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しおりを挟む___パタパタパタパタ!___
「お帰りなさいませ、リオ様ぁあっ……お゛っふぅっ…眩しっっ‼︎」
とてもじゃないけど貴族の使用人にあるまじき出迎えをするパールは、俺の顔を見るなりいきなり目を背けた。
「何なんだよ、その反応は。」
「ガーネット様はともかく、リオ様のその色気ダダ漏れはいただけませんっ!引っ込めて下さいっっ!」
「自覚もねぇのに出来るかぁっ!」
色気ダダ漏れって何なんだよっ!
「あ~、それ…俺も言われたぞ。」
「そうですよっ!ジルコンさんだって今でも……あぁっ…お色気モンスターがぁ…助けてベリィィ!」
「何か貶されてる気分になって来た…」
「全くだな…」
その『色気ダダ漏れ』や『お色気モンスター』って、ベリーの入れ知恵だな。
アイツ、どこまでこの世界に腐を侵食してんだ。
「……つきましては、そのけしからん状態をベリーにご報告したく…」
キリッと、しながらどこからともなく出したのは紙とペン。
「…お前、一体転生者になんて言葉を習ってんだ。」
「さぁ、包み隠さずお話し下さいっ!」
本来女性に手を挙げるのは俺の意思に反するが…グーじゃなきゃ良いよね?
「……叩いて良いかな?」
「俺が許す。」
ジルコンが即答した。
「酷いですぅっ!」
おかしい、昔はこんな変な使用人ではなかったのに…ガーネットのそばで朗らかに笑っていたパールに…
「私とベリーの心の癒しがぁ!」
……二次元創作のネタされるとは……
「冗談はさておき…パール、久々のリオの帰宅だ。まずは当主に帰宅の報告へ行かせるのが先だろう?」
「ハッ!そうでしたっ‼︎申し訳ございませんっ。今日はガーネット様もお待ちです。リオ様がご契約されたという女神様は先程王宮からの連絡で明日こちらに姿を現すとの事でした。」
「ん、何で?」
「ん~…確か、フェンリルの長と王の橋渡しで女神様が間に立つそうです。」
どうやらモルダ様と話の流れでそうなったらしい。
「あぁ、だからスノウもまだ戻っていない。」
「そうなんだ。」
「ベリー様の今後の件もありますし、色々と協力して欲しい事もあるんでしょうね。」
「そうなんだ。」
「あ、ベリー様からジルコンさんやリオ様のあれやこれやをしっかり聞いてくるようにとことづかっております!これはベリー様の今後の聖女の力の肥やしにもなる大切な事なのですっ‼︎」
「いやっ、聖女の力は大切でも腐女子の力は大切でも何でもねぇからなっ‼︎」
紙とペン握りしめてなんて使命感燃やしてんだよっ。
「…ったく…取り敢えず父上に報告に行ってくる…」
俺はグッタリとした状態で父上に報告に行き、そのままベッドに横になって朝までグッスリと起きる事はなかった。
*******************************
___チチチチチ…___
……ん……ちょっと寒……
「……ん……ベリ………ぁ…」
今日から別々だった…
別荘からずっと一緒に朝を迎えていて、確かに長かったけどこんなに寒く感じるのか?
ベリルの腕の温かさがこんなに恋しいなんて…
___コンコン___
「おはよう…リオ?」
「…あ、おはよう。」
「どうした?」
朝の支度に入ってきたジルコンが俺の顔を見るなり慌てて駆け寄ってきた。
「え、何が?」
「泣きそうな顔をしてるぞ?」
「…え…えぇ⁈」
ジルコンが俺の額に自分の額を当てた。
「…ん…熱はなさそうだが…昨日そのまま報告の後眠ってしまったが、あのバカ王子……ラリマーの目を盗んでお前に無茶させたんじゃないだろうな…」
___バキ…ボキッ…___
「いやいやいや!その拳はやめろっ‼︎何でもないからっ!」
ジルコンは俺の言葉を聞いて、ベッドへと腰掛けた。
「……なら…どうした?」
「………うん…その………」
「…何だ?」
「……今までベリルに抱かれて眠ってて…ちょっと寒いなぁ…って、思った…だけ…だから……」
ううう…言葉にすると凄く恥ずかしい…
「……リオ…」
「…大丈夫だから…」
「そうか。」
ジルコンが俺の頭を撫でる。
「リオは…ベリル殿下の事を愛していけそうか?」
「急にどうしたんだよ?」
「ん?いや…何となくな。フフッ、朝にする話でもないんだが…お前も忙しくなるし、今がタイミングかなと思って。」
「………うん…多分……」
「結婚して…俺がいなくても大丈夫か?」
___ツキン…___
ジルコンがいなくても…
そっか…オニキスの元に行くなら俺に付いて行くことは無理だよな。
胸が急に締め付けられる。
今別れるわけじゃないのに、いつもそばにいて守ってくれている親とは違う存在。
親だって独り立ちや結婚すりゃ離れるけど、ジルコンはずっとそばにいてくれると思ってたもんなぁ。
……そりゃ、ジルコンにはジルコンの人生があるんだけどさ……でも…
「………うん…」
泣きそうになる…ダメだ…泣いたら…
「……ぅっ……」
___ギュッ___
「…ごめん、泣かすつもりじゃなかった。」
ジルコンが俺を優しく抱き締める。
どうしよう…涙が止まらなくなってきた…
「…泣いてなんか…っ…ない…っ…」
「…あぁ、そうだな…」
優しく頭なんか撫でるなよ……この温もりが離れるなんて…考えたくない……でも……
「…俺は…大丈夫だから…ベリルと一緒に生きていけるから……だから…グズッ…お前は……ぅ……オニキスと…」
……幸せになって欲しい……
心から願っている事なのに、言葉が声に出ない。
無意識に俺はジルコンの背に回している手に力が入った。
「…フフッ…本当に…お前は可愛いなぁ…」
「…可愛い…言ぅなぁ…」
「可愛いよ、リオ…俺はお前の幸せを一番に願っているよ。何かあったらいつでも言え。何があっても必ず隣国まで飛んで行くから。」
「…それは…無理だろぉ…」
分かってる、これは俺のワガママだ。
「クスクス、俺が出来ない事を言った事があるか?」
「……なぃけど…」
ジルコンがクスクス笑いながら俺の頭を優しく撫でる。
ジルコンは出来ない事は口にはしない。
でも、これは難しいという事は分かっている。きっと俺を安心させるためなんだろうな。
俺の幸せをジルコンが願っているように、俺もジルコンの幸せを一番に願っている。
同じ空の下、一生会えない訳じゃない。
「まだそうなるのは先の話だ……愛してるよ、リオ。幸せになれ。」
「………うん…ジルコンもな……」
恋人ではないけど……大切な大切な…俺のジルコン。
俺はパールが心配して部屋に来るまで、ジルコンの胸で静かに泣いていた。
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