26 / 75
3章。妹と合体する。風竜機神シルフィード
26話。王宮がテロリストに襲われる
しおりを挟む
【大貴族アゼル視点】
「アヒャヒャヒャッ! バカめぇえええ! なにが【機神の錬金術師】だ! この俺様を敵に回したことを、たっぷり後悔するんだなぁああ!」
俺様は大貴族、ヴァルム公爵の子息アゼルだ。
本来なら、美しいレナ王女をはべらせ、みんなから祝福と賞賛を浴びる婚約パーティの主役は、俺様だったハズなのだ。
それがヘルメスなどという、どこの馬の骨ともわからぬ平民に姫を奪われ、殴り飛ばされるという屈辱を味わった。
居合わせた者どもは忍び笑いを漏らしていやがった。
「許さん! 許さんぞぉ! 俺様をコケにしやがってぇええええ!」
たが、調子に乗るのもここまでだ。
俺様はひとりになりたいと家臣たちを遠ざけて、単独で王宮の倉庫にやって来ていた。
懐から、禍々しい装飾をされた短刀を取り出す。
これは先日、俺様の屋敷にやってきた老魔導師から受け取った魔導具だ。
くくくくっ、これを使って、あのヘルメスに復讐してやるのだ。
俺様は先日のことを思い出す。
『アゼル様、レナ王女を奪ったヘルメスが憎くはございませんか? これを王宮内に設置していただければ、我が手の者が王宮に侵入し、ヘルメスを討ち取ってご覧に入れます。その代わり、私をよろしくお引き立てのほどを……』
そう言って、老魔導師はこの魔導具を差し出した。
うさんくさいヤツだとは思ったが、レナ王女との婚姻は、ヴァルム公爵家の栄華のために必要なことだ。
なにより、この俺様に取り入ろうとするとは、先見の明があるヤツだ。気に入った。
計画を詳しく聞いたところ、婚約パーティを狙って暗殺を仕掛けるということだ。
『国内外の貴族が集まる婚約パーティが台無しになれば。万が一、ヘルメス暗殺に失敗しても、やはり王女殿下と平民の結婚など許すべきではなかったと、国王陛下もお考えを改めましょう』
『なるほど、おもしろい! 成功したあかつきには、お前を召し抱えてやる!』
『ありがたき幸せでございます』
まぁ、あの老魔導師が失敗したところで、俺様がヘルメス暗殺の黒幕だという証拠は出ない。
シラを切れば良いだけの話だ。俺様には、なんのデメリットも無かった。
「アヒャヒャヒャッ! ヘルメスを潰せば、レナ王女は今度こそ俺様のモノだ!」
俺様は上機嫌で、短剣を倉庫の床に置いた。すると、輝く魔法陣が床に浮かび上がる。その魔法陣から武装した男たちが、次々に飛び出してきた。
「ほぅ~っ! これは本格的じゃないか!? よし、お前らヘルメスを殺せ! クソくだらない婚約パーティをブチ壊しにしてやるんだ、アヒャヒャヒャヒャ!」
男たちは爆笑する俺様を無視して、外に駆け出して行った。
大貴族である俺様に、あいさつもせんとは無礼な連中だ。
やがて外から、何やら爆発音と衛兵の悲鳴が聞こえてきた。
う、うん……? 俺様は違和感を覚えた。
暗殺というのは標的に気づかれないように、静かにやるモノじゃないのか?
「お、おい、何を……!?」
倉庫の外に出ると王宮に火が放たれ、夜空が赤々と炎に照らされていた。
武装集団は誰彼構わず攻撃して、大混乱を引き起こしている。明らかにこいつらの目的は、ヘルメス暗殺などではなかった。
これは王宮への……つまりは王国への攻撃だ。
「な、なんだ、これは。お前らは一体、どういうつもりだぁ……!?」
俺様は戦慄した。
そうこうしている間にも、倉庫から次々に武装集団が出現し、雪崩を打って王宮に攻め込んで行った。
その数は、もはや100人以上。これはもう暗殺集団ではなく軍隊だぞ。
「待て! やめろ! これではまるで謀反ではないか!?」
俺様は絶叫したが、ヤツらは止まらない。
ここまで騒ぎが大きくなっては、王家はこいつらを手引きした者を血眼になって探すだろう。反逆罪で処刑される未来が頭に浮かび、背すじが凍った。
するとヤツらのひとりが、俺様に剣を振り下ろした。とっさに身を引いて防御したが、肩を斬られた。
「ぎゃあああああ!? 痛い! 痛いぃいいいい!?」
「おやおや、アゼル様。まだ、生きておいででしたか。もうアゼル様のお役目は終わりましたので、ご退場ください」
俺様に取り入って魔導具を渡した老魔導師が、目前に立っていた。
「お、おおおお前、俺様を騙して……!?」
「これは人聞きが悪い。お約束通りヘルメスめを殺し、レナ王女との婚約を阻みます。その対価に、アゼル様のお命も含まれていたというだけです」
老魔導師は虫けらでも相手にするように告げた。
その手には、古式ゆかしい魔法使いの杖が握られていた。ヘルメスのタブレット型スタッフ【クリティオス】に駆逐されて、もう誰も使わなくなった杖だ。
その杖が俺様に向けられ、強烈な【ファイヤーボール】が撃ち出された。
「誰か、助け……っ!」
俺様を一瞬で黒焦げにできる威力を持った魔法であることが、直感的に理解できた。
「……させるかっ!」
突如、俺様の前に立ちはだかる人影があった。
その声はヘルメスだ。
「ぬっ!? 我が魔法を弾いただと……!?」
【ファイヤーボール】はヘルメスが振った右手に弾かれた。
俺様はヘルメスによって、九死に一生を得たのだ。
「アヒャヒャヒャッ! バカめぇえええ! なにが【機神の錬金術師】だ! この俺様を敵に回したことを、たっぷり後悔するんだなぁああ!」
俺様は大貴族、ヴァルム公爵の子息アゼルだ。
本来なら、美しいレナ王女をはべらせ、みんなから祝福と賞賛を浴びる婚約パーティの主役は、俺様だったハズなのだ。
それがヘルメスなどという、どこの馬の骨ともわからぬ平民に姫を奪われ、殴り飛ばされるという屈辱を味わった。
居合わせた者どもは忍び笑いを漏らしていやがった。
「許さん! 許さんぞぉ! 俺様をコケにしやがってぇええええ!」
たが、調子に乗るのもここまでだ。
俺様はひとりになりたいと家臣たちを遠ざけて、単独で王宮の倉庫にやって来ていた。
懐から、禍々しい装飾をされた短刀を取り出す。
これは先日、俺様の屋敷にやってきた老魔導師から受け取った魔導具だ。
くくくくっ、これを使って、あのヘルメスに復讐してやるのだ。
俺様は先日のことを思い出す。
『アゼル様、レナ王女を奪ったヘルメスが憎くはございませんか? これを王宮内に設置していただければ、我が手の者が王宮に侵入し、ヘルメスを討ち取ってご覧に入れます。その代わり、私をよろしくお引き立てのほどを……』
そう言って、老魔導師はこの魔導具を差し出した。
うさんくさいヤツだとは思ったが、レナ王女との婚姻は、ヴァルム公爵家の栄華のために必要なことだ。
なにより、この俺様に取り入ろうとするとは、先見の明があるヤツだ。気に入った。
計画を詳しく聞いたところ、婚約パーティを狙って暗殺を仕掛けるということだ。
『国内外の貴族が集まる婚約パーティが台無しになれば。万が一、ヘルメス暗殺に失敗しても、やはり王女殿下と平民の結婚など許すべきではなかったと、国王陛下もお考えを改めましょう』
『なるほど、おもしろい! 成功したあかつきには、お前を召し抱えてやる!』
『ありがたき幸せでございます』
まぁ、あの老魔導師が失敗したところで、俺様がヘルメス暗殺の黒幕だという証拠は出ない。
シラを切れば良いだけの話だ。俺様には、なんのデメリットも無かった。
「アヒャヒャヒャッ! ヘルメスを潰せば、レナ王女は今度こそ俺様のモノだ!」
俺様は上機嫌で、短剣を倉庫の床に置いた。すると、輝く魔法陣が床に浮かび上がる。その魔法陣から武装した男たちが、次々に飛び出してきた。
「ほぅ~っ! これは本格的じゃないか!? よし、お前らヘルメスを殺せ! クソくだらない婚約パーティをブチ壊しにしてやるんだ、アヒャヒャヒャヒャ!」
男たちは爆笑する俺様を無視して、外に駆け出して行った。
大貴族である俺様に、あいさつもせんとは無礼な連中だ。
やがて外から、何やら爆発音と衛兵の悲鳴が聞こえてきた。
う、うん……? 俺様は違和感を覚えた。
暗殺というのは標的に気づかれないように、静かにやるモノじゃないのか?
「お、おい、何を……!?」
倉庫の外に出ると王宮に火が放たれ、夜空が赤々と炎に照らされていた。
武装集団は誰彼構わず攻撃して、大混乱を引き起こしている。明らかにこいつらの目的は、ヘルメス暗殺などではなかった。
これは王宮への……つまりは王国への攻撃だ。
「な、なんだ、これは。お前らは一体、どういうつもりだぁ……!?」
俺様は戦慄した。
そうこうしている間にも、倉庫から次々に武装集団が出現し、雪崩を打って王宮に攻め込んで行った。
その数は、もはや100人以上。これはもう暗殺集団ではなく軍隊だぞ。
「待て! やめろ! これではまるで謀反ではないか!?」
俺様は絶叫したが、ヤツらは止まらない。
ここまで騒ぎが大きくなっては、王家はこいつらを手引きした者を血眼になって探すだろう。反逆罪で処刑される未来が頭に浮かび、背すじが凍った。
するとヤツらのひとりが、俺様に剣を振り下ろした。とっさに身を引いて防御したが、肩を斬られた。
「ぎゃあああああ!? 痛い! 痛いぃいいいい!?」
「おやおや、アゼル様。まだ、生きておいででしたか。もうアゼル様のお役目は終わりましたので、ご退場ください」
俺様に取り入って魔導具を渡した老魔導師が、目前に立っていた。
「お、おおおお前、俺様を騙して……!?」
「これは人聞きが悪い。お約束通りヘルメスめを殺し、レナ王女との婚約を阻みます。その対価に、アゼル様のお命も含まれていたというだけです」
老魔導師は虫けらでも相手にするように告げた。
その手には、古式ゆかしい魔法使いの杖が握られていた。ヘルメスのタブレット型スタッフ【クリティオス】に駆逐されて、もう誰も使わなくなった杖だ。
その杖が俺様に向けられ、強烈な【ファイヤーボール】が撃ち出された。
「誰か、助け……っ!」
俺様を一瞬で黒焦げにできる威力を持った魔法であることが、直感的に理解できた。
「……させるかっ!」
突如、俺様の前に立ちはだかる人影があった。
その声はヘルメスだ。
「ぬっ!? 我が魔法を弾いただと……!?」
【ファイヤーボール】はヘルメスが振った右手に弾かれた。
俺様はヘルメスによって、九死に一生を得たのだ。
1
あなたにおすすめの小説
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる