繋がりが是が非でも欲しいみたいだ。
もう少し押してみたら、上手く行く話しだと思うよ。
もちろんアティカスや、アティカスの家族の意思も必用だけどね」
「なっ…」
突然そんな事を言われて、頭が真っ白状態のアーネラ様。
そりゃそうだよね、自分の知らない所でどんどん話が進んでるんだもん。
オレも自分の親に好きな人とか知られたら恥ずかしいし…。
心配になり、プルプルと震えるアーネラ様の握ったままの手を、大丈夫大丈夫と手を撫でる。
「かっ…勝手な事を…」
キッと王子を睨み付けるアーネラ様に、ヒヤヒヤしてしまう。
「確かに勝手な事をしたかもね。でも君はアティカスじゃない他の国の人間と結婚する事になってもいいの?」
「…そっそれは…」
「他国に交友のある王族の中でも、俺の事が一番鼻についているただろう?そんな俺の婚約者候補にひとつ返事で手をあげる位だ。そうまでしてアティカスの側にいたい君なら、これをチャンスとしないでどうするの?」
アーネラ様は、ええっ?とか、ん…?とか考え込み出した。
なんだか王子の言葉に、アーネラ様が追い込まれているのか?
いや、これは良い方向に話が流れているんじゃないか?
だって、アーネラ様とアティカスのカップルって最高にお似合いな気がする!
オレも何か、アーネラ様の背中を一押しする言葉を!!!!と熱い言葉を考えていると…。
「というか、ニナはいつまでアーネラの手を握っているの?」
と、ニッコリ笑顔なのに全然笑ってない気がする王子に怯え、サッとアーネラ様の手から自分の手を引いたオレでした。
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