目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【番外編】クロバイとの日々 ライVer.

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___学園のカーニバル当日___

「ライ、パンフレットもらってきたよ。」

「ありがとう。じゃぁ、カヤとシオンは休憩に行ってきて~。」

「あれ?オークは?」

「何かヒイラギさんに呼ばれて行っちゃったみたい。色々偵察も兼ねて店を回ってきてよ。」

「了解。じゃぁ、行ってくるよ。」

パンフレットを持ってきたシオンとカヤに休憩に行くように促す。
今日はバタバタしているけど、高校時代の学園祭に比べれば落ち着いていた。
パンフレットを机に並べながら、トラブル報告がなかった事を生徒会のメンバーに伝えて俺も休憩に行く事にした。

…焼きそば…たこ焼き……やっぱないかぁ…

「ライ。」

「…あ……クロバイ先生。」

「今…お一人ですか?」

人混みの中で、キラキラと輝く様に見えているのは俺の気のせいか…いや、気のせいだろうな。

「今日はアッシュ様から一緒に出店を回ろうと言われたのですが…アッシュ様に用事が出来たようなので……その…」

「一緒に…回って頂けるんですか?」

「私で宜しければ…」

年甲斐もなく舞い上がってしまいそうだ。
…あ、いや、今は高校生だから大丈夫なのか。

「…はい。」

顔…赤くないかな…

クロバイは俺に気遣いながら色々と食べ物や飲み物を買ってこようとしてくれた。
俺が「一緒に食べて下さい」とワガママを言うと少し考えた後に「分かりました」と、一緒に食べてくれた。

「…フフッ…」

「どうかなさいましたか?」

「あ…俺、本当は先生とゆっくりお話したかったんですけど……」

「……申し訳ありません…話し下手なもので…」

ここに来るまでほとんど無言だった。
でも、こんな無言も悪くない。
むしろ居心地が良かった。

「違うんです。俺、一生懸命何か話さなきゃと思ってたから…………好きです…」

「……え?」

「あ゛っ!すみませんっっ‼このがっ、好きですっっ!」

思わず本音が出ちゃったっ!

「フッ…そうですか…」

わっ!その笑顔、反則っ!
はにかんだ笑顔がほんの少しだけ少年の顔を覗かせる。
こんなクロバイの笑顔、ゲームでも見たことがない!

「…もうそろそろ、戻りましょうか。」

「…はい。」

クロバイと本部へ戻る途中、シオンの父親が探していると生徒会を手伝っているメンバーの1人から声を掛けられて俺達はそこで別れた。
本部に戻ると新しい入場者もほぼいない様だったので、後片付けをしていた所にシオンが帰ってきた。

「あ、シオン。大丈夫?」

「ゴメン、心配掛けて。……クロバイと一緒に回れなかった?」

「ううん、回れたよ。ありがとう、先輩♡」

うん、本当にありがと。
手は繋げなかったけど……転生前はそれ以上の事もしてたけど……今は恥ずかしいから、これで十分。
その後、フジ先輩とカリン先輩がやって来て、この話は終わった。


___夏休み___


俺は実家に帰っていた。
俺の実家は貴族と言っても田舎の貧乏貴族。
知識や学力はそれなりにあるが、一般人となんら変わりもない。
学園はゲームの主人公の矯正力なんだろうか?自分の努力もあるけど、偶然が重なって入学出来たようなものだ。

「ライ~、今年の夏の収穫は大分進んだよ。ありがとな~。」

今日まで領地の畑でお手伝い。
ここの野菜は土壌が良いのか質が良い。
先輩であるシオンと知り合ってからは、シオンの父親にたまに来てもらって勉強会を開いてもらい更に収穫が上がった。
俺も手伝う事が増え、お陰様で領地のみんなの生活も少し潤ってきた。

「ライ~、お客さんだよ~!」

畑を手伝っていた子ども達がアゼリアを連れてやってきた。
アゼリアは、俺の用事が無ければ別荘に来ないかと誘いに来たという。
クロバイに会いたい俺は即返事をし、荷物をまとめた。

別荘に着いて森をのんびり散策したいとシオンに言うと「それじゃあ…クロバイ、俺達は大丈夫だからライに付いてあげて。」と、言ってくれた。

「では、行きましょうか…」

「はい。」

カーニバルの日以来、クロバイの表情が少し柔らかくなってきた気がする。
この表情…俺だけだと良いな。
森の中を歩くと森林浴と言う言葉を実感出来る程、空気が澄んで日差しも柔らかい。
時々クロバイが俺を気遣いながら木の根を避けたり、俺にとっては小さな岩を越えたりしていた。

「綺麗な小川ですね。」

しばらく歩いていると小さな小川があった。

「少し休みますか?」

「そうですね。」

俺は岩に腰掛け、足を小川に浸した。

「…フフッ、気持ち良いな……ぁ…」

横を見るとクロバイは岩の側で立っていて、俺に日陰を作っていた。

「…先生。」

「何ですか?」

「座って下さい。」

「…今は先生ではなくローズウッド家の執事です。主の客人の横に座る事は許されません。」


___ツキン…___


……


「……じゃあ………俺の横に…座って…」

つい、意地悪な気持ちになって上目遣いでクロバイに命令してしまった。

「………かしこまりました…」

少し長い沈黙の後…クロバイが「失礼致します」と、俺の隣に座った。

「もぅ、主の客人なら…じゃなくて呼び捨てにしちゃいますよ。」

「フッ…貴方になら…良いかもしれませんね。」

「ホントに?」

「えぇ……貴方は…私の昔の知人に少し似てますので…懐かしい気持ちにさせてくれる。」

「へぇ、どんな人だったんですか?」

俺はクロバイの過去をほんの少しだけ聞いた。
ゲームでは出てこなかったクロバイの過去。
俺に少し似た、クロバイの幼馴染。
大好きだったけど、もう1人の幼馴染と結ばれたそうだ。
胸の中で甘くツキンと、音がする。
この気持ち…懐かしい…学生時代、初めて好きになった友達から彼女への告白の相談をされた時の様な…少し寂しいけど、俺だけに話してくれている特別感。

「…話しすぎましたね…そろそろ行きましょうか。」

「はい。」

クロバイが即座に立ち上がり、俺に手を差し伸べて立ち上がらせた。
俺より大きくて俺より大人で…


___ズキン……___


あ~…やっぱ好きな人が別の好きな人の話を聞くのはキツイなぁ…ちょっと泣きそう。

「……暑かったですか?大丈夫ですか?」

「スミマセン、大丈夫です!折角だし、もう少し向こう行きましょう!」

俺は誤魔化す様に小川にある飛び石に足をついた途端、安定が悪かった様で体勢が崩れた。

「あっ!」
「危ないっ!!」


___バシャンッ!!___


気が付くと俺はクロバイに抱き締められて浅い川に倒れていた。

「……っ…大丈夫ですか…?」 

一緒に起き上がると、太陽を背に…片手で俺の腰に手を添えているクロバイが、もう片方の手は濡れた前髪を後ろへ掻き上げる。

「………」

「ライ…どこか打ちましたか?」

心配そうに顔が近付く……

「………」

……キス…して欲しい…

俺は無意識に両手を首に回した。

「……ラ…イ……」

熱い息が唇に掛かる。
クロバイの空いた片手が俺の腰へとゆっくりと周り、更に引き寄せられた。

「…クロバ…イ…」


___ピィ―ッ!バサササッ‼___

___ビクゥッ⁉___


茂みから飛びたつ鳥の声と羽ばたきに驚き、あと少しでキスが出来そうな所で止まった。

「あっ!スミマセン…何故…こんな……」
「いえっ!こちらこそっっ!」

クロバイ、かなり動揺してる?
…俺もかなり心臓の音が……うるさい…

「濡れてしまいましたね。散策はまたお時間のある時にして、屋敷へ戻りましょう。」

帰りはほんの少し会話が増えて、今度は俺の家の話をしながら別荘へと戻っていった。
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