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しおりを挟む気付けば俺は学校の桜の木の下にいた。
あぁ、この木から俺の今回の人生は変わったんだよな……
今回の3年間は、あっという間に過ぎて行った気がする。
卒業を迎え、この木の下で改めて告白されて…そして寮に帰って寝た翌日には何歳からスタートかは分からないけど、幼い頃から俺の人生が始まる。
あのハンカチも、小学校入学前ならどうにかなるが入学後なら…来世の俺…次もハンドタオルは止めとけよ。
___サァッ…___
肌寒い日が増えてきた。
この寒い時期が過ぎれば春になる。
俺に向けた友達ではないあの微笑みも…友達にはしない抱擁も……そして…友達にはしないエッチも……俺しか知らないものになる。
「…っ…」
初めて記憶がある事に嫌気がさした。
輪廻転生で記憶が無く生まれる事は、前の記憶で次の人生の障害にならないためと聞いたことがあるけれど…確かにそうかもしれない。
俺以外のヤツに触れて触れられて…他のヤツに抱いて抱かれてしまうのを俺は側で見届けるしか出来ない。
「あ…そっか、お前は覚えてるよな…」
桜の木の幹に手を置き額を付ける。
たくさんのカップルの告白をこの木は見てきた。
この木も俺と同じ何度も経験していると思いたい。
「…なぁ…桜の木、聞こえる?愚痴って良いかな?俺、初めて生まれ変わりたくないって思っちゃった。今のユキと一緒に……ううん、今のみんなと人生を最後まで生きてみたい…」
自然と涙が溢れる。
「ゲームの世界って、軽く考えすぎてたよな?自分が当事者になったらあまりにも生々しくてさ……」
___サワワ…___
「フフッ…俺…何言ってんだろ。独り言言って泣いちゃうなんてカッコ悪い。」
………帰ろ…
俺は涙を拭いて寮へと戻った。
寮へ戻るとすぐに泣いた痕がユキにバレて色々聞かれたけど俺は答えなかった。
それより今のユキとの時間はあと少ししかない。
今の時間を身体に染み込ませれば良い。
俺はユキに毎日身体を求め、毎日抱き締めてもらって眠りについた。
………そして………
卒業式も終わり、退寮の準備に追われていた時…
___コンコン___
「マコ、ユキが桜の木の下で待ってるってよ。」
海外の大学に決まって準備でなかなか寮に戻って来なかった実咲が部屋にやって来た。
「おぅ。何だよ、久し振りに会ったのに挨拶もなしかよっ。」
「アハハ、毎日電話してただろ?それより…ユキが待ってるぞ。」
___桜の木の下で___
「……うん。」
「マコ、あのさ……俺…」
「…ん?」
「ま、良っか。」
「何だよ、気になるな。」
「何でもない…何かあったら、俺に言ってくれよなっ。」
そう言うと、ニカッと笑って実咲は出ていった。
最初から今日まで前回と全く違った人生だった。
___サァァァ……___
燦々とした太陽の下の大きな桜の木…
今までならワクワクしながら見ていたこの木も、今の俺には心臓が痛くて足が重い。
桜の木の下には俺に微笑みかけているユキがいる。
「マコ。」
俺に甘く微笑む瞳も…俺に優しく呼び掛ける唇も…記憶に残しておかなきゃな。
「…ん…お待たせ。」
「どうしたの、身体が辛い?」
昨日もめちゃくちゃ求めたからな。
「…ううん、それは…大丈夫。」
BL世界のお陰で今はすっかり慣れている…と、言うかもっと欲しいくらいだ。
「…っ…それより、退寮の片付けっ…まだ終わってないんだからなっ!……それは…まぁ…俺の責任でもあるんだけど…」
毎日求め過ぎて片付けが進まなかったのもあるんだけどさ。
「マコ…可愛過ぎ。」
___ギュッ___
「んっ。」
ユキに抱き締められ、俺はユキの背に手を回しながら身体の匂いを嗅いだ。
優しいお日様の匂い…この匂いを俺は忘れない。
「…マコ、聞いて…」
「うん…」
「俺の事…好き?」
「ん…好き。」
「愛してる?」
「……愛してる…」
本当に、愛してるよ。
「じゃあさ…」
ユキがポケットから小さな箱を取り出した。
「…俺と結婚になってくれる?」
「………っ!」
取り出した箱を開けるとシンプルな指輪が出てきた。
内側には小さな宝石が付いていた。
「…っ…マコ⁉」
ツゥ…っと、涙が頬を伝う。
「……ん…良いよ…」
握って寝たら次の人生にワンチャン持って行けるかもしれない。
それを糧にして生きる事が出来る。
「俺を…ユキのパートナーにして?」
「マコ…ッ。」
「ユキ…キスして…」
「うん。」
俺達は深く貪り合い、桜の木の下で愛を誓った。
次の日にはもう今のユキはいないと思い、たくさん抱かれて眠りについたんだけど……
___チチチチ……___
「…あれ?」
ガッチリとユキにホールドされて眠る俺がいた。
いつもなら次の日から再スタートなのに。
……あ…今までイレギュラーだったし、退寮してからなのかな?
…と、思っていたら違った。
退寮後、お互いの家にカミングアウトをしたが、元々幼馴染だったのとそうなるだろうと両親達は思っていたらしく話しはすんなりと通った。
普通なら揉めるよね。
そこからパートナーシップの申請、ユキが家を探して…かなり話が早い。
「新居はここにしようと思うんだ。」
デートと新婚気分を味わいたいからとモデルハウスやモデルルームに連れてかれたのは覚えてたけど…
これ、俺が良いって言ってたとこだよね?
「恥ずかしいけど親に少し援助してもらって、あとは出世払いなんだけどさ…」
毎日が今日が最後かもしれないとドキドキしていたけど、それもある日をきっかけでそんな心配も無くなる事となる。
ある日、寮から俺の忘れ物があるので送ると連絡を受けたけど、ふと寮に行ってみたくなり自分で受取に行くと返事をした。
___サァァ…___
夏の前の桜の木は花は無く緑の葉がサワサワと気持ち良さそうになびいている。
行ってみて忘れ物を確認すると、何故か俺の物ではなかった。
まぁ、寮には来たい気持ちがあったから良いんだけどさ。
この桜の木に会いたかったんだよね。
「……久し振り…」
幹に手を付いて額をあてる。
サワサワと木が嬉しそうに返事をしてくれている気持ちになって自分も嬉しくなった。
「俺、まだ生まれ変わってないんだ。今…すっげー幸せだよ…でもさ…いつか終わるんだよな…」
___サワッ…___
「ユキとパートナーになったんだ…あ、見てたよな…あ~…このまま爺ちゃんになるまでユキといたいなぁ……」
…何話してんだろ…俺。
また1人、木の下でブツブツ危ないヤツになってんじゃん。
少し恥ずかしくなって、俺は顔を上げた。
すると……
『……大…丈夫……』
「え?」
『大丈夫……誠……』
「え、誰……誰か見てんの?」
___ザァァァア!___
「わっ!」
突然風もないのに木の葉がざわめき、声がハッキリしてきた。
『誠…私よ、桜だよ。見てきたよ、一緒に。』
「桜の…木?」
『うん、今の人生楽しかったみたいだね。嬉しいね、楽しいね。』
「……うん、楽しい。」
楽しいよ、次の人生になるのが辛くて泣きたいくらに。
『だからね、私神様にお願いしたの。誠の人生、最後まで生かせてあげてって。』
「出来るのか?」
『うん、だから楽しんで。』
…今のユキと一緒に…生きていけるんだ…
涙がどんどん溢れていく。
『クスクス…泣かないで。お顔拭けないんだから。』
「……うん…」
『誠…』
「ん?」
『由樹と仲良くね。』
「…うん…」
そう言って桜の木は何も言わなくなった。
俺が寮を出て帰ろうとした時…
「マコッ!」
ユキが手を振り俺の元へやってくる。
「ユキッ!」
これからの人生何をしよう…そうだ、2人で過ごす家具を見よう。一緒に過ごすものをたくさん買おう。
これからは老いるまで一緒なんだから。
俺はユキの手を握り、歩いて未来の話をしながら帰っていった。
END.
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