目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【番外編】クロバイとの日々 ライVer.

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別荘に戻ると、みんなはまだ戻ってなかったのでクロバイがすぐにバスタブに湯を張ってくれた。

「川は少し冷たかったので、身体を温めて下さいね。」

「………クロバイは…入らないんですか?」

帰り道、自然と2人の時はお互い呼び捨てで呼び合おうとなり、呼び捨てで聞いた。

「私は着替えるだけで大丈夫です。お湯に浸かっていらっしゃる間のお世話を別の者にお任せしますので、その間に着替えてまいります。」

「フフッ……一緒に入れば良いのに。」

少し反応をみたくて言ってみた。
どうせ「お戯れを」とか言っちゃうんだろうな~。

「………それは…」

あれ?

「……私の理性が持ちませんので…ご遠慮致します………」

クロバイが耳元で囁いた。

「……っ…」

ズルいっ!何なんだ、この色気は‼

「フッ…顔が…赤いですよ。」

「もぅ、ズル……ッ……アハッ…クロバイこそ…顔…真っ赤。」

悪戯心で誘ってみたら返り討ちにされたけど……クロバイの顔をみたら、クロバイも顔がほんのり赤かった。

「貴方が挑発するからでしょ?」

クロバイの口調が少しくだける。

「だって……フフッ…」

2人でクスクスと笑い合う。

「大丈夫です。俺、1人で入れますし洋服も着替えます。でも、服を着替えたら…一緒にお茶をしたいな。」

「喜んで。バルコニーに用意しましょう。」

「クロバイ…ワガママを言って良いですか?」

「何でしょう?」

「……髪はそのままでいて欲しい…です。」

顔が熱い……でも…その姿で…と感じさせない姿で…もう少し一緒にいたい…

「…ダメ…ですか?」

「………分かりました、お風呂も冷めてしまいます。早くお入りなさい。」

「はい。」

俺は急いでお湯に浸かってある程度温まってからバスタブから上がって身体を拭き、クロバイが用意してくれた服に着替えた。
バルコニーへ行くと、服を着替えてお茶の用意をしているクロバイがいた。

「ライ、似合ってますね。」

「……ありがとうございます。」

クロバイが用意してくれた服は、みんなに何かあった時の為にと用意していた服だそうだ。
俺の服も用意してくれていたんだ。

……クロバイが選んでくれた服……そして…

「…髪型…そのままですね。」

「…貴方が…そう望むから。」

話せば話すほど、知れば知るほどクロバイに惹かれていく。
それに、川で滑ってから…距離も…少し近付いた気がした。

「……ホント…大人だなぁ……でも…少し意地悪だ。」

クロバイが香りの良い紅茶をカップに注いで俺に渡してくれた。

「…フフッ…ライだけですよ。貴方と話すと…少し悪戯な心が出てしまう。こんな事は生まれて初めてです。」

「……嘘つき…」

ふと目を外へ向けると、先輩たちが帰ってきた。
ん、何かみんな驚いた顔をしてる?

「あ、みんなお帰り~。」

取り敢えず手を振ってみた。

「ただいま。先に帰ってきたんだ。」

「うん。シオンのお父さん達はまだみたいだよ。」

「こんな格好でスミマセン……途中で身体を汚してしまって…」

しまった!シオン達の給仕にはこの髪型は不謹慎だった?!

「あ……それは俺のせいで…」

俺が説明しようとした時、そっとクロバイに制された。
顔を見ると……少し熱い目でこちらを見た気がした……うん…だけだよね。
俺、これでも結構誘い方が上手い方だったと思うんだけどなぁ…するりとかわされて、攻略出来てる気がしないもん。

でも……そんな優しい目で見られたら……
期待しちゃうじゃん…


………ん?先ぱ………っ…その目っ!


「んな訳無いからっ‼」

「あ、分かっちゃった?」

「綺麗な小川があったんだけどさ…俺、はしゃいで飛び越えようとしたら滑っちゃって…」

クロバイは悪くないと伝えたくて、思わず焦って言ってしまう。

「私が助けようとしたのですが…タイミングを外して共に盛大に滑ってしまいまして…」

「髪が濡れて前髪が下りちゃってさ。その姿が恰好良かったから……俺のワガママでそのままにしてもらったんだよ。」

先輩だから大丈夫と思うけど……怒らないで!

「……申し訳ございません…見苦しければ髪を直して参りますが…」

シュンとしたクロバイに、先輩は笑顔で言った。

「いや、良いよ。逆に普段はそっちでも凄く若く見えて良いんじゃないかな?」

……先……シオン……

「ありがとうございます。では…お言葉に甘えて今日はこの姿でおります。」

「うん。じゃぁ、俺達着替えてくるよ。1人で待たせるのは可哀想だし、クロバイはライに付いてて。」

そう言うと、シオン達は身体を温めるために移動していった。

「…怒られなくて良かった。」

「フッ…怒られたら…慰めてくれますか……?」

「……俺を揶揄ってるでしょ?」

ムゥッと、してクロバイに目を向ける。

「フフフッ……そんな可愛らしい顔を見せてくれるなら……もう少し揶揄いたくなりますね。」

クロバイがニヤッと笑った。
…クロバイって…こんなに意地悪で…こんなに表情豊かだっけ?

「ホントに…ズルいなぁ……紅茶、もう1杯下さい。」

「はい……それは…貴方が私を誘うのが上手だからですよ…私も自分に驚いております。」

本当だろうか?
クロバイは精霊王、長く生きていればそれだけの恋愛経験もあるだろうし。
俺なんか赤ちゃん同然だよな、きっと。

「……っ……ほら…そういう顔です…」

「……?」

顔がほんの少し赤くなったクロバイが困った顔で新しく注いだ紅茶を俺に手渡す。

「……幼馴染にもこんな事を言ったりしなかった……貴方だけです………貴方こそ……ズルい人だ……」

ティーカップを持った俺の手の上から、クロバイの手が添えられた。


………熱い……紅茶の熱さとは違う……胸も焦がす熱さだ……


「……ラ……」


___キャァァア♪___

___ビクッ!!___


向こうではしゃぐサクラちゃんの声で甘い空気が途切れた。

「「……フフッ…」」

お互い苦笑いで、クロバイは手を離した。

「もう、みなさんこちらに戻ってこられますね。」

「……クロバイ…明日も…俺と一緒にいてくれませんか?」

「……アッシュ様の了解が得られれば……」

転生前は恋の駆け引きを楽しむ時期もあったけど、今はそんな事を考える余裕もなかった。

………クロバイ……早く、俺を好きになってくれないかな。
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