罪人・完璧令嬢リリスの死に戻り~お伽噺の王子様とお姫様の幸せ、そしてそれを傍観しているもう一人のお姫様の物語~

悪役令嬢リリス

文字の大きさ
44 / 50

第44話・運命の日-2

しおりを挟む
学院のパーティー会場は、流石に父王の開催するパーティーらしく、きらびやかな飾りと豪華な食事で、とても素晴らしい。普段から質素な暮らしをしている平民はもとりより、下級貴族にとっても、これは人一生に一度の贅沢なパーティーだろう。

  この盛大なパーティーに、王国各地から貴族が一堂に集まり、身分の違う貴族達がグループを形成して交流を深めていた。

  カシリアはパーティーに慣れている。国王の発言、自分の発言、すべてが整然と何事もなく進んでいった。全ての流れが終わると、カシリアは理由をつけて、自分を囲む貴族の少年女性の群れから急いで抜け出した。

  やるべきことは済んだ、さっさと食べ物をとって離れよう。カシリアはパーティー会場の隅へ歩きながらそう考えていた。このままパーティー会場から抜け出そうとしたその時、不意に人目のつかない片隅に不思議な貴族の夫人を見つけた。

  この見たことのない貴族の夫人は、自分の入るグループを見つけられないようで、静かにパーティー会場の隅に立っていて、また彼女も自ら貴族に話しかけようとはしていなかった。

  しかし彼女が身につけていたのは、サファイアを散りばめた最近流行りの極めて豪華なドレスだった。その高価なデザインとアクセサリーから見て伯爵かそれ以上の家の出身に違いない。

  おかしい、最近学院には新たに生徒は入学していないはずだ。

  あるとしても、その生徒の家族をカシリアが知らない訳が無い。なぜならカシリアはほぼ全ての上流貴族を知っているからだ。

  もし忍び込んできたのだとしても、彼女の上品な雰囲気と仕草から見て、高度な貴族教育を受けてきた者に間違いない。

  更に、今回は父王自ら出席するパーティーだから、警備がいつもより厳しい。そう容易く忍び込める筈がない。

  だとしたらそれは——彼女はとある爵位の高い貴族の新たな婚約者か愛人か。

  だがこの夫人はどの貴族の男性とも接触せず、ただ緊張した面持ちで、誰かを探していたようだった。

  本当におかしな夫人だ。

  でもカシリアはそんな些細なことに拘らない。

  なぜなら、貴族の家の事情など自分とは全く無関係なことだから。

  貴族の少年女性達との関わりをなるべく避けようと、カシリアは片手にグラス、もう片手には腹の足しになる肉を載せた皿を持って、黙ってバルコニーへ向かった。

  普通パーティーでは、バルコニーへ行く人はそうそういない。

  極まれに交際が上手くいかずショックを受けた貴族が景色を眺めてくつろぐことはあったかもしれないけど、バルコニーで談笑する人はいない。

  バルコニーとホールの間は分厚いカーテンがあり、貴族として醜態を晒したとしても、誰にも気づかれない。

  カシリアにとっては、そこがくつろぐための良い場所だった。カシリアはこっそりと最奥のバルコニーへ、カーテンを開けて出た。

  「あ…」

  そこには意外にも先客がいた。しかも自分と歳の近い貴族の女性だった。

  待て、貴族??

  目の前の若くてキレイな女性は、食べ物をいっぱい載せた皿を持ち、必死に食べ物を口に詰め込んでいる…

  あれは…貴族のあるべき姿じゃないぞ!?






















 ★★★お願いです★★★



 少しでも「もっと読みたい」や「いいね」などと思ってくださったら、



 ブックマーク登録・評価・コメントいただけますと、執筆の励みになります!



 何卒、よろしくお願い致します。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...