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第57話 守る
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「葵ちゃん! こっちだよ!」
「あ、日向おはよう」
次の日の朝、学校へ行くためマンションを出た葵に声をかけたのは日向だった。
葵が声が聞こえた方向に顔を向けると、日向がマンションの前に止められたベンツの後部座席から顔を出していた。
「では動きます」
葵が車に乗り込み、日向の隣に座ると、凌はそう言い車を走らせる。
「昨日はたまたま車がなくて蓮が迎えに行ったけど、今日からまた車で送り迎えするから安心してね」
日向は葵を安心させようと笑顔を向ける。
黒蛇の一件以来、車で送り迎えをしてもらっていた葵。
だが、昨日は"たまたま"車が出払っていた。
「日向……ありがとう。でも、運転するのは日向じゃないけどね」
「そ、それは! そうだけど……。みんな葵ちゃんのこと守りたいんだよ。だから……」
葵の言葉に日向は動揺し、しどろもどろだ。
「うん……ありがとう」
葵はそんな日向を見てクスッと笑った。
「(みんながあたしを大切にしてくれてるのが嫌でもわかる。本当は守られる立場じゃないのに……本当のことを知ったらこいつらはどうするんだろうな……)」
葵は日向から視線を逸らすと座席に深く腰かけ、窓を見つめる。
窓ガラスには薄らと葵が映り、その表情は悲しく見えた。
***
──昼休み
「あお! ちょっといいか?」
「萩ちゃん、どうしたの?」
お昼を食べる為、屋上へ向かう途中の葵に声をかけたのは萩人だった。
「話があるんだけど」
「あーちょっと待って。連絡してからでもいい?」
葵はそう言うとどこかにメールを送った。
「お待たせ。じゃあ行こっか」
「おう」
萩人はそう言うと葵と共に歩きだした。
──その頃、屋上では。
「あれ、葵ちゃんは?」
「一緒に来てたはずなんだけど」
日向と柚祐が当たりを見渡すも葵の姿はなかった。
「先生に呼び出されたらしい」
「え?」
蓮の言葉に反応したのは日向だった。
「メールきた。だから昼飯は先に食べててだと」
蓮は葵へのメールの返信を打ちながらそう口にした。
「そっか。先生に呼び出されたならしょうがないね」
日向は悲しげな目付きで屋上のドアを見つめていた。
***
「萩ちゃん話ってなに?」
葵は理事長室に入るなり、問いかける。
「あ、あのさ……昨日、大丈夫だったか?」
途端に萩人の歯切れが悪くなった。
「昨日?」
「あ、ああ。く、黒豹に襲われたんだろ?」
「え? ……なんで知ってるの?」
萩人の問いかけに葵は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに真剣な物言いで問いかける。
「……橙季から聞いた」
「橙季……。そっか、情報が早いね」
"橙季"その名前を聞いた葵は顔を曇らせた。
「あ、日向おはよう」
次の日の朝、学校へ行くためマンションを出た葵に声をかけたのは日向だった。
葵が声が聞こえた方向に顔を向けると、日向がマンションの前に止められたベンツの後部座席から顔を出していた。
「では動きます」
葵が車に乗り込み、日向の隣に座ると、凌はそう言い車を走らせる。
「昨日はたまたま車がなくて蓮が迎えに行ったけど、今日からまた車で送り迎えするから安心してね」
日向は葵を安心させようと笑顔を向ける。
黒蛇の一件以来、車で送り迎えをしてもらっていた葵。
だが、昨日は"たまたま"車が出払っていた。
「日向……ありがとう。でも、運転するのは日向じゃないけどね」
「そ、それは! そうだけど……。みんな葵ちゃんのこと守りたいんだよ。だから……」
葵の言葉に日向は動揺し、しどろもどろだ。
「うん……ありがとう」
葵はそんな日向を見てクスッと笑った。
「(みんながあたしを大切にしてくれてるのが嫌でもわかる。本当は守られる立場じゃないのに……本当のことを知ったらこいつらはどうするんだろうな……)」
葵は日向から視線を逸らすと座席に深く腰かけ、窓を見つめる。
窓ガラスには薄らと葵が映り、その表情は悲しく見えた。
***
──昼休み
「あお! ちょっといいか?」
「萩ちゃん、どうしたの?」
お昼を食べる為、屋上へ向かう途中の葵に声をかけたのは萩人だった。
「話があるんだけど」
「あーちょっと待って。連絡してからでもいい?」
葵はそう言うとどこかにメールを送った。
「お待たせ。じゃあ行こっか」
「おう」
萩人はそう言うと葵と共に歩きだした。
──その頃、屋上では。
「あれ、葵ちゃんは?」
「一緒に来てたはずなんだけど」
日向と柚祐が当たりを見渡すも葵の姿はなかった。
「先生に呼び出されたらしい」
「え?」
蓮の言葉に反応したのは日向だった。
「メールきた。だから昼飯は先に食べててだと」
蓮は葵へのメールの返信を打ちながらそう口にした。
「そっか。先生に呼び出されたならしょうがないね」
日向は悲しげな目付きで屋上のドアを見つめていた。
***
「萩ちゃん話ってなに?」
葵は理事長室に入るなり、問いかける。
「あ、あのさ……昨日、大丈夫だったか?」
途端に萩人の歯切れが悪くなった。
「昨日?」
「あ、ああ。く、黒豹に襲われたんだろ?」
「え? ……なんで知ってるの?」
萩人の問いかけに葵は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに真剣な物言いで問いかける。
「……橙季から聞いた」
「橙季……。そっか、情報が早いね」
"橙季"その名前を聞いた葵は顔を曇らせた。
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