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最終章。エルフ絶滅計画
60話。【炎の巨人】とディアドラの真実
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「ようこそ、国王陛下。まさか、こんなにも早くいらしていただけるとは、光栄ですわ」
王座に腰掛けたディアドラが、悠然と微笑む。
その身からは秘めたる力が溢れだし、気圧されるような強大さを感じた。
「ご主人様!」
その隣には、壁に鎖で手足を拘束されたコレットがいる。
「ああっ! コレット!?」
それを見たリルが、怒りの唸り声を上げた。
案の定、コレットを人質に取って戦うつもりのようだ。ふたりの距離が近いために、うかつに【天羽々斬】(あめのはばきり)は撃てない。
なんとか隙をうかがわなければ……
「……戦う前にひとつ尋ねておきたい。お前は一体何者だ? エルフ王家の棄てられた王女というだけではないハズだ」
「ふふふッ。どうやら、私のことをそれなりに調べてみたようですわね? でも【神喰らう蛇】の情報網でも何も出てはこなかったでしょう? それもそのハズ。私はこことは異なる世界に住んでいたのですから」
「異なる世界?」
ダメ元で尋ねてみたのだが、意外な反応が返ってきた。
俺はさらに情報を引き出すべく尋ねる。
「ええっ。かつて神々との戦いに破れて、異世界に封印された【炎の巨人】(スルト)の住まうムスペルヘイムですわ」
あまりにスケールの大きな話が飛び出してきて、俺は面食らってしまった。
【炎の巨人】は、神話に登場する神々の敵対者じゃないか。
「【炎の巨人】? リル知っている。大昔、この世界を炎で焼こうとした悪いヤツら、前のあるじ様と一緒にリルも戦った!」
リルが歯を剥き出しにして、ディアドラを威嚇する。
「歴史とは勝者によって紡がれるモノ。【炎の巨人】の認識とは、そのようなものですわね。でも、私はあのお方──【炎の巨人】の宗主によって、生きながら焼かれたところを救われたのですわ。炎の化身である宗主は、私に錬金術をはじめ、すでに失われた様々な古代魔法を教えてくださいましたわ。狂戦化(バーサーク)もそのひとつ……」
俺は若干の違和感を覚えた。
なぜ、コイツはこんな話をペラペラとするんだ? 何かの時間稼ぎ?
だが、貴重な情報であるのも確かだ。
この話が本当だとすると、ディアドラと俺の能力は極めて相性が悪い。
なにしろ、炎と植物だ。
「それで力を得て、エルフへの復讐のために戻ってきたということか?」
それにディアドラがここを決戦の場に選んだ理由もわかった。ここは天井が低く、神獣フェンリルが暴れるには余りにも狭い。
もし、リルがフェンリルと化したら、天井が崩れて、俺たちは生き埋めになるだろう。そうなれば、はりつけにされたコレットの命は無い。
「ふふふっ。それもありますが、今【炎の巨人】の封印は、膨大な年月によって綻びかけているのですわ。その封印を破壊するための尖兵がこの私。
その魔力を得るための生け贄として、大勢の人間を殺す必要があったのです。フェンリルの復活、ルシタニアとアルフヘイムの戦争もそのためですわね。キース様は、実によく踊ってくれましたわ」
ディアドラは悪意に満ちた笑みを浮かべる。
「あるじ様、【炎の巨人】がこの世界に現れたら、みんな殺されるよ!」
「思った以上に、ヤバい奴だったみたいだな。もう俺たちだけの問題じゃない。世界を壊して何が楽しいんだかわからないが……とにかく、お前はぶっ倒す!」
「あらあら、国王陛下、威勢の良いこと。闘神ガインに勝利して、随分と自信をつけられたのですね? でも私は、お父上ほど甘くはありませんわよ。
宗主の忠実なる下僕、【炎の使徒】がひとりディアドラの力、思い知らせて差し上げますわ!」
ディアドラが王座から立ち上がる。彼女の手に炎の魔剣【レーヴァテイン】が出現し、眩い光を放った。
【レーヴァテイン】の猛火は、すべてを焼き尽くさんとするディアドラの憎悪の炎、そのものに見えた。
王座に腰掛けたディアドラが、悠然と微笑む。
その身からは秘めたる力が溢れだし、気圧されるような強大さを感じた。
「ご主人様!」
その隣には、壁に鎖で手足を拘束されたコレットがいる。
「ああっ! コレット!?」
それを見たリルが、怒りの唸り声を上げた。
案の定、コレットを人質に取って戦うつもりのようだ。ふたりの距離が近いために、うかつに【天羽々斬】(あめのはばきり)は撃てない。
なんとか隙をうかがわなければ……
「……戦う前にひとつ尋ねておきたい。お前は一体何者だ? エルフ王家の棄てられた王女というだけではないハズだ」
「ふふふッ。どうやら、私のことをそれなりに調べてみたようですわね? でも【神喰らう蛇】の情報網でも何も出てはこなかったでしょう? それもそのハズ。私はこことは異なる世界に住んでいたのですから」
「異なる世界?」
ダメ元で尋ねてみたのだが、意外な反応が返ってきた。
俺はさらに情報を引き出すべく尋ねる。
「ええっ。かつて神々との戦いに破れて、異世界に封印された【炎の巨人】(スルト)の住まうムスペルヘイムですわ」
あまりにスケールの大きな話が飛び出してきて、俺は面食らってしまった。
【炎の巨人】は、神話に登場する神々の敵対者じゃないか。
「【炎の巨人】? リル知っている。大昔、この世界を炎で焼こうとした悪いヤツら、前のあるじ様と一緒にリルも戦った!」
リルが歯を剥き出しにして、ディアドラを威嚇する。
「歴史とは勝者によって紡がれるモノ。【炎の巨人】の認識とは、そのようなものですわね。でも、私はあのお方──【炎の巨人】の宗主によって、生きながら焼かれたところを救われたのですわ。炎の化身である宗主は、私に錬金術をはじめ、すでに失われた様々な古代魔法を教えてくださいましたわ。狂戦化(バーサーク)もそのひとつ……」
俺は若干の違和感を覚えた。
なぜ、コイツはこんな話をペラペラとするんだ? 何かの時間稼ぎ?
だが、貴重な情報であるのも確かだ。
この話が本当だとすると、ディアドラと俺の能力は極めて相性が悪い。
なにしろ、炎と植物だ。
「それで力を得て、エルフへの復讐のために戻ってきたということか?」
それにディアドラがここを決戦の場に選んだ理由もわかった。ここは天井が低く、神獣フェンリルが暴れるには余りにも狭い。
もし、リルがフェンリルと化したら、天井が崩れて、俺たちは生き埋めになるだろう。そうなれば、はりつけにされたコレットの命は無い。
「ふふふっ。それもありますが、今【炎の巨人】の封印は、膨大な年月によって綻びかけているのですわ。その封印を破壊するための尖兵がこの私。
その魔力を得るための生け贄として、大勢の人間を殺す必要があったのです。フェンリルの復活、ルシタニアとアルフヘイムの戦争もそのためですわね。キース様は、実によく踊ってくれましたわ」
ディアドラは悪意に満ちた笑みを浮かべる。
「あるじ様、【炎の巨人】がこの世界に現れたら、みんな殺されるよ!」
「思った以上に、ヤバい奴だったみたいだな。もう俺たちだけの問題じゃない。世界を壊して何が楽しいんだかわからないが……とにかく、お前はぶっ倒す!」
「あらあら、国王陛下、威勢の良いこと。闘神ガインに勝利して、随分と自信をつけられたのですね? でも私は、お父上ほど甘くはありませんわよ。
宗主の忠実なる下僕、【炎の使徒】がひとりディアドラの力、思い知らせて差し上げますわ!」
ディアドラが王座から立ち上がる。彼女の手に炎の魔剣【レーヴァテイン】が出現し、眩い光を放った。
【レーヴァテイン】の猛火は、すべてを焼き尽くさんとするディアドラの憎悪の炎、そのものに見えた。
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