君に何度でも恋をする

明日葉

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第1章 カウントダウン

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  食事をしながら、きれいな姿で食べる花音と、同じように姿勢良く美味しそうに食べる隼人を見つめ、御調の一家は顔を見合わせて頷きあう。最初からわかっていたことではあるけれど、恭一がしたことは、残念すぎる悪手だったということなのだろう。
「ばかだばかだとは思っていたけど、つくづくばかな子だったわ」
  ぼやくように姉、真紀が言えば、両親は苦笑いしかできない。様子がおかしいと怪しまれ、花音のことを話す羽目になった。きちんと話して責任を考えさせるのも、親の務めだと、花音の行動を非常識だと怒っていたのだ。ただ、普段の恭一の女性…いや、女の子たちとの関わり方を思えば、むしそそちらに問題があるのは家族でも認めるしかないところはあり、花音に信用できないと言われれば、大丈夫と請け負うこともできないのだ。
「ねえ、弟のことはもう、なんとも思ってないの?子供を育てれば、それだけ思い出すでしょう?」
「なんとも…そうですね。別れ話をした瞬間からなんとも思わずにいられるとしたら、それは切り出した方で。大丈夫か、と言われればわからないですよ。そんなの」
「え?」
  誰よりも翔が食いついたことに、ひっそりと笑いながら、真紀は先を促す。
「そういうふうに、気持ちを外から急にもう終わり、って言われたので、実際のところどうなのかとか、分かりません。ただ、例えば、今あの人から甘い言葉を言われたりしても、信じられないことだけは確かです」
  でも、それだけなのだと花音は笑う。信用できないって、相当だと思うのだがと翔が思っていれば、同じようなことを感じているんだろうなという顔を御調の家族もしている。
「それに、そんな風にふらふらしていて定まらない要素は、子供にはいりません」
  言い切られてしまえばそのとおりで。けれど、そう言えるのにどれだけ辛い気持ちを行き来したのかと思えば、真紀の目が和らいだ。
「ああいうばかに捕まったあたり、男を見る目はなさそうだけど、その辺、ちゃんと教えてあげるわ」
  不意にそう言って笑われれば、きょとんとしてから声を立てて笑ってしまう。男を見る目がない、は、他からも言われたなあと思いながら。




  同じ商業施設。
  今日は出かけるのかと母に聞かれ、出かけると答えていたけれど、必要なものがあって行きがけに恭一は寄っていた。まさか、今日そこに寄り付かないことの確認のために聞かれたなんて、考えが及ぶはずもない。
「優美香、ごめん、待たせた」
  会計を済ませる間、店舗の外にいた小柄な女性に声をかければ、なんだか不機嫌そうな顔をしている。
  前の彼女の同級生。彼女と遊ぶ時によく彼女の同級生たちが一緒にいた。その中の1人で、優美香が気になるようになって、彼女とは別れた。そうは言わずに別れを伝えたけれど、気づいていたようで言い当てられた。
「どうしたの?」
「なんでもない」
  そう答えれば、ころっと華やかな笑顔になる。
  そんな風だけれど、それでは今付き合っているのかと言われればそうではない。そんなつもりはないと言われれば、そうなのかとしか言えないし。ただ、確かに、彼女、花音と付き合っている間、自分の方に向けようという意思が優美香からは感じられたけれど。もてるからなのか、無意識に、恭一は勝算のある勝負しか、しないから。
  とりあえず、そう?と笑顔で応じながらそれとなく周囲を見回せば、信じられないものが目に入った。
  姉と、花音が話している。
  たまたま、両親と翔、そして隼人は先に駐車場に行っていた。会計をどちらがもつかでしばらくやりとりをした後、そのままなんとなく話が続いていた年の近い女2人、少し立ち話をしていたのだが、それを恭一が見つけた。
(なんで…)
  未練があるからと言って、家族に近づくタイプではないことは流石にわかる。
「何見てるの?」
  不意に、腕に重みがかかった。優美香が甘えるように腕を掴んでいた。そういえば、付き合った中で花音だけが、背の高い女の子だった。
「なんでもない」
  答えてもう一度目を戻せば、もうそこには姉しかいない。なんとなく、優美香がわかっていてそのような行動をしたような気がしてしまった。
  いや、気がした、ではない。あとで、SNSを見れば、「とある人と遭遇したみたいだけど」と遭遇した場所と一緒に書いてあるのを見つけた。恭一は今さらながら、なんとなく、嫌な感じがする。悪く考えるのは悪い癖と、振り払うけれど。





「どうした?」
  こちらも同じような言葉を、翔が花音にかけていた。
「え?」
「しわが寄ってる」
  眉間に手を当ててやわやわと撫でれば、くすぐったそうに花音が笑った。助手席に乗り込んだ表情の固さに驚いたのだけれど。
「彼がいた」
「彼って…」
  そこは確認しての今日ではなかったのかと驚けば、花音は肩をすくめる。
「行動読めない人だし。真紀さんが見つけて、教えてくれた。彼女かなぁ?と一緒だった」
  もう、彼女がいるのかと翔は眉をひそめる。他の人に気持ちがいったとは聞いたけれど。ただ、そこはさらっと流した花音に、それ以上は追求しない。
「どこか寄る?まっすぐ帰る?」
「まっすぐ帰る」
  迷いなく答えたのをに、つい笑みがこぼれる。少しだけ、距離が縮まった気がするような会話。まあ、そう思っているとまた敬語に戻ってしまうのだけれど。
「疲れたんだ?」
  図星でそっぽを向く花音の頭を一撫でしながら、翔は後部座席の隼人にも声をかけた。こっちなら、花音の家族がいる家も近いはずだ。寄らないのだな、と思い、隼人はいいのだろうかという気持ちもあって。
「隼人は?」
「ぼくも帰る」
  隼人に聞いてくれた翔の意図を察して、花音はその横顔を見た。さりげない気遣いで居心地よくしてくれる人。
「よし。家に帰ってごろごろしよう」
  うきうきとそう言った翔は、花音の視線には気づかないふりをして車を走らせる。
  確かに、花音と隼人には、自然に優しくなれる。ただ、先ほどのように元カレの話で、不穏な流れがあると苛立ちもする。気持ちが動く。ただ、誰にでも同じように、親切に振舞うことはできる。あくまでそれは、そう振る舞っているだけで、そうすることが便利なだけでそうしているのだけれど。
  それを、見分けてもらえるといいなぁとふと願う。
  見分けてもらえるように、見分けられなくても、大事にしているのだと分かってもらえるように、まっすぐ家に帰ればリビングのソファで、釈然としない様子の花音を足の間に座らせて抱きかかえながら寛ぐのだ。
「なんで…」
  いい加減に慣れればいいのに、未だに花音は疑問の声をあげる。それを笑ってスルーしながら、片方の手で隼人も抱えてきゃっきゃと楽しませる。
  こんな風にずっと続くはずなのだ。自分が望むように。




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