魔王少女の勘違い無双伝~中二病をこじらせて、配下の人間も守る誇り高き悪のカリスマムーブを楽しんでいたら、いつの間にか最強魔王軍が誕生していた

こはるんるん

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23話。大地の聖女の協力で、漫画が出版できるようになる

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 ユリシアは嬉々として漫画の感想を語りだした。

「勇者側だけでなく、魔王側の事情やキャラクターを深掘りして描いている点が、あまりにも斬新で……胸を打たれましたわ! 特に魔族を守ろうとする魔王が、格好良くて、ぐっと、ぐっと来ます!」

 おっ、おわぁああああああああああああああああっっっ!!!

 私の全身の細胞という細胞が歓喜に打ち震えた。

 ユリシアの漫画版『カイの大冒険』の評価は、私とまったく同じだったのよ。

「……あなたは、もう一人の私ッ!?」

 心の声が口から飛び出し、私はユリシアの両肩を力強く掴んでしまっていた。

「そ、そうよ! そうなのよユリシア! 悪役の魔王様が最高に、最っ高にカッコいいのよ、この作品はッ!!」
「は、はいっ! もちろんですわ、アンジェラ様!」

 ユリシアは、私の豹変ぶりに目をパチクリさせながらも、頷き返してくれた。

 ああっ、なんて良い娘なのかしら……! 悪の気高さ、素晴らしさがわかるなんて、聖女にしておくのが、もったいないわ。
 さらに、レオンまでも頷きながらコメントしてきた。

「……これまでの『カイの大冒険』と言えば、アステリア聖王国、建国の正統性を民に知らしめるための、いわばプロパガンダ的な側面が強いものでした。そのため、いささか理想化されすぎた勇者像を描いていましたが……この漫画版は、勇者カイを1人の人間として描いている点が、非常におもしろいですね」

 おおっ、そこに気付くなんて、なかなかやるわね。
 その通り。政治色の強い物語なんて、おもしろくないわ。

「勇者としての名声を背景に、やりたい放題の圧政を敷いてきた父上のような暴君を生み出さないためにも、この作品は必要だと思います」
「レオン様のおっしゃる通りです。そしてなにより、わたくしは、この作品に描かれている魔王は、もしかすると現実に近いのではないか……? と、そう思うのです」
「げ、現実の魔王ですって……?」

 それって、私のこと?
 思わずドキッとしてしまう。

「はい。この200年間、魔族たちは魔の森から出てこず、人間の国々に侵攻しておりませんわ。勇者王陛下は、これを己の手腕による抑止力の賜物とおっしゃっておられますが……わたくしの考えは、異なります」

 ユリシアはそこで、一瞬、何かためらうように言いよどんだ。

「かの魔王ベルフェゴール。彼が、魔族たちに侵攻を禁止していたのではないでしょうか? 魔王も、魔族たちを無益に死なせる争いは、望んでいないのではないかと思うのです。故に、これまで平和が保たれてきたのですわ」

 あっ、それは当たっているわ。
 ユリシアってば、鋭いじゃない。さすがは、真実の探求を目指す錬金術師ね。

「うん、そうかもね」

 私が頷くと、ユリシアは驚きに目を見開いた。そして、自信を得た様子で続ける。

「もし、そうだとすれば……わたくしは、魔王との対話による和平の道も、決して不可能ではないのではないか、と考えるのです。最近、魔王が代替わりし、新しい魔王が誕生したそうです。その新魔王と話し合う機会が持てれば……」

 おっ、おおおおおお……!
 ちょ、ちょっと、本気で驚いてしまったわ!

 ゲームのユリシアは、魔王と和平を結びたいなんて決して口にしなかった。
 まぁ、人間に父を殺された魔王アンジェラがブチギレて、大虐殺を始めたんだから、仕方ないけど……

 ゲームのアンジェラとは違って、私は人間が憎い訳じゃないのよね。
 だから、対話はもちろん可能というか、今、まさにやっているわ。

「ユリシア。残念だけど……魔王との対話は、さすがに夢物語じゃないかな。魔王が交渉のテーブルにつくことさえ、万に一つも有り得ないと思う」

 レオンが、冷静に、しかし少しだけ寂しそうにユリシアをたしなめた。

「……そ、それは、そうかも知れませんわね」

 ユリシアは、しゅん、と効果音がつきそうなほど残念そうに肩を落とす。

「ですが、わたくしはヴェリディアの錬金術師──何ごとも不可能だと最初から決めつけては、錬金術は発展しないと教えられて育ちました。もしチャンスがあれば、ぜひ魔王と話してみたいと思います!」

 い、今まさに、あなたは、その魔王と話してるんですけど! とは、さすがに言えなかった。

 レオンの方は、魔王を敵とみなす常識的な人間だしね。
 敵地のど真ん中での正体バレは、危険が高過ぎるわ。

 とはいえ、これなら漫画の普及には、協力してもらえそうなので、さっそく頼んでみる。

「……こほん、それで、私はこの漫画版『カイの大冒険』をこの国で売りたいと思っているんだけど……ユリシアのその、とっても便利な【複製魔法】で、この原稿をたーくさんコピーしてもらえないかしら? もちろん、報酬はロイド商会から弾むわよ!」
「そ、それって……つまり、わたくしが、誰よりも先に、この素晴らしい物語の続きを拝読できる、ということでしょうか!?」

 ユリシアは、パアアッと顔を輝かせた。

「もちろん、喜んでお引き受けいたしますわ! いえ、ぜひともやらせてくださいませ、アンジェラ様!」

 ああっ、漫画の最新話を誰よりも先に読みたいなんて……彼女はやっぱり私の同類! 陰キャだったのね。
 魔王にも偏見が無いみたいだし……! この娘、最高かも!

「う、うん。ありがとう、よろしくねユリシア!」
「はい! では……今から、わたくしたちはお友達ですわね!」

 そう言ってユリシアは、手を差し出してきた。私は思わずその手を取ってしまう。
 私は不覚にも込み上げてくる友情に、胸がいっぱいになるのを抑えきれなかった。
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