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第56話 舞桜
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「空手やってたんだ。葵ちゃん凄いね!」
「凄いな!」
日向と蓮は目を輝かせながら葵を見つめる。
両端から見つめられ葵は耐えられなくなり、遠くを見つめる。
「でも、凄かったな……まるで桜が舞ってるみたいだった」
だが、そんな葵の願いも虚しく蓮は一番言って欲しく無い言葉を口にする。
「え……」
「(やばっ……)」
葵の頭は真っ白になる。
心臓の鼓動が早まり聞こえてしまうんじゃないかと気が気でなかった。
「……」
そして、無言で葵を見つめる竜は、
「舞桜……」
静かに口を開いた。
「舞桜って……確か龍華の総長で喧嘩する姿がまるで桜が舞うようだからって……。今、行方知れずだったような……」
竜の言葉に柚祐が口を開く。
その言葉でみんなの視線が再び葵に向く。
舞桜──
これは龍華の総長が喧嘩を時、まるで桜が舞うように戦うことからできた通り名。
無駄のない動きに加え、柔らかくしなやかな姿。
見るものを魅了する──
舞桜の性別と正体は龍華の幹部以外誰も知らない。
「え……ち、違うよ。あたしがその……舞桜だっけ?そんなわけないじゃん」
葵な両手を前に出し振ると、困った顔をで必死に否定した。
「あれ? 舞桜って男じゃ……」
日向はふと思いだし呟いた。
「え、男なの?」
「男だろ? フード被ってて顔見たことないけど、あんなに強いんだ」
葵の問いに答えたのは蓮だった。
葵は蓮の言葉を不思議そうな顔で聞いていた。
「へぇ……」
「(あたしって男だと思われてたんだ……。でも、とりあえず、バレずに済んだか……)」
葵は小さくため息をついた。
「舞桜って確か竜さんが前に会いたいって言ってた……」
「ああ。あの人のおかげで俺は今も白狼の総長でいることができた。だから、会ってあの時の礼が言いたい」
竜は日向がボソッと呟いたのを聞き逃さなかった。
そう言った竜は目を輝かせていた。
それは葵が初めて見る竜の顔だった。
「(会って礼を言いたいか……。そんな大層なことしてないけどな。ただ、怒り狂ってた竜を止めただけ。でも、あたしの行動が誰かの役に立つっていうのはいいもんだな……)」
葵は口角を上げると、俯き嬉しさを噛み締めていた。
「(でも、そっか……。あのままにしてたら殴り続ける竜を誰も止められず、その人を……殺してたかもしれないのか。そう考えるとあの時、たまたま竜に会って、止めに入れてよかったんだな……)」
俯いたままの葵は当時のことを思い起こしていた。
それは1年前に起こった出来事。
──これが竜の口から語られるのはもう少し先。
「凄いな!」
日向と蓮は目を輝かせながら葵を見つめる。
両端から見つめられ葵は耐えられなくなり、遠くを見つめる。
「でも、凄かったな……まるで桜が舞ってるみたいだった」
だが、そんな葵の願いも虚しく蓮は一番言って欲しく無い言葉を口にする。
「え……」
「(やばっ……)」
葵の頭は真っ白になる。
心臓の鼓動が早まり聞こえてしまうんじゃないかと気が気でなかった。
「……」
そして、無言で葵を見つめる竜は、
「舞桜……」
静かに口を開いた。
「舞桜って……確か龍華の総長で喧嘩する姿がまるで桜が舞うようだからって……。今、行方知れずだったような……」
竜の言葉に柚祐が口を開く。
その言葉でみんなの視線が再び葵に向く。
舞桜──
これは龍華の総長が喧嘩を時、まるで桜が舞うように戦うことからできた通り名。
無駄のない動きに加え、柔らかくしなやかな姿。
見るものを魅了する──
舞桜の性別と正体は龍華の幹部以外誰も知らない。
「え……ち、違うよ。あたしがその……舞桜だっけ?そんなわけないじゃん」
葵な両手を前に出し振ると、困った顔をで必死に否定した。
「あれ? 舞桜って男じゃ……」
日向はふと思いだし呟いた。
「え、男なの?」
「男だろ? フード被ってて顔見たことないけど、あんなに強いんだ」
葵の問いに答えたのは蓮だった。
葵は蓮の言葉を不思議そうな顔で聞いていた。
「へぇ……」
「(あたしって男だと思われてたんだ……。でも、とりあえず、バレずに済んだか……)」
葵は小さくため息をついた。
「舞桜って確か竜さんが前に会いたいって言ってた……」
「ああ。あの人のおかげで俺は今も白狼の総長でいることができた。だから、会ってあの時の礼が言いたい」
竜は日向がボソッと呟いたのを聞き逃さなかった。
そう言った竜は目を輝かせていた。
それは葵が初めて見る竜の顔だった。
「(会って礼を言いたいか……。そんな大層なことしてないけどな。ただ、怒り狂ってた竜を止めただけ。でも、あたしの行動が誰かの役に立つっていうのはいいもんだな……)」
葵は口角を上げると、俯き嬉しさを噛み締めていた。
「(でも、そっか……。あのままにしてたら殴り続ける竜を誰も止められず、その人を……殺してたかもしれないのか。そう考えるとあの時、たまたま竜に会って、止めに入れてよかったんだな……)」
俯いたままの葵は当時のことを思い起こしていた。
それは1年前に起こった出来事。
──これが竜の口から語られるのはもう少し先。
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