可愛くなりたい訳じゃない!

mana.

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翌日からベリルと離れる日々が続き、数日が経った。
学園に行ってたまに食堂に行けてもタイミングが合わず、コーラル達でさえなかなか顔を合わすのが難しくなってきた。
ベリルとは王宮と屋敷は遠くはないが、バニラ達のように気軽に移動できる訳ではないのでやり取りは手紙のみ。
モルダ様と意気投合したバニラは頻繁に王宮へ行くため、俺とベリルの手紙はバニラが運んでくれていた。
…女神を伝書鳩代わりにするなんて、俺くらいだろうな。
ベリルの手紙には、コーラルが寂しがってる事やオニキスが剣の技術を上げて今度学園で表彰される事が書いてあった。

そして毎回必ず最後に『愛してる』や『お前に会えなくて寂しい、会いたい。』と…書いてあった。
………俺だって寂しいよ……バカ…

でも、そんな弱音は言ってられない。
学ばなければいけない事は山程ある。今日は王宮から来た専属魔術師の講義だ。

「それでは、精霊を使って魔力の強化をしましょう。」

ダンス・座学と色々あるが、魔力暴走対策が施されている広場にいて、今日初めてフィ―との連携魔術の訓練をする事になっている。

「はいっ!」

「では、魔力を強めながら風の精霊を呼んで下さい。」

___*・゜゚・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゚・*___


魔力が身体の中を巡るのを感じ、光が自分の周りを覆うのを感じる。

「フィー。」

___パァンッ!___

『はぁいっ。』

フィーが軽やかな風と共に現れた。
俺の魔力を取り込みながら、嬉しそうにクルクルと周っていた。

「フィー、初めてだけど…大丈夫かな?」

『うん、リオの魔力…あったかいしポカポカしてるよ。きっと大きな風になるね。』

……大きな風…?

「いやいや、大きいと困るんだけどなぁ。」

『う~ん…練習…だっけ?大きいの…ダメ?』

コテンと、可愛らしく俺を見る純粋な目が……クソ可愛いな。

「……じゃあ…ちょっとだけな。」


……この言葉を発した事を、俺は後で後悔する。


『うんっ…分かった、頑張るっ。』

嬉しそうにクルクル周るフィーは、妖精だけど子犬のようで可愛らしい。

「じゃあ…いくよっ…」

……魔力を更に循環させて……


___パァァ…___


身体を纏わせる風………

「ウィンド・ボー……」

___ビョォォォォッ‼___

「うっきゃぁぁあああっっ⁉」
『ぴゃあっ!』
「リオ様ぁあ゛っ⁉」

『ウィンド・ボール』と唱えようとした途端に暴風となり、フィーは吹っ飛び…俺の服は………破れた……何故だぁっっ⁉

「うわぁぁあっ⁉服ぅうっ‼」

「リオ様っ、何と大胆なっっ⁉」

「違うぞっ!これは狙った訳じゃないっ‼」

俺は胸と股間を隠しながら地面にしゃがみ込んだ時に、魔術師が慌てて自分のローブを掛けてくれた。

『リオ……ゴメンなさ……グズッ…』

「あ……ありがと…っ…フィー、泣くなって!大丈夫、ちょっと暴走しただけだから……って……あれ?」
 
半泣きのフィーを慰めていたら、どこからか怒濤の勢いで足音が聞こえてきたかと思うと…


___ダダダダダッ!___


「リィォォォオッッ!」

「ベリルッ⁉」
『あ、ベリル。』
「え、ベリル様?」

___ズザァッ!___

「………お前…リオの肌を見たのか……」

「…え?」

何言ってんの⁉

「………え…あの…」

ほら、突然分け分かんない事言うから戸惑ってんじゃんっ。

「……リオの見たのか?」

「え……いや…その……それは……」

「万死に値す「…る訳ねぇだろっ、こんの…バカ王子がぁっっ‼行けっフィーッ!」」

『えっ…ぁ…分かったっ!』

___ドゴォッ‼___

「オ゛ッ…グゥッッ‼」

フィーの融合がまだ効いていたのか、ベリルを吹っ飛ばす事が出来た。

「…よしっ。」

「……よし…っ…じゃぁ…ねぇ……っ…ゴフッ……」

あ、すぐに戻った。もう少し強くても良かったな。

「ベリル様、大丈夫ですかっ⁉」

「あぁ…で…ゲホッ……のか……?」

「あ゛ぁっ、まだ言ってんのかっ!」

「……み…見ましたぁ…」

「真っ赤な顔して何言ってんの⁉アンタも素直に答えんなっ!」

___チャキッ…___

「やっぱり殺「すなっ、バカァッ‼」」

俺は慌てて剣を抜こうと殺気立つベリルを止めた。



***********************


「……ほほぅ…これはまた大胆な誘い方だな。」

「違うからなっ。」

「そうだっ、こうなるなら俺が講師をするべきだったっ!」

「ベリルは黙ってて!」

講義の後にジルコンが迎えに来る予定だったが結局講義は中断となったので早めに来てもらい、力を使い過ぎて疲れを見せていたフィーはヴェルディに任せる事にした。

「……てな訳だ。ゴメン、ヴェルディ…フィーは大丈夫かな…?」

『思った以上に力を出してしまったのね。大丈夫よ、屋敷に大きな木があるから…そこから少し力を貸してもらいましょう。』

フィーを見るとヴェルディに抱かれて安心したのか、腕の中でスヤスヤと眠り始めていた。
魔術師にはローブは後日返す事にして帰ってもらい、俺はジルコンが持ってきてくれた新しい服に着替えてベリルへと向き直った。

「………で、何でお前はここへ来たんだよ?」

ジルコンはこの後のダンスの講義の付き添いで来るのは分かっていたが、ベリルは何で来たんだ?

「次の講義は俺も同じだったから驚かせようとしたんだが…」

驚かそうとして自分が驚かされたのか。
…でも、同じ講義?

「あ、言い忘れてた。ダンスの相手が今日は体調不良でな。俺でも良かったんだが……ベリルが横で聞いてしまってな。」

「リオと過ごせるチャンス俺が逃す訳がないだろう?」

「そうだったんだ。」

ベリルとダンスか…

「最初に出会った時を思い出すな。」

「え?」

「また一緒に踊れるなんてな。しかも、今度は女装していないヘリオドール・フォスターと…」

「……ベリル…」

「それでは、ヘリオドール…ダンスフロアまで…エスコートさせて頂けますか?」

愛称のではなくヘリオドールと俺を呼び、優雅な動きで俺に手を差し伸べた。

「………っ。」

「……そこは、喜んで。じゃないのか?」

ジルコンが俺の背中を軽く押した。

「……じゃあ……喜んで…」

俺は擽ったい気持ちになりながら、ベリルにしっかりと手を繋がれてダンスフロアまで移動して行った。
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