罪人・完璧令嬢リリスの死に戻り~お伽噺の王子様とお姫様の幸せ、そしてそれを傍観しているもう一人のお姫様の物語~

悪役令嬢リリス

文字の大きさ
50 / 50

第50話・運命の約束-4

しおりを挟む
活発で可愛らしい彼女が家に帰ったらどんな罰を受けるのだろうと想像すると、少し気の毒な気持ちになった。

 「まあまあ、ご婦人。彼女はオレが誰だか分からなかったのだから、そう立ち振る舞うことも当然だ。それにオレも久々にこんなに笑わせてもらった。実に面白いお嬢様だね。」

 お世辞ではなく、人を愉快にさせる不思議な女性だと本当に思っていた。

 「ところで、あなたは?」

 「わ、わ、わ、わたくしはミカレンと申します、殿下。」

 夫人は緊張のあまりうまく喋れず、結局これぐらいしか言い出せなかった。

 「家族は?その服装は明らかに平民の物ではないし、ここは平民が勝手に入って良い場所でもない。それにその優雅な所作をみれば、子供の頃から作法を学んできたことがわかる。」

 そう、それはずっと貴族として生きてきた者のみが出来る優雅な所作だった。それほどの所作は平民が数ヶ月の訓練でどうにかなるものではなく、小さい時からの習慣に違いない。だからこの夫人は、間違いなく貴族の家の生まれなのだ。

 「で、どの家の出身かな?」

 「…誠に申し訳ございません、殿下。このご質問に関しましては、数日後にご説明いたします。」

 何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。

 数日後?

 エリナと呼ばれた娘もさきほど自分は貴族になるのだと言っていた。

 つまり数日後に彼女らはどこかの名門貴族に入ることになるというのか?

 まあいい、

 【彼女たちの純粋無垢な様子を見る限り、2人は貴族の家に入っても、その家の混乱を招く様なことにはならないだろう。】

 「分かった、では君が貴族になったら、直ぐ教えに来てくれよ」

 カシリアは笑いながら、元気な女性に語りかけた。

 「良いぜ!ほら、約束に指切りしよ!」

 彼女の微笑みはまるで夜空の月の様に輝き、人の心を温め・落ち着かせる。

 「子供じゃないんだだけど」

 カシリアは口でそう言って嫌がったが、結局彼女の純真さに抗うことができず、微笑み返しながら小指を伸ばして指切りをした。

 「これはね・・・」

 彼女は突然神妙になって、

 【「我が一族に代々伝わっている約束の仕方なんだよ」】

 彼女は指切りをしながら、嬉しそうに言った。

 いつの間にかカーテンの開かれたバルコニーで、知り合って間もない女性とこんなに話し込んでいた。幸いにも他の貴族の女性たちには気づかれていないようだ。

 そう思いながらホールに戻ると、貴族女性たちの会話が聞こえてきた。

 「そういえば、先程のリリス様が変な顔をしてなかった?何だか少し怖い」

 「そうね、でもリリス様は今までずっと病気で倒れていたから、まだ調子が悪いのかもしれないよ?」






















 ★★★お願いです★★★



 少しでも「もっと読みたい」や「いいね」などと思ってくださったら、



 ブックマーク登録・評価・コメントいただけますと、執筆の励みになります!



 何卒、よろしくお願い致します。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ミル猫
2020.08.30 ミル猫

楽しみに読ませて貰ってます。思いを伝える事は難しいですが、余りに辛い転生前だったので、幸せになれるとこを願って読ませて頂いてます。

2020.08.30 悪役令嬢リリス

感想頂き、ありがとうございます。
善良な人が悪役令嬢に転生した、ということではなく、
本当の悪役令嬢が逆行転生したらどうなるでしょう、と思いつつ、
書き綴っていきたいと思います。
最後にも、悪役令嬢らしく立派に幸せになるかな、と思います。

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。