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第4章 さいかい
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何が楽しいのか、花音の素肌の腰を飽きもせずに撫で続ける翔に、恥ずかしいを通り越して呆れながら、くすぐったさに思わずその手から逃れようと動けば、これが狙いかと疑いたくなるほどに、翔の体と密着してしまう。
喉の奥で笑うような声が頭上から降ってきて、花音は恨めしげにその端麗な顔を見上げた。
まあ、何度か週刊誌も賑わせたようだし。知らなかったけど。こちらの都合でお願いしていたわけで、この人は自由なわけだし。いや、婚姻届は、この人が勝手に出しちゃったんだけど。
遊びたいなら、離婚届渡してあるんだから出してしまえばいいのに、それをしなかったのは、その方が便利だったからかなぁ、とか。
「何考えてるの?」
花音の髪に鼻先をすり寄せながら問いかける甘い声に、花音は気づく風もなく、だから容赦なく口にする。
「いや、さすが、手慣れてるなぁ、と思っただけですよ?」
「はぁっ!?」
さすがに面食らって上半身を起こし覗き込めば、何の含みもなさそうな、きょとんとした目が見上げるから、なおさら翔は辛い。
さすがって、手慣れてるって。
どう思ってるんだ…って、そう思ってるんだよな、と頭を抱える。
そして、反省する思い当たる節も、残念すぎるが、ある。
あれは、ショックすぎて荒れていたんだと。そう言ってみてもきっと、言い訳にしかならないんだけど。
「ああ。別に責めてませんよ?」
「…ああ、それはそれで、傷つくのがわかった。責めて?お願いだから」
「え、Mさん?」
「違うからっ」
責めてないと言うのが、興味がないと言われているようにも感じて、なかなかダメージを受けるのだと実感して伝えれば、またずれたことを言う。
「ねえ花音。わざと?」
「へ?」
「ああ。別に怒ってませんよ?離婚届も出さずにとか。その方が、都合が良かったのかなぁと。こちらも都合でお願いしたんですから、そんなこと責めません。でも、その方が都合が良いとか思ってしまう相手に、失礼だなぁとは、思いますけど」
悪気も言外の意図もなく、つらつらと発せられた言葉の中に、どうしてこれだけ致命傷になりそうな言葉が詰め込まれるのか。
それを口にしているのが花音だから、これほどの攻撃力があるんだけど。
「花音サン、ほんと、許してください」
「許す?て、何を?」
ああ、なんか、やっと隼人の去り際の言葉の意味を実感した気がする。
書類上の奥さん。
だから、追求しない。責めもしない。
そうとられても仕方ない行いをしてきたことは、認めるしかない。
あのね。
と、翔は体を入れ替え、自分のそれぞれの手を花音の手と、指を絡ませてベッドに縫い付け、驚いた顔をしている花音を見下ろす。
なんて無防備。
無防備でいられるような相手じゃないと、思い知らせたはずなのに。
「そんな風に、無謀いでいちゃダメだよ、花音」
え、と、花音が首を傾げる。
その、隙だらけの首筋に口を寄せ、心地よい香りを吸い込みながら淡く唇を触れる。
「オレは、花音しかいらないから。これからもし、何か騒がれてもそれはガセだけど。でも、嫌だったり、気になることがあったりしたら、絶対に直接言って。と言うか万が一騒がれているのに何も言ってくれなかったらオレが不安になって問い詰めるかも」
「は?」
うん、さすがに、そう口をついちゃうような言い草だよねと、翔も思ったけれど。
でも口にしてみたら、それはもう、確実にそうなるなと自分でも想像できる姿で。
「だから、オレに聞かれる前に、ちゃんと言うんだよ?」
「意味わからないんですけどっ。大体、わたしそういうの疎いから、気がつかないんですけどっ」
「え、興味ないってこと?」
「そうじゃなくて」
うん、手に負えないって、顔してるね。
それでいい。
「花音」
「…はい?」
もう、いたたまれない、という顔で恨めしげに見上げる顔が、控えめに言っても愛しくてたまらない。
「今また、君のことが好きになった」
驚いた顔で固まった花音。
引いたかな、と翔は様子を見守る。
そう思ったら、不意にあはっ、と柔らかく笑った。
「わたしも、ちょっとおかしなことを言う翔くんが新鮮で…好きになっちゃいました」
翔の顔が緩んでしまう言葉は、途中ではっとしたように照れてしまったのか、だんだん消え入りそうになる。
それでも、花音は、翔に縫い付けられた手を自分からキュ、と握り込んで、恥ずかしいのを押し殺すように口をひき結んでなんとも微妙な顔になってから、思い切ったように口を開いた。
目を逸らしてしまったのは、許してあげたいくらいに。
照れ屋の花音が、なんとか言葉にして、たまには伝えないとと、ありったけのなけなしの何かいろんなものを振り絞って。
「あなたに、何回も、恋してるみたいです」
「みたい…」
そこは不服そうに、でも、慌てて目を向けた花音は、呆れるほどに緩み切った翔の顔を間近にみて、騙されたと悟る。声だけで、演技をされて。
「君に、何度でも恋してる。何度でも、恋できる。…何度も恋に落ちるなんて、贅沢だな」
顔を手で覆いたいのに、せめてどこかに顔を隠したいのに、それをさせてもらえない。
花音は身悶えする思いで、逃げ場を探し。逃げ場が目の前の、自分が逃げたくなっている相手のところにしかないと、すぐ近くにあった翔の肩口に額を寄せ、そこに顔を隠す。
君を襲っているの、オレなんだけど。
と、笑い声で言われても、花音にはこれ以上安心できる逃げ場所がないのだから、どうしようもない。
喉の奥で笑うような声が頭上から降ってきて、花音は恨めしげにその端麗な顔を見上げた。
まあ、何度か週刊誌も賑わせたようだし。知らなかったけど。こちらの都合でお願いしていたわけで、この人は自由なわけだし。いや、婚姻届は、この人が勝手に出しちゃったんだけど。
遊びたいなら、離婚届渡してあるんだから出してしまえばいいのに、それをしなかったのは、その方が便利だったからかなぁ、とか。
「何考えてるの?」
花音の髪に鼻先をすり寄せながら問いかける甘い声に、花音は気づく風もなく、だから容赦なく口にする。
「いや、さすが、手慣れてるなぁ、と思っただけですよ?」
「はぁっ!?」
さすがに面食らって上半身を起こし覗き込めば、何の含みもなさそうな、きょとんとした目が見上げるから、なおさら翔は辛い。
さすがって、手慣れてるって。
どう思ってるんだ…って、そう思ってるんだよな、と頭を抱える。
そして、反省する思い当たる節も、残念すぎるが、ある。
あれは、ショックすぎて荒れていたんだと。そう言ってみてもきっと、言い訳にしかならないんだけど。
「ああ。別に責めてませんよ?」
「…ああ、それはそれで、傷つくのがわかった。責めて?お願いだから」
「え、Mさん?」
「違うからっ」
責めてないと言うのが、興味がないと言われているようにも感じて、なかなかダメージを受けるのだと実感して伝えれば、またずれたことを言う。
「ねえ花音。わざと?」
「へ?」
「ああ。別に怒ってませんよ?離婚届も出さずにとか。その方が、都合が良かったのかなぁと。こちらも都合でお願いしたんですから、そんなこと責めません。でも、その方が都合が良いとか思ってしまう相手に、失礼だなぁとは、思いますけど」
悪気も言外の意図もなく、つらつらと発せられた言葉の中に、どうしてこれだけ致命傷になりそうな言葉が詰め込まれるのか。
それを口にしているのが花音だから、これほどの攻撃力があるんだけど。
「花音サン、ほんと、許してください」
「許す?て、何を?」
ああ、なんか、やっと隼人の去り際の言葉の意味を実感した気がする。
書類上の奥さん。
だから、追求しない。責めもしない。
そうとられても仕方ない行いをしてきたことは、認めるしかない。
あのね。
と、翔は体を入れ替え、自分のそれぞれの手を花音の手と、指を絡ませてベッドに縫い付け、驚いた顔をしている花音を見下ろす。
なんて無防備。
無防備でいられるような相手じゃないと、思い知らせたはずなのに。
「そんな風に、無謀いでいちゃダメだよ、花音」
え、と、花音が首を傾げる。
その、隙だらけの首筋に口を寄せ、心地よい香りを吸い込みながら淡く唇を触れる。
「オレは、花音しかいらないから。これからもし、何か騒がれてもそれはガセだけど。でも、嫌だったり、気になることがあったりしたら、絶対に直接言って。と言うか万が一騒がれているのに何も言ってくれなかったらオレが不安になって問い詰めるかも」
「は?」
うん、さすがに、そう口をついちゃうような言い草だよねと、翔も思ったけれど。
でも口にしてみたら、それはもう、確実にそうなるなと自分でも想像できる姿で。
「だから、オレに聞かれる前に、ちゃんと言うんだよ?」
「意味わからないんですけどっ。大体、わたしそういうの疎いから、気がつかないんですけどっ」
「え、興味ないってこと?」
「そうじゃなくて」
うん、手に負えないって、顔してるね。
それでいい。
「花音」
「…はい?」
もう、いたたまれない、という顔で恨めしげに見上げる顔が、控えめに言っても愛しくてたまらない。
「今また、君のことが好きになった」
驚いた顔で固まった花音。
引いたかな、と翔は様子を見守る。
そう思ったら、不意にあはっ、と柔らかく笑った。
「わたしも、ちょっとおかしなことを言う翔くんが新鮮で…好きになっちゃいました」
翔の顔が緩んでしまう言葉は、途中ではっとしたように照れてしまったのか、だんだん消え入りそうになる。
それでも、花音は、翔に縫い付けられた手を自分からキュ、と握り込んで、恥ずかしいのを押し殺すように口をひき結んでなんとも微妙な顔になってから、思い切ったように口を開いた。
目を逸らしてしまったのは、許してあげたいくらいに。
照れ屋の花音が、なんとか言葉にして、たまには伝えないとと、ありったけのなけなしの何かいろんなものを振り絞って。
「あなたに、何回も、恋してるみたいです」
「みたい…」
そこは不服そうに、でも、慌てて目を向けた花音は、呆れるほどに緩み切った翔の顔を間近にみて、騙されたと悟る。声だけで、演技をされて。
「君に、何度でも恋してる。何度でも、恋できる。…何度も恋に落ちるなんて、贅沢だな」
顔を手で覆いたいのに、せめてどこかに顔を隠したいのに、それをさせてもらえない。
花音は身悶えする思いで、逃げ場を探し。逃げ場が目の前の、自分が逃げたくなっている相手のところにしかないと、すぐ近くにあった翔の肩口に額を寄せ、そこに顔を隠す。
君を襲っているの、オレなんだけど。
と、笑い声で言われても、花音にはこれ以上安心できる逃げ場所がないのだから、どうしようもない。
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