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第29話 花火
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***
用意された肉や野菜は全てなくなり、バーベキューは終了した。
「最後はお待ちかねの……」
蓮は一旦倉庫に戻ったかと思えば、両手に何かを抱え再び現れた。
「花火!」
蓮の言葉を遮ったのは日向だ。
嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
遠くでは暗くてよく見えなかったが、蓮が葵達の近くに行くとそれがなんなのか分かった。
蓮が両手に抱えていたのは大量の花火とバケツだった。
「久しぶりだな……花火」
下っ端含む白狼が花火に目を輝かせていると、葵の隣で竜がボソッと呟いた。
「いつぶりなの?」
「ゴールデンウィーク」
葵が問いかけると返ってきた言葉は意外なものだった。
「へ?」
去年の夏といったような返答かと思えば、つい2ヶ月ほど前の出来事に葵拍子抜けしていた。
「去年の夏じゃなくて? ゴールデンウィークってあたしが来る少し前じゃん」
「ああ」
竜はポツリと呟く。
「見ろよ! すっげぇー綺麗!」
蓮は右手に持つ花火に火を付け火花でクルクルと円を描いた。
「うわっ! こっちに向けんなよ!」
みんなに見せびらかしたかったようだが、たまたま近くにいた楓に怒られ、蓮はしょんぼりとした顔を見せていた。
「あたしも花火やる」
葵は竜の傍を離れ花火が置かれた所へ向かった。
「竜はやらないの?」
花火を物色する葵は一緒に着いてこなかった竜に問いかけた。
「俺はいい」
竜はそう言うと少し離れた所からみんなが花火している所を眺めていた。
その表情はどことなく頬が緩んでいるようにも見えた。
「お、ついた! 綺麗……」
葵は花火に火をつけると嬉しそうに笑みを浮かべた。
「楽しいね」
その横で日向も花火に火をつける。
シュワシュワと独特な音を立てながら火花が勢いよく飛び出る。
「あっという間に終わっちゃうけど楽しい。今日はありがとう」
「お礼なら竜さんに言ってあげて」
「え、竜が花火提案したの?」
葵は驚き竜を2度見した。
「そうだよ。このバーベキューも竜さんの提案だよ。白狼みんなでやるのは久々なんだよ」
「そうなんだ」
「これもみんな葵ちゃんの為だと思うよ。みんなと顔を合わせるのなんてこういう時じゃないとないでしょ?」
「……そうなんだ。あたしの為か……」
葵はそう呟くと、火花が消えた花火を水の入ったバケツに落とした。
「竜、ありがとう」
そして、竜の元へ向かった葵は口を開いた。
「あ?」
「なんでもない。ただ言いたかっただけ」
葵はそう言うと再び花火が置いてある日向達の元へ戻って行く。
「あ、火消えてる……蓮ちょうだい」
「うぉっ! びっくりするだろ!」
葵は蓮が持つ花火から飛び出る火花に自分の花火を近づけた。
蓮は急に隣に現れた葵に驚き肩を震わせた。
「ごめんごめん。ローソク消えてたからさ、火ちょうだい」
「ああ」
「ありがとう」
葵は花火に火がつくと蓮の傍を離れ、色とりどりの火花を見つめていた。
そんな葵を蓮が見つめていたとは、当の本人は知る由もなかった。
用意された肉や野菜は全てなくなり、バーベキューは終了した。
「最後はお待ちかねの……」
蓮は一旦倉庫に戻ったかと思えば、両手に何かを抱え再び現れた。
「花火!」
蓮の言葉を遮ったのは日向だ。
嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
遠くでは暗くてよく見えなかったが、蓮が葵達の近くに行くとそれがなんなのか分かった。
蓮が両手に抱えていたのは大量の花火とバケツだった。
「久しぶりだな……花火」
下っ端含む白狼が花火に目を輝かせていると、葵の隣で竜がボソッと呟いた。
「いつぶりなの?」
「ゴールデンウィーク」
葵が問いかけると返ってきた言葉は意外なものだった。
「へ?」
去年の夏といったような返答かと思えば、つい2ヶ月ほど前の出来事に葵拍子抜けしていた。
「去年の夏じゃなくて? ゴールデンウィークってあたしが来る少し前じゃん」
「ああ」
竜はポツリと呟く。
「見ろよ! すっげぇー綺麗!」
蓮は右手に持つ花火に火を付け火花でクルクルと円を描いた。
「うわっ! こっちに向けんなよ!」
みんなに見せびらかしたかったようだが、たまたま近くにいた楓に怒られ、蓮はしょんぼりとした顔を見せていた。
「あたしも花火やる」
葵は竜の傍を離れ花火が置かれた所へ向かった。
「竜はやらないの?」
花火を物色する葵は一緒に着いてこなかった竜に問いかけた。
「俺はいい」
竜はそう言うと少し離れた所からみんなが花火している所を眺めていた。
その表情はどことなく頬が緩んでいるようにも見えた。
「お、ついた! 綺麗……」
葵は花火に火をつけると嬉しそうに笑みを浮かべた。
「楽しいね」
その横で日向も花火に火をつける。
シュワシュワと独特な音を立てながら火花が勢いよく飛び出る。
「あっという間に終わっちゃうけど楽しい。今日はありがとう」
「お礼なら竜さんに言ってあげて」
「え、竜が花火提案したの?」
葵は驚き竜を2度見した。
「そうだよ。このバーベキューも竜さんの提案だよ。白狼みんなでやるのは久々なんだよ」
「そうなんだ」
「これもみんな葵ちゃんの為だと思うよ。みんなと顔を合わせるのなんてこういう時じゃないとないでしょ?」
「……そうなんだ。あたしの為か……」
葵はそう呟くと、火花が消えた花火を水の入ったバケツに落とした。
「竜、ありがとう」
そして、竜の元へ向かった葵は口を開いた。
「あ?」
「なんでもない。ただ言いたかっただけ」
葵はそう言うと再び花火が置いてある日向達の元へ戻って行く。
「あ、火消えてる……蓮ちょうだい」
「うぉっ! びっくりするだろ!」
葵は蓮が持つ花火から飛び出る火花に自分の花火を近づけた。
蓮は急に隣に現れた葵に驚き肩を震わせた。
「ごめんごめん。ローソク消えてたからさ、火ちょうだい」
「ああ」
「ありがとう」
葵は花火に火がつくと蓮の傍を離れ、色とりどりの火花を見つめていた。
そんな葵を蓮が見つめていたとは、当の本人は知る由もなかった。
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