【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん

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5章。ユーステルム攻防戦

28話。エルフたちから王と崇められる

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 俺はコレットと一緒に、エルフの捕虜たちを収容した地下牢獄にやって来た。
 無論、これもエルフに勝つための作戦の一環だ。

「姫様!?」

 コレットの姿を見ると、エルフたちは一斉にひざまずく。
 謀反人に加担したとはいえ、王女に対する敬意はあるようだ。
 
「姫様が我らに人道的な扱いをして欲しいと、ユーステルムの領主に嘆願されたと聞き及びました。おかげで、我らは誰ひとり飢えたり虐待されたりしておりません」

 リーダー格と思わしき男性が、礼を述べる。
 言葉の通り、彼らはみな血色が良く、怪我をしている様子もなかった。

「まさか、毎日、パンと新鮮な果物が提供されるとは……すべて姫様のおかげでございます」

「姫様、ありがとうございます!」

 これは領主ミリアと示し合わせて決めたことだ。エルフの捕虜に対して、尋問などもしていなかった。
 飢えに苦しんでいた彼らにとって、腹いっぱい食べられるこの牢獄は天国のような環境だろう。

 おかげで、エルフたちの態度はかなり軟化していた。
 これならイケそうだな。
 俺の狙いは、彼らをこちらに寝返らせることだ。

「お礼なら、我らが王であるアッシュ様──ご主人様に申し上げてください。ご主人様が【植物王(ドルイドキング)】のスキルで、食料を量産してくれたからこそ、皆が飢えずに済んだのですよ」

「王? 我らが王とは? ご主人様ですと……?」

 リーダー格のエルフはいぶかしげな顔になった。

「ご主人様は、【世界樹の剣】にマスターとして選ばれたお方です。それだけでなく、植物を支配する超常のスキルを持ち、小麦やリンゴなどの食料をいくらでも出現させることができます。まさに、わたくしたちエルフの救世主です!」

「そ、そんなことが!?」

「それは世界樹の恵みそのものではありませんか!?」

 リーダー格のエルフが驚嘆する。

「俺がエルフ王になるという話以外は本当です」

 俺は腰に下げた【世界樹の剣】を抜いて見せた。

「おおっ!? そ、それはまさしく神剣ユグドラシル! なんと、神々しき輝きか!?」

 エルフたちが、どよめいた。
 誰もが食い入るように【世界樹の剣】を見つめている。
 よし、これで話を聞いてもらう態勢ができたな。

「エルフたちは食料を得るために、ルシタニア王国に侵攻するようですが、その必要はありません。なぜなら、食料なら戦争などしなくても、いくらでも手に入るからです」

 俺は手を掲げて、大量のリンゴを出現させる。ごろごろと、真っ赤な果実が床一面に転がった。
 見た目のインパクト重視で、俺はなるべく大きなリンゴを出した。

「な、なんと……!?」

「これらはすべて本物です。みなさんの食料事情が良かったのも、食料を何の代償も支払うことなく得ることができるからです」

「師団長! 本当です! こ、このリンゴ、食べられますよ!」

 リンゴを恐る恐る齧ったエルフが、驚きの声を上げた。

「ご主人様とわたくしは、未来の夫婦として、すでに寝室を同じにする程の仲です。アルフヘイムは、ご主人様を王に戴き、今後、空前の発展を遂げるでしょう!」

「ちょっ、寝室って!? 誤解を招くようなことは言うなと、いつも言っているだろうが!」

 俺は慌ててコレットの口を手で押さえた。

「ほ、ほんとうのことでひゅ……!」

 コレットは口をモゴモゴさせながら、さらに言い募る。

「おおっ! 偉大なる世界樹のマスター! あなた様がエルフ王となれば、我らはみな救われます!」

 師団長と呼ばれたリーダー格のエルフが、ボロボロと感涙した。

「姫様も良き伴侶に恵まれて、うれしゅうございます!」

「はい!」

 おい……ちょっと。何か俺を置いてきぼりにして、話がどんどん進んで行っているような。
 良き伴侶(結婚相手)って、なんだ?
 ここはちゃんと俺の考えを話すべきだな。

「まず、ハッキリ言いますが、俺はエルフ王になるつもりはありません!」

 エルフたちは目をパチクリさせた。

「ですが、エルフの民たちが飢えることのないように食料援助をさせていただきたいと思います。みなさんを牢から解放して、荷馬車に積めるだけの小麦を積んで、帰っていただきます」

 謀反人のキースの大義名分は、エルフを飢えから救うことだ。
 なら俺がエルフを飢えから救ってしまえば、戦争の口実はなくなる。うまくすれば、戦わずしてエルフ軍を瓦解させられるだろう。

 少なくとも一枚岩として攻めてくることは、できなくなるハズだ。
 そのための使者として彼らを使うのが、俺の考えた策だった。

「なんと! そ、それほどまでのご厚情をいただけるとは!?」

「こ、これはまさに我らが王と呼ぶにふさわしきお方です!」

「これでみんな救われるぞ!」

 あれ? 何か俺を見るエルフたちの顔が尊敬に輝いているような。
 ちゃんとエルフ王になるつもりは無いと言ったよな? ここは念を押しておこう。
 
「残念ですが、俺はコレット王女と結婚するつもりもエルフ王となるつもりもありませんが」

「わかっております。わかっておりますとも……! 人間であるあなた様が公然とエルフ王になるなどと言ってしまえば、余計な反発を招き、王女殿下との婚姻が遠のくということでございましょう?」

「その通りです。まさしくご主人様の深慮遠謀です!」

 コレットが俺に抱きついてきた。

「いや! 違う! 俺はキースとかいうヤツを倒したいだけで」

「おお! 謀反人めを成敗し、正統なる王位を回復したいと!?」 

「ステキです、ご主人様!」

 事の発端は【世界樹の剣】を譲ってもらう代わりに、キースを倒すとコレットと約束したからだが。話が何かおかしな方向に進んでいた。

「そ、それに俺はユーステルム子爵家の一員として、この地を守ると義妹のミリアと約束してまして……!」

「なんとアッシュ様はルシタニア王国の貴族であられましたか。となれば王女殿下と身分的な釣り合いもぴったりですな!」

 誤解を解こうにも、師団長が俺の言葉を変な風に解釈して、説得が難しい。

「感服つかまつりました。我らアルフヘイムのグリフォン獣魔師団、アッシュ様に忠誠を誓います。急ぎ国に戻り、みなにアッシュ様の偉大さを知らしめ、御身に忠誠を誓うよう説得いたしましょう! みな我らが王に対して跪拝せよ!」

「はっ!」

 エルフたちは平伏し、俺に臣下の礼を取った。
 こ、これは困ったな……

 しかし、これで俺の策がより成功しやすくなったのも事実だ。
 ここは前向きに捉えるとしよう。後のことは……もう知らん。
 俺は気になっていたことを尋ねた。

「あんたたちが使役していたグリフォンには、黒いオーラを放つ強力な個体がいたが、アレは何だ?」

 敬語を使うのはやめた。こちらの方が、俺を王と崇めるエルフたちに響くだろう。

「はっ! それはキース殿の謀反に協力し、今やアルフヘイムの実質ナンバー2の座についているディアドラという女がおりまして。そのディアドラめによって作られた狂戦化(バーサーク)グリフォンです。
 かの女は我らの大事なグリフォンにおかしな処置をして、より凶暴なモンスターに作り変えてしまったのです」

 師団長は苦虫を噛み潰したような顔で告げる。

「ディアドラ? コレット、知っているか?」

「はい、ディアドラは旅のハーフエルフとして、我が国にやってきた女性です。なんでも高名な錬金術師のお弟子様だとか」

 コレットの言葉を師団長が引き継ぐ。

「ディアドラめは、ドラゴン召喚呪具といった強力な魔導具を提供してキース殿にまたたく間に取り入りました。その力を背景にキース殿は謀反に踏み切ったのです」

 なるほどな。ということは、敵にはドラゴンや狂戦化(バーサーク)グリフォンといった強力なモンスターが多数いるということか。
 凶悪な魔獣の討伐は、俺の得意分野ではあるが。

「ディアドラという女、侮れないな。ありがとう、心に留めておく」

「はっ! 偉大なる我が王のお役に立てて、恐悦至極に存じます!」

 師団長は頭を下げた。
 王と呼ばれるのは違和感バリバリだったが、もうこの際、諦めるしかなかった。
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