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3章。妹と合体する。風竜機神シルフィード
27話。薔薇十字団との対決。機械仕掛けの神
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「へ、ヘルメス!? なぜ俺様を助ける?」
アゼルが腰を抜かしながら、俺を見上げた。
「なぜって、当然だろ? なにより、あんたからは事情を聞く必要もありそうだからな」
俺は空間の歪んでいる場所を感知してやってきた。敵は空間転移で、王宮に入り込んだようだ。空間転移は、あらかじめ2つの空間同士を繋ぐ必要がある。
なら、招待客の誰か──今の会話から察するにアゼルが手引きしたのだろう。
「ヘルメス様!」
なんとティアが息を切らしながら、やってきた。混乱のドサクサに紛れて、拘束を逃れたのか。
「ティア!? いますぐ戻れ! バーティ会場に立て篭もっているんだ!」
バーティ会場には国王陛下もおり近衛騎士団が、がっちり守りを固めている。
「でも! 私も何かヘルメス様のお役に立ちたくてぇ!」
「なら、そこのアゼル公子の怪我を癒して、避難させてくれ!」
「は、はぃい!」
ティアは俺の役に立てるのがうれしいのか、目を輝かせた。
今までと完全に立場が逆だな。今までの冒険では、俺がティアから足手まとい呼ばわりされていた。
「ヘルメス……こ、ここは礼を言っておく……っ」
アゼルはティアの回復魔法を受けながら、感謝を口にした。
「……お前がヘルメスか。【資格無き者】の分際で、我が魔法を破る域に到達しておるとはな。小憎らしい」
老魔導師が憎々しげな声を出す。
……【資格無き者】?
武装集団が、俺を取り囲んだ。
「だが、たったひとりで、このオデッセ率いる執行部隊と戦おうなどとは、笑止千万」
「へ、ヘルメス様……!」
「心配ない。俺には頼もしい相棒がついているからな」
不安そうな声を上げるティアに語りかけた時だった。
「【氷の監獄】(コーキュートス)!」
凛とした少女の美声が響く。
パッキーーーン!
冷気の嵐が吹き荒れ、敵の進入経路となっていた倉庫が、真っ白に凍りついた。周囲の敵兵も、氷の彫像となって固まる。
「なにぃい!?」
「ヘルメス様! 敵の空間転移ゲートを凍結させました。もう増援はありませんわ!」
誇らしげに胸を張るのは、【ディストーション・アーマー】を身にまとったレナ王女だ。
「この魔法の腕前、さすがはSランク冒険者だな」
「いえ、ここまで威力も出せるのも、ヘルメス様が、わたくしのために特別に調整してくださった【クリティアス】があればこそです!」
レナ王女の【クリティオス】は、彼女の得意な水属性の魔法効果がより上がるように、俺がカスタマイズしてあった。
「潜入した敵兵は、近衛騎士団とドラニクルのメンバーたちが迎撃しています。わたくしたちは敵の首魁を捕らえましょう!」
「ああっ! サポートを頼む。こいつは、なかなか手強そうだ」
ファイヤーボールを弾いた右手が火傷を負っていた。空間を歪めたにも関わらず、熱ダメージを受けるとは、かなり非常識な魔法だぞ。
「ぐぅううう……レナ王女! ヘルメス様の隣に立って戦えるなんて、うらやましぃい!」
ティアが嫉妬混じりの声を上げる。
「……空間を歪める手袋に、これほどの魔法増幅率を誇るタブレット型スタッフ。やはり、貴様は我ら【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】を脅かす害悪だ。誅滅してくれよう!」
老魔導師オデッセが怒号を上げた。その拍子に顔を覆うフードがはだける。
その額には、薔薇の花弁のような痣があった。何かの紋章のようにも見える。
それは8年前に、俺の両親を殺した暗殺者の右腕にもあった紋章だ。
「……お前はまさか、あの男の関係者か?」
カッと心が熱くなった。
「ここで死ぬ貴様には、知る必要の無いことだ。しょせんは【資格無き者】。これを防ぐことなどできまい?」
老魔導師オデッセが、余裕の笑み浮かべながら杖をかざした。
「【灼熱地獄(インシニレイト)】!」
俺の足元に巨大な赤い魔法陣が出現した。魔法陣内を超高熱の閃光が満たす。
「ハハハハッ! 骨も残さず焼け落ちるが良い!」
「【妖精の靴】(フェアリーブーツ)!」
「ヘルメス様!?」
俺を救ったのは、こんなこともあろうかと開発していた魔導具【妖精の靴】だった。
俺が履いているこの靴は、俺に致命傷を与えうる攻撃が迫ると、爆風を噴射して俺の身を緊急回避させる。
間一髪、敵の魔法が俺を焼く前に、効果範囲外に逃げることができた。
「なに……っ!? かわしただと?」
オデッセは驚愕に目を剥く。
驚いたのはこちらも同じだ。地面が赤熱して溶けている。
これほど強力な魔法を瞬時に放つなど、Sランクの魔法使いでも不可能だ。
「もしかして、その杖の効果なのか? お前たちは何者だ?」
「おのれ。これ以上、【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】の技術を見せる訳にはいかんな」
オデッセが忌々しげに舌打ちした。
「一気に終わりにしやろう。クハハハッ! 対ドラゴン兵器などで有頂天になっている貴様に、真の英知を……偉大なる対神兵器を見せやてる! 来るがいい! 【機械仕掛けの神】暴風神ルドラ!」
オデッセが叫ぶと同時に、夜空の星々を巨大な影が遮った。
見上げれば王宮の上空に、超巨大な人型ゴーレムが出現し、俺たちを見下ろしていた。
いや、この魂を押し潰すかのような威圧感は、単なるゴーレムなどではない。もっと別の何かだ。
「ゴーレム!? こ、こここんな巨大な物体が空に!?」
ティアが慌てふためいていた。まだ避難していなかったのか。
「ゴーレムなどではない聖女よ。これぞ、ワシが錬金術によって造り出した【機械仕掛けの神】だ!」
オデッセの身体が空中に浮かび上がる。
「ヘルメスよ。【資格無き者】よ。【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】の真なる英知の前に、滅び去るがいぃいいいい!」
オデッセが【機械仕掛けの神】ルドラの装甲に触れると、溶けるようにルドラの中に吸い込まれていった。
「レナ、作戦司令室へ急行してくれ! こぉおおおおい! 機神ドラグーン!」
『応(おう)!』
俺の呼びかけに、機神ドラグーンが応えた。
ドォオオオオオン!
王宮の中庭に、大質量が空間転移してくる。
黒光する機械仕掛けのドラゴン──機神ドラグーンが、俺の目の前に出現した。
「こ、これが噂の機神ドラグーンか……!? なという威容だ!? これならば!」
ティアの治療を受けて元気になったアゼルが、快哉を叫んだ。
「はい、ヘルメス様! さぁ、ティア様たちも! ここにいては危険です!」
「わ、わかったわ! がんばってヘルメス様!」
「ああっ、任せてくれ!」
少女たちの声援を受けて、俺は機神ドラグーンに空間転移で乗り込んだ。
アゼルが腰を抜かしながら、俺を見上げた。
「なぜって、当然だろ? なにより、あんたからは事情を聞く必要もありそうだからな」
俺は空間の歪んでいる場所を感知してやってきた。敵は空間転移で、王宮に入り込んだようだ。空間転移は、あらかじめ2つの空間同士を繋ぐ必要がある。
なら、招待客の誰か──今の会話から察するにアゼルが手引きしたのだろう。
「ヘルメス様!」
なんとティアが息を切らしながら、やってきた。混乱のドサクサに紛れて、拘束を逃れたのか。
「ティア!? いますぐ戻れ! バーティ会場に立て篭もっているんだ!」
バーティ会場には国王陛下もおり近衛騎士団が、がっちり守りを固めている。
「でも! 私も何かヘルメス様のお役に立ちたくてぇ!」
「なら、そこのアゼル公子の怪我を癒して、避難させてくれ!」
「は、はぃい!」
ティアは俺の役に立てるのがうれしいのか、目を輝かせた。
今までと完全に立場が逆だな。今までの冒険では、俺がティアから足手まとい呼ばわりされていた。
「ヘルメス……こ、ここは礼を言っておく……っ」
アゼルはティアの回復魔法を受けながら、感謝を口にした。
「……お前がヘルメスか。【資格無き者】の分際で、我が魔法を破る域に到達しておるとはな。小憎らしい」
老魔導師が憎々しげな声を出す。
……【資格無き者】?
武装集団が、俺を取り囲んだ。
「だが、たったひとりで、このオデッセ率いる執行部隊と戦おうなどとは、笑止千万」
「へ、ヘルメス様……!」
「心配ない。俺には頼もしい相棒がついているからな」
不安そうな声を上げるティアに語りかけた時だった。
「【氷の監獄】(コーキュートス)!」
凛とした少女の美声が響く。
パッキーーーン!
冷気の嵐が吹き荒れ、敵の進入経路となっていた倉庫が、真っ白に凍りついた。周囲の敵兵も、氷の彫像となって固まる。
「なにぃい!?」
「ヘルメス様! 敵の空間転移ゲートを凍結させました。もう増援はありませんわ!」
誇らしげに胸を張るのは、【ディストーション・アーマー】を身にまとったレナ王女だ。
「この魔法の腕前、さすがはSランク冒険者だな」
「いえ、ここまで威力も出せるのも、ヘルメス様が、わたくしのために特別に調整してくださった【クリティアス】があればこそです!」
レナ王女の【クリティオス】は、彼女の得意な水属性の魔法効果がより上がるように、俺がカスタマイズしてあった。
「潜入した敵兵は、近衛騎士団とドラニクルのメンバーたちが迎撃しています。わたくしたちは敵の首魁を捕らえましょう!」
「ああっ! サポートを頼む。こいつは、なかなか手強そうだ」
ファイヤーボールを弾いた右手が火傷を負っていた。空間を歪めたにも関わらず、熱ダメージを受けるとは、かなり非常識な魔法だぞ。
「ぐぅううう……レナ王女! ヘルメス様の隣に立って戦えるなんて、うらやましぃい!」
ティアが嫉妬混じりの声を上げる。
「……空間を歪める手袋に、これほどの魔法増幅率を誇るタブレット型スタッフ。やはり、貴様は我ら【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】を脅かす害悪だ。誅滅してくれよう!」
老魔導師オデッセが怒号を上げた。その拍子に顔を覆うフードがはだける。
その額には、薔薇の花弁のような痣があった。何かの紋章のようにも見える。
それは8年前に、俺の両親を殺した暗殺者の右腕にもあった紋章だ。
「……お前はまさか、あの男の関係者か?」
カッと心が熱くなった。
「ここで死ぬ貴様には、知る必要の無いことだ。しょせんは【資格無き者】。これを防ぐことなどできまい?」
老魔導師オデッセが、余裕の笑み浮かべながら杖をかざした。
「【灼熱地獄(インシニレイト)】!」
俺の足元に巨大な赤い魔法陣が出現した。魔法陣内を超高熱の閃光が満たす。
「ハハハハッ! 骨も残さず焼け落ちるが良い!」
「【妖精の靴】(フェアリーブーツ)!」
「ヘルメス様!?」
俺を救ったのは、こんなこともあろうかと開発していた魔導具【妖精の靴】だった。
俺が履いているこの靴は、俺に致命傷を与えうる攻撃が迫ると、爆風を噴射して俺の身を緊急回避させる。
間一髪、敵の魔法が俺を焼く前に、効果範囲外に逃げることができた。
「なに……っ!? かわしただと?」
オデッセは驚愕に目を剥く。
驚いたのはこちらも同じだ。地面が赤熱して溶けている。
これほど強力な魔法を瞬時に放つなど、Sランクの魔法使いでも不可能だ。
「もしかして、その杖の効果なのか? お前たちは何者だ?」
「おのれ。これ以上、【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】の技術を見せる訳にはいかんな」
オデッセが忌々しげに舌打ちした。
「一気に終わりにしやろう。クハハハッ! 対ドラゴン兵器などで有頂天になっている貴様に、真の英知を……偉大なる対神兵器を見せやてる! 来るがいい! 【機械仕掛けの神】暴風神ルドラ!」
オデッセが叫ぶと同時に、夜空の星々を巨大な影が遮った。
見上げれば王宮の上空に、超巨大な人型ゴーレムが出現し、俺たちを見下ろしていた。
いや、この魂を押し潰すかのような威圧感は、単なるゴーレムなどではない。もっと別の何かだ。
「ゴーレム!? こ、こここんな巨大な物体が空に!?」
ティアが慌てふためいていた。まだ避難していなかったのか。
「ゴーレムなどではない聖女よ。これぞ、ワシが錬金術によって造り出した【機械仕掛けの神】だ!」
オデッセの身体が空中に浮かび上がる。
「ヘルメスよ。【資格無き者】よ。【薔薇十字団(ローゼン・クロイツ)】の真なる英知の前に、滅び去るがいぃいいいい!」
オデッセが【機械仕掛けの神】ルドラの装甲に触れると、溶けるようにルドラの中に吸い込まれていった。
「レナ、作戦司令室へ急行してくれ! こぉおおおおい! 機神ドラグーン!」
『応(おう)!』
俺の呼びかけに、機神ドラグーンが応えた。
ドォオオオオオン!
王宮の中庭に、大質量が空間転移してくる。
黒光する機械仕掛けのドラゴン──機神ドラグーンが、俺の目の前に出現した。
「こ、これが噂の機神ドラグーンか……!? なという威容だ!? これならば!」
ティアの治療を受けて元気になったアゼルが、快哉を叫んだ。
「はい、ヘルメス様! さぁ、ティア様たちも! ここにいては危険です!」
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少女たちの声援を受けて、俺は機神ドラグーンに空間転移で乗り込んだ。
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