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第23話・歴史の歯車を変えようと
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…ひとまず、落ち着いて考えてみた。そもそもの目的は前世の過ちを繰り返さないことだけ。
報われないことに固執しても、余計に苦しむだけ。
今の私は殿下の心を勝ち取るなんて思ってはいけない。最初にそう決めたのでしょう?
だったら、殿下のことは一旦おいておくべきだった。
それよりも大事なのは、あの平民女に前世のようにうまい話を独り占めさせないこと。
だからって前世でエリナのしたことを私がすれば、前世のような結末を免れるのだろうか?
もしそうだとしたら…
「殿下、もうすぐ生徒会選挙ですが、殿下が就任したら、身体能力の 高い生徒に剣術を学ばせるというのはいかがでしょうか?
殿下が我々の勝利を保証できる素晴らしい剣術をお持ちなのは知っていますが、他の者が弱くてはあまりにも威厳がありません。
残り1ヶ月では、学院の生徒全員を殿下と同じレベルまで鍛えられるとは思えませんが、少なくとも何も準備しないよりはましかと思います。」
「もし剣術大会となったら、その時我々は十分な準備ができていることになりますし、もしそうならなかったとしても、体質改善や自衛に役立ちます。
また、王都で誘拐事件が多発するのも、生徒たちの基本的な護身力の欠如を反映しています。もしそういう授業があれば、このような事件はある程度減らせるのではないかと思います。」
「殿下が文武両道の王室メンバーとして、剣術の授業を始めれば、必ず多くの生徒からの支持を得られるのでしょう。勿論、タロシア公爵家の者として、誘拐にあった者として、個人的にもこの様な授業を受けたいと思います。」
私は剣術の授業と王都で起きた学生誘拐事件を関連付けて、この様なロジックにあった言い訳をした。そうすれば、私は正々堂々と剣術授業に参加することができる。
残念だったわね、今度はあなたの出番はないよ、エリナ。
そう思うと、私の心の内にあった憂鬱が少し払われた気がした。
「とてもいい提案だね。剣術授業の開催方法と内容は私の方で制定しよう。」
「ご賛成頂きありがとうございます、殿下」
私は善意の微笑みを返した。
「…」
「…」
会話が終わると、私と殿下はまたとてつもなく気まずい沈黙に戻った。
前世で殿下がエリナと一緒にいた時はあんなにもにぎやかに談笑してたのに…
どうして私とだと、こんなにも退屈そうなの?いくら全力でそんなことを考えないようにしても、この分かりやす過ぎる差はどうしても気になって仕方がない。
…諦めよう。そろそろ認めよう。自分はこんなにも無能で無力で、殿下とまともに会話することすらできないと。そろそろ言い訳を作ってここから出ないと。
「リリス…」
「殿下…」
しかし、予想外なことが起きた。殿下と私が同時に相手を呼びかけたのだ。
「…?」
殿下はなにか言いたいことがあるの?そして空気は再び気まずくなっていた。
「殿下、どうぞお先に…」
殿下がなかなか話を始めないのを見て、私の方から殿下に促した。
「…いや、なんでもないよ」
カシリアは軽くため息をついた。
殿下は一体何を言いたかったの?私と同じで、この場を離れる言い訳を探していたの?私はまだ殿下が何を考えているのかを推測できるほどには親しくなかった。
「この度はありがとうございました。明日の王家学術能力テストの準備がありますので、私は先に戻って勉強します」
私はこのタイミングで離れる意志を表した言葉を言い出した。
「うん、分かった」
殿下の許しを得たあと、私はゆっくりと起き上がって礼をし、優雅に休憩室を後にした。
その後の授業は、ずっと集中できないままだった。この授業は本来明日のテスト内容についての説明で、生徒全員にとってとても大事な授業だったが、それでも私は集中できなかった。
いくら一度聞いた授業が退屈なものだったとしても、前世での自分は今みたいに集中できないことはなかった。
まあ、どうせテストなんて、もうとっくに論外なのだからと、最終的に私は授業を聞くことを諦めた。この延々とした散慢の中で、無事放課まで耐え切った。
放課後、考えてみれば、本当に何もすることがない。自分には親しい友人はいないし、誰かと深く付き合うつもりもない。貴族社交界は見た目だけは眩しく輝いた、何もかも豪華で上品で、誰もが優しくて礼儀正しいところ。しかし実際には、裏に数え切れない程の暗黙のルールや複雑な関係が隠されている。
学生時代は比較的単純な関係だったとしても、卒業すると、その関係はすぐに複雑な利害関係になってしまう。貴族同士の比較や派閥争いなんてどうでもいい、ただ自分さえ良ければ良いと思っている。
前世でも今でも、考えを改めるつもりはない。
いつも通りに帰りの馬車に乗った。この人生でも、学院と家の往復という簡単な生活を送ろう。
私というのは本当に最悪な人間ね。奇跡的に生まれ変わってきたのだから、前世での因縁を水に流し、自分の令嬢という役割だけしっかり演じればよかったのに。でも私にはそれができなかった。自分が勝手に作ったわだかまりに囚われ傷つけられ、過去の痛みを振り払うことができなかった。
エリナ…私はそんなに簡単に全てをあなたに譲るわけにはいかない。
しばらくして、馬車は屋敷に戻った。馬車の音を聞いたロキナは早々に出迎えにきてくれた。
「お嬢様、おかえりなさいませ。」
「ただいま。父上は、その…戻った?」
答えはもう知っているはずなのに、あえてまた口に出して聞いた。前世では父上は今日まで毎日ずっと遅くに出かけていき、公爵領の辺境でエリナやミカレンと会っていた。そして数日後に事情を私にどう説明するか相談していた。
そう思うと、私の心は深く痛んだ。
「今日も旦那様はそんなに早くにはお戻りになりません。やはりまだお仕事がお忙しいのでしょう。ご心中お察ししますが、もう暫くしたら、旦那様のお仕事も落ち着くでしょう」
ロキナは私の気持ちを傷つけるのを恐れて、気まずそうに丁寧に説明した。
「心配しないでロキナ、父上は…数日後には早めに戻ってくれると思うわ、きっと」
私はいつものように笑顔で言った。
「そうですね。数日後お嬢様は生徒会会長になります。そうなったら旦那様はきっと早めにお戻りになるでしょう。」
「うん、じゃあ私明日のテストの準備をしにいくわね」
報われないことに固執しても、余計に苦しむだけ。
今の私は殿下の心を勝ち取るなんて思ってはいけない。最初にそう決めたのでしょう?
だったら、殿下のことは一旦おいておくべきだった。
それよりも大事なのは、あの平民女に前世のようにうまい話を独り占めさせないこと。
だからって前世でエリナのしたことを私がすれば、前世のような結末を免れるのだろうか?
もしそうだとしたら…
「殿下、もうすぐ生徒会選挙ですが、殿下が就任したら、身体能力の 高い生徒に剣術を学ばせるというのはいかがでしょうか?
殿下が我々の勝利を保証できる素晴らしい剣術をお持ちなのは知っていますが、他の者が弱くてはあまりにも威厳がありません。
残り1ヶ月では、学院の生徒全員を殿下と同じレベルまで鍛えられるとは思えませんが、少なくとも何も準備しないよりはましかと思います。」
「もし剣術大会となったら、その時我々は十分な準備ができていることになりますし、もしそうならなかったとしても、体質改善や自衛に役立ちます。
また、王都で誘拐事件が多発するのも、生徒たちの基本的な護身力の欠如を反映しています。もしそういう授業があれば、このような事件はある程度減らせるのではないかと思います。」
「殿下が文武両道の王室メンバーとして、剣術の授業を始めれば、必ず多くの生徒からの支持を得られるのでしょう。勿論、タロシア公爵家の者として、誘拐にあった者として、個人的にもこの様な授業を受けたいと思います。」
私は剣術の授業と王都で起きた学生誘拐事件を関連付けて、この様なロジックにあった言い訳をした。そうすれば、私は正々堂々と剣術授業に参加することができる。
残念だったわね、今度はあなたの出番はないよ、エリナ。
そう思うと、私の心の内にあった憂鬱が少し払われた気がした。
「とてもいい提案だね。剣術授業の開催方法と内容は私の方で制定しよう。」
「ご賛成頂きありがとうございます、殿下」
私は善意の微笑みを返した。
「…」
「…」
会話が終わると、私と殿下はまたとてつもなく気まずい沈黙に戻った。
前世で殿下がエリナと一緒にいた時はあんなにもにぎやかに談笑してたのに…
どうして私とだと、こんなにも退屈そうなの?いくら全力でそんなことを考えないようにしても、この分かりやす過ぎる差はどうしても気になって仕方がない。
…諦めよう。そろそろ認めよう。自分はこんなにも無能で無力で、殿下とまともに会話することすらできないと。そろそろ言い訳を作ってここから出ないと。
「リリス…」
「殿下…」
しかし、予想外なことが起きた。殿下と私が同時に相手を呼びかけたのだ。
「…?」
殿下はなにか言いたいことがあるの?そして空気は再び気まずくなっていた。
「殿下、どうぞお先に…」
殿下がなかなか話を始めないのを見て、私の方から殿下に促した。
「…いや、なんでもないよ」
カシリアは軽くため息をついた。
殿下は一体何を言いたかったの?私と同じで、この場を離れる言い訳を探していたの?私はまだ殿下が何を考えているのかを推測できるほどには親しくなかった。
「この度はありがとうございました。明日の王家学術能力テストの準備がありますので、私は先に戻って勉強します」
私はこのタイミングで離れる意志を表した言葉を言い出した。
「うん、分かった」
殿下の許しを得たあと、私はゆっくりと起き上がって礼をし、優雅に休憩室を後にした。
その後の授業は、ずっと集中できないままだった。この授業は本来明日のテスト内容についての説明で、生徒全員にとってとても大事な授業だったが、それでも私は集中できなかった。
いくら一度聞いた授業が退屈なものだったとしても、前世での自分は今みたいに集中できないことはなかった。
まあ、どうせテストなんて、もうとっくに論外なのだからと、最終的に私は授業を聞くことを諦めた。この延々とした散慢の中で、無事放課まで耐え切った。
放課後、考えてみれば、本当に何もすることがない。自分には親しい友人はいないし、誰かと深く付き合うつもりもない。貴族社交界は見た目だけは眩しく輝いた、何もかも豪華で上品で、誰もが優しくて礼儀正しいところ。しかし実際には、裏に数え切れない程の暗黙のルールや複雑な関係が隠されている。
学生時代は比較的単純な関係だったとしても、卒業すると、その関係はすぐに複雑な利害関係になってしまう。貴族同士の比較や派閥争いなんてどうでもいい、ただ自分さえ良ければ良いと思っている。
前世でも今でも、考えを改めるつもりはない。
いつも通りに帰りの馬車に乗った。この人生でも、学院と家の往復という簡単な生活を送ろう。
私というのは本当に最悪な人間ね。奇跡的に生まれ変わってきたのだから、前世での因縁を水に流し、自分の令嬢という役割だけしっかり演じればよかったのに。でも私にはそれができなかった。自分が勝手に作ったわだかまりに囚われ傷つけられ、過去の痛みを振り払うことができなかった。
エリナ…私はそんなに簡単に全てをあなたに譲るわけにはいかない。
しばらくして、馬車は屋敷に戻った。馬車の音を聞いたロキナは早々に出迎えにきてくれた。
「お嬢様、おかえりなさいませ。」
「ただいま。父上は、その…戻った?」
答えはもう知っているはずなのに、あえてまた口に出して聞いた。前世では父上は今日まで毎日ずっと遅くに出かけていき、公爵領の辺境でエリナやミカレンと会っていた。そして数日後に事情を私にどう説明するか相談していた。
そう思うと、私の心は深く痛んだ。
「今日も旦那様はそんなに早くにはお戻りになりません。やはりまだお仕事がお忙しいのでしょう。ご心中お察ししますが、もう暫くしたら、旦那様のお仕事も落ち着くでしょう」
ロキナは私の気持ちを傷つけるのを恐れて、気まずそうに丁寧に説明した。
「心配しないでロキナ、父上は…数日後には早めに戻ってくれると思うわ、きっと」
私はいつものように笑顔で言った。
「そうですね。数日後お嬢様は生徒会会長になります。そうなったら旦那様はきっと早めにお戻りになるでしょう。」
「うん、じゃあ私明日のテストの準備をしにいくわね」
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