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24話。れべるあっぷトマトで世界最強の領民が誕生
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「後生でございます、ご領主様! 食料を分けてくだされぇええ!」
「すみません。食料をお出ししたいのは山々なんですが、もう食料庫は空っぽになってしまったんです!」
門前に集まってきた領民たちに対して、メイドのエリスが申し訳無さそうに頭を下げていた。
領民たちは黒死病からは解放されたけど、流通と生産が死んでしまったために、深刻な食糧不足が起きていたのだ。
屋敷の庭で作っていたトマトなどの野菜もすべて刈り取って提供してしまったため、もう食料がない。
「今、騎士団のみなさんが近くの街まで買い出しに行ってくれています。もう少しお待ちいただければ……ッ!」
「近くの街まで、往復4日はかかるではありませんか!? うちの子は、ここ数日、ろくな物を食べていないのですよ!」
幼い子供を抱いた母親と思わしき女性が金切り声を上げる。
空腹のあまり、暴動が起きてもおかしくない雰囲気だった。
「みなさん、落ち着いてください。大丈夫です。聖獣ユニコーンが引く馬車を遣わしましたので、騎士団はもっと早く帰ってくるハズです」
「あっ、ご主人様!」
「ご領主様!」
僕が出ていくと、エリスが顔を輝かせる。領民たちは一斉に僕に注目した。
この事態は予想できていたので、ずっと錬金術工房に引きこもって対策用のアイテムを開発していた。
「それに食料をこれから大量生産します。このSSSランクの【スーパー促成肥料】で!」
僕が瓶に入った液体肥料を見せると、みんな呆気に取られた顔をした。
「ご、ご主人様、今から野菜を育てたとしても、とても間に合いませんが……」
「ふッ、甘いです、エリスさん。兄様が錬金術で作った肥料ですよ? 畑に種を蒔いて、この肥料をかければ一日で実が成るんです」
僕に付き従ったティニーが自信満々でドヤった。
「そ、そんな自然の摂理に反したことが!?」
「おおっ、守護竜ヴァリトラ様、誠でございますか!?」
「さすがは、【史上ただひとりの本物の錬金術師】マイス様だ!」
みんなの顔が一気に明るくなる。
ティニーの正体については、もう領内で知らない者はいないくらいに広まっていたので説得力が違った。
しかもティニーは僕のことを、【史上ただひとりの本物の錬金術師】と自慢しまくっていたのだ。
黄金を作れるという話だけはしないように、口止めしているけどね……
「では、さっそく畑に行きましょう。エリス、みんなを案内してくれ」
「はい、ご主人様!」
畑に到着すると、僕はSSSランクの【れべるあっぷトマト】の種を撒いた。
錬金術で品種改良したトマトだ。病気に強く、成長速度も通常のトマトより早いのが特徴だ。なにより、ある特殊な効果を付与してある。
ティニーとエリスが、手分けして【スーパー促成肥料】を、畑に注入してくれた。
「うわあああっ! トマトがぐんぐん育っていきますよ!」
すると、あっという間に芽が出て、黄色い可憐な花が咲き誇った。
「まさに神にも勝る力。さすがはマイス兄様の開発した【スーパー促成肥料】です」
「ああああっ!? 実まで成ってしまったぞ!」
「し、しかもこんなにたくさん!?」
度肝を抜かれて立ち尽くす領民たちの前で、真っ赤に完熟したトマトが食べきれないほど実った。
「よし。味見してみようか。うまぁッ!」
ひとつもぎ取って頬張ると、驚くほどジューシーな酸味が口に広がる。
「おいしいです。このまま塩を振らずに丸齧りしてもイケますね」
ティニーもトマトを齧って、笑顔になっている。
領民たちがゴクリと生唾を飲み込んだ。
この非常識な促成栽培に警戒心を持った人もいたようだけど、僕とティニーの様子を見て安心したようだ。
これは幻ではなく現実の光景であり、このトマトはちゃんと空腹を満たしてくれるのだ。
「みんなさん、この【れべるあっぷトマト】を好きなだけもぎ取って食べてください。エリス、収穫を手伝ってくれ。街の他のみんなにも配ろう」
「はい、ご主人様! まさか、一瞬でこれだけのトマトを作ってしまわれるとは……これで食糧問題は解決できますね! ご主人様は、まさに神様の使い、いえ神様そのものです!」
エリスは崇拝するような目で、僕を見つめた。
すると、僕の身体が熱くって力が湧き出してくるのを感じた。
【経験値を100取得しました!】
【レベルが10から11へと上がりました!】
【力が1上がりました。素早さが1上がりました。魔力が3上がりました!】
「あっ、これは。ちゃんと特集効果が発揮されたな」
「兄様、魔物を倒した時みたいに経験値が獲得できたのですが、これは一体……」
ティニーが小首をかしげている。
「うぉおおおお! ありがとうございます! ご領主様!」
「うわっ。うまぃいいい! なんだ、このトマト!? 天上の食べ物か!?」
「えっ、なんだか身体が熱くなって……レベルがガンガン上がる!?」
【れべるあっぷトマト】を食べた領民たちから、驚きの声が次々と上がる。
「実はこのトマトを食べると、経験値がたまってレベルアップできるんです。しかも、レベルが低い人ほど獲得経験値が大きくなります。多分、レベル20くらいまでながら、みんなすぐに到達できると思います」
「そんなことが……ッ!?」
領民たちはのみならず、ティニーも愕然とした。
「レ、レベル20というと、Bランク冒険者クラスの実力ではないですか? ゴブリンキングと戦って勝てるほどのレベルですよ」
「おいしい上に強くなれるなんて、最高のトマトですね! しかも、こんなにたくさん、もぐもぐっ!」
エリスが【れべるあっぷトマト】に舌鼓を打ちながら、歓声を上げた。
「これは神の領域の食べ物です……【れべるあっぷトマト】を悪用すれば、世界の軍事バランスは簡単に崩壊します。兄様、このトマトは外部に出さないように厳重に管理すべきです」
「【れべるあっぷトマト】は一代限りのもので種ができないのだけど……そうだな。ティニーの言う通り、気をつけよう」
食糧問題と領地の防衛が最優先課題で、そこまで考えが回らなかった。
「はい。兄様の偉大さが世界に広まれば、その力を悪用しようとする者が必ず湧いて出てくるでしょう。この私が、そんな不埒者たちから兄様を守り抜いてみせます」
ティニーは真剣な瞳で僕を見つめた。
ちょっと、過保護というか……
「ティニーに守られるじゃなくて、僕がティニーを守りたいんだけどな」
なにしろ、今までエルファシア王国に悪用されてきたのはティニーの方だ。王国はティニーの戦力を当てにして、世界征服を企てるまでに、増長してしまった。
「えっ、兄様……う、うれしいです」
ティニーは完熟したトマトよりも顔を赤らめた。
「やはり、私と兄様は相思相愛だったのですね。このベオグラードの地は、まさに私と兄様の愛の巣……」
「大変です、ご領主様!」
その時、カンカン! と、街中に危険を知らせる警鐘が鳴り響いた。
警戒中の騎士が、僕の元に駆け寄ってくる。
「Çランクの魔獣ブラックベアーの群れが、街に突っ込んできています! サイクロップスが迎撃に協力してくれていますが、奴らの数が多く、しのぎきれません!」
「わかった。ティニー、出撃するぞ!」
「はい、兄様」
防柵を破って魔獣が街中になだれ込んできたら、大変な被害が出る。すぐに片付けなくてはならない。
だが、走り出そうとした瞬間、グラリと足元がふらついてしまった。
「大丈夫ですか、兄様!? かなりお疲れでは?」
支えてくれたティニーのおかげで、ここ最近、働き詰めだったことに気づく。疲労で身体が鉛のように重くなっていた。
「お待ち下さい、ご主人様。ここは私たちの街です。ご主人様とティニーお嬢様ばかりに頼る訳にはまいりません。ここは、私たちにお任せください」
すると、エリスが強い意思の籠もった瞳で、進言してきた。
その意味がわからず、僕は逆に問いかける。
「えっ? でも、相手はÇランクの危険な魔獣だぞ。エリスたちが、どうにかできる相手じゃ」
「実は私、さっきから力が際限なく湧き上がってくる感じで……てぁ!」
エリスが手近にあった岩を叩くと、なんと岩が真っ二つに割れた。
さすがにこれには、僕も呆気に取られた。
「Çランク程度の魔獣が相手であれば、勝てそうな気がします!」
エリスの宣言に多くの領民たちが頷いた。
「ご領主様! どうか休んでいてください。俺たちもエリスと同じ思いです。ご領主様からいただいた力で、この街を守ってみせます!」
「すみません。食料をお出ししたいのは山々なんですが、もう食料庫は空っぽになってしまったんです!」
門前に集まってきた領民たちに対して、メイドのエリスが申し訳無さそうに頭を下げていた。
領民たちは黒死病からは解放されたけど、流通と生産が死んでしまったために、深刻な食糧不足が起きていたのだ。
屋敷の庭で作っていたトマトなどの野菜もすべて刈り取って提供してしまったため、もう食料がない。
「今、騎士団のみなさんが近くの街まで買い出しに行ってくれています。もう少しお待ちいただければ……ッ!」
「近くの街まで、往復4日はかかるではありませんか!? うちの子は、ここ数日、ろくな物を食べていないのですよ!」
幼い子供を抱いた母親と思わしき女性が金切り声を上げる。
空腹のあまり、暴動が起きてもおかしくない雰囲気だった。
「みなさん、落ち着いてください。大丈夫です。聖獣ユニコーンが引く馬車を遣わしましたので、騎士団はもっと早く帰ってくるハズです」
「あっ、ご主人様!」
「ご領主様!」
僕が出ていくと、エリスが顔を輝かせる。領民たちは一斉に僕に注目した。
この事態は予想できていたので、ずっと錬金術工房に引きこもって対策用のアイテムを開発していた。
「それに食料をこれから大量生産します。このSSSランクの【スーパー促成肥料】で!」
僕が瓶に入った液体肥料を見せると、みんな呆気に取られた顔をした。
「ご、ご主人様、今から野菜を育てたとしても、とても間に合いませんが……」
「ふッ、甘いです、エリスさん。兄様が錬金術で作った肥料ですよ? 畑に種を蒔いて、この肥料をかければ一日で実が成るんです」
僕に付き従ったティニーが自信満々でドヤった。
「そ、そんな自然の摂理に反したことが!?」
「おおっ、守護竜ヴァリトラ様、誠でございますか!?」
「さすがは、【史上ただひとりの本物の錬金術師】マイス様だ!」
みんなの顔が一気に明るくなる。
ティニーの正体については、もう領内で知らない者はいないくらいに広まっていたので説得力が違った。
しかもティニーは僕のことを、【史上ただひとりの本物の錬金術師】と自慢しまくっていたのだ。
黄金を作れるという話だけはしないように、口止めしているけどね……
「では、さっそく畑に行きましょう。エリス、みんなを案内してくれ」
「はい、ご主人様!」
畑に到着すると、僕はSSSランクの【れべるあっぷトマト】の種を撒いた。
錬金術で品種改良したトマトだ。病気に強く、成長速度も通常のトマトより早いのが特徴だ。なにより、ある特殊な効果を付与してある。
ティニーとエリスが、手分けして【スーパー促成肥料】を、畑に注入してくれた。
「うわあああっ! トマトがぐんぐん育っていきますよ!」
すると、あっという間に芽が出て、黄色い可憐な花が咲き誇った。
「まさに神にも勝る力。さすがはマイス兄様の開発した【スーパー促成肥料】です」
「ああああっ!? 実まで成ってしまったぞ!」
「し、しかもこんなにたくさん!?」
度肝を抜かれて立ち尽くす領民たちの前で、真っ赤に完熟したトマトが食べきれないほど実った。
「よし。味見してみようか。うまぁッ!」
ひとつもぎ取って頬張ると、驚くほどジューシーな酸味が口に広がる。
「おいしいです。このまま塩を振らずに丸齧りしてもイケますね」
ティニーもトマトを齧って、笑顔になっている。
領民たちがゴクリと生唾を飲み込んだ。
この非常識な促成栽培に警戒心を持った人もいたようだけど、僕とティニーの様子を見て安心したようだ。
これは幻ではなく現実の光景であり、このトマトはちゃんと空腹を満たしてくれるのだ。
「みんなさん、この【れべるあっぷトマト】を好きなだけもぎ取って食べてください。エリス、収穫を手伝ってくれ。街の他のみんなにも配ろう」
「はい、ご主人様! まさか、一瞬でこれだけのトマトを作ってしまわれるとは……これで食糧問題は解決できますね! ご主人様は、まさに神様の使い、いえ神様そのものです!」
エリスは崇拝するような目で、僕を見つめた。
すると、僕の身体が熱くって力が湧き出してくるのを感じた。
【経験値を100取得しました!】
【レベルが10から11へと上がりました!】
【力が1上がりました。素早さが1上がりました。魔力が3上がりました!】
「あっ、これは。ちゃんと特集効果が発揮されたな」
「兄様、魔物を倒した時みたいに経験値が獲得できたのですが、これは一体……」
ティニーが小首をかしげている。
「うぉおおおお! ありがとうございます! ご領主様!」
「うわっ。うまぃいいい! なんだ、このトマト!? 天上の食べ物か!?」
「えっ、なんだか身体が熱くなって……レベルがガンガン上がる!?」
【れべるあっぷトマト】を食べた領民たちから、驚きの声が次々と上がる。
「実はこのトマトを食べると、経験値がたまってレベルアップできるんです。しかも、レベルが低い人ほど獲得経験値が大きくなります。多分、レベル20くらいまでながら、みんなすぐに到達できると思います」
「そんなことが……ッ!?」
領民たちはのみならず、ティニーも愕然とした。
「レ、レベル20というと、Bランク冒険者クラスの実力ではないですか? ゴブリンキングと戦って勝てるほどのレベルですよ」
「おいしい上に強くなれるなんて、最高のトマトですね! しかも、こんなにたくさん、もぐもぐっ!」
エリスが【れべるあっぷトマト】に舌鼓を打ちながら、歓声を上げた。
「これは神の領域の食べ物です……【れべるあっぷトマト】を悪用すれば、世界の軍事バランスは簡単に崩壊します。兄様、このトマトは外部に出さないように厳重に管理すべきです」
「【れべるあっぷトマト】は一代限りのもので種ができないのだけど……そうだな。ティニーの言う通り、気をつけよう」
食糧問題と領地の防衛が最優先課題で、そこまで考えが回らなかった。
「はい。兄様の偉大さが世界に広まれば、その力を悪用しようとする者が必ず湧いて出てくるでしょう。この私が、そんな不埒者たちから兄様を守り抜いてみせます」
ティニーは真剣な瞳で僕を見つめた。
ちょっと、過保護というか……
「ティニーに守られるじゃなくて、僕がティニーを守りたいんだけどな」
なにしろ、今までエルファシア王国に悪用されてきたのはティニーの方だ。王国はティニーの戦力を当てにして、世界征服を企てるまでに、増長してしまった。
「えっ、兄様……う、うれしいです」
ティニーは完熟したトマトよりも顔を赤らめた。
「やはり、私と兄様は相思相愛だったのですね。このベオグラードの地は、まさに私と兄様の愛の巣……」
「大変です、ご領主様!」
その時、カンカン! と、街中に危険を知らせる警鐘が鳴り響いた。
警戒中の騎士が、僕の元に駆け寄ってくる。
「Çランクの魔獣ブラックベアーの群れが、街に突っ込んできています! サイクロップスが迎撃に協力してくれていますが、奴らの数が多く、しのぎきれません!」
「わかった。ティニー、出撃するぞ!」
「はい、兄様」
防柵を破って魔獣が街中になだれ込んできたら、大変な被害が出る。すぐに片付けなくてはならない。
だが、走り出そうとした瞬間、グラリと足元がふらついてしまった。
「大丈夫ですか、兄様!? かなりお疲れでは?」
支えてくれたティニーのおかげで、ここ最近、働き詰めだったことに気づく。疲労で身体が鉛のように重くなっていた。
「お待ち下さい、ご主人様。ここは私たちの街です。ご主人様とティニーお嬢様ばかりに頼る訳にはまいりません。ここは、私たちにお任せください」
すると、エリスが強い意思の籠もった瞳で、進言してきた。
その意味がわからず、僕は逆に問いかける。
「えっ? でも、相手はÇランクの危険な魔獣だぞ。エリスたちが、どうにかできる相手じゃ」
「実は私、さっきから力が際限なく湧き上がってくる感じで……てぁ!」
エリスが手近にあった岩を叩くと、なんと岩が真っ二つに割れた。
さすがにこれには、僕も呆気に取られた。
「Çランク程度の魔獣が相手であれば、勝てそうな気がします!」
エリスの宣言に多くの領民たちが頷いた。
「ご領主様! どうか休んでいてください。俺たちもエリスと同じ思いです。ご領主様からいただいた力で、この街を守ってみせます!」
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