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4章。ホムンクルスのルーチェ
40話。未完成の聖竜機バハムートで、イフリートを倒す
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「俺はAランク冒険【精霊使い】のザックだ!
わかるか? 俺たちの憧れSランクのレナ王女の相棒は、てめぇみたいなド底辺じゃなくて、俺こそふさわしいんだ!」
「いや、俺は単なる荷物持ちで……」
「黙れ! 俺は何度もレナ王女に仲間にしてもらえるように頼んで、断られてんだぞ!? 俺より、てめぇの方が格上だとでも言うのか、あっあーん!?」
要するにレナ王女に振られた八つ当たりか……
ザックと名乗った男が指を鳴らすと、炎をまとった巨人が突然現れる。強烈な魔力を帯びた紅い目が、俺を睨みつけた。
「これは……炎の精霊【イフリート】!?」
「ヒャハハハハ! 大正解だぜ! わかったなら這いつくばって、レナ王女の相棒の座はザック様にお譲りしますと言うんだな! じゃねぇと消し炭だぜ?」
めちゃくちゃなことを言われた。
「そんなことをしたところで、レナ王女の相棒に成れるハズがないだろう?」
「うるせぇ! 街中で、てめぇに赤っ恥をかかせれば、レナ王女も考え直すだろうよ!」
「ちょ! 正気なの!? 街中で、そんな怪物を喚び出すなんて!」
シルヴィアが恐怖で息を飲む。
イフリートの放つ熱波で気温が急上昇し、肌が焼けるようだった。
通行人からも悲鳴が上がった。
「おっ! かわいいじゃねぇか。クソ雑魚の分際で、こんなかわい子ちゃんを連れて歩くなんざ、ますますムカつくぜ! おい、嬢ちゃん、そんなヘナチョコ野郎よりも、俺様に乗り換えろよ。天国を味あわせてやるぜ、ヒャッハー!」
ザックはシルヴィアを見て、好色そうに舌なめずりした。
「お兄ちゃん……!」
シルヴィアが俺にすがりついてくる。
コイツ……妹に危害を加えるつもりなら、俺も容赦する気はない。
たが、相手が上位精霊イフリートとなると、厄介だった。
『マスター、相手は武力を用いて、シルヴィアとマスターを脅迫しています。犯罪者として、無力化してしまって、よろしいでしょうか?』
ルーチェが念話魔法で俺の心に語りかけてきた。
それ自体は簡単だが、【精霊使い】を倒した場合、使役されていた精霊が暴走し、周囲を破壊する恐れがある。
イフリートを瞬殺し、かつ俺の正体がバレないようにするには……この手しかない。
『なるほど、理解しました。最良の戦術だと思います。さすがはマスターです』
ルーチェは魔法で、俺の心を読み取って返事をしてくれた。
「ヒャハッ! そっちの娘も、嘘みてぇにかわいいじゃえねか? よし決めたぜ! ついでに両方ともこの俺に差し出せ。10秒以内だ! 10秒以内に言う通りにしなけりゃ、イフリートの火炎をお前らにブチ込んでやる!」
ザックがバカ笑いを上げる。イフリートが火炎を噴射し、街路樹を火だるまにした。
コイツ、完全に一線を超えたな。
「きゃああああっ!?」
「アヒャハハハハッ! 見たか、これが俺の力だぁ! そら、1、2……」
ザックは街に被害が出ることなど、まったく考慮していないようだった。
もう1秒たりとも、コイツの好きにはさせておけない。頼むぞルーチェ。
「警告します。私は錬金術師ヘルメスによって生み出された人造生命(ホムンクルス)。【聖竜機バハムート】の主です。あなたの行動は、王国の法を犯しています。よって、すみやかに制圧します」
「何ッ……!?」
「ヘルメス様の造った人造生命(ホムンクルス)だって!?」
この発言には、ザックも面食らったようだ。
俺たちを遠巻きに見ていた人々も驚愕の声を上げる。
「我が呼びかけに応えよ。【聖竜機バハムート】」
ズドォォォオオ──ンッ!
ルーチェの召喚に応じ、巨躯が空間転移してきた。出現した聖銀(ミスリル)製の白竜【聖竜機バハムート】が、イフリートを踏み潰す。
イフリートは断末魔と共に、最後の抵抗として火炎をまき散らした。だが、聖銀(ミスリル)装甲で覆われた聖竜機は小揺るぎもしない。
「俺の無敵のイフリートが!?」
今だ。巻き上がった粉塵で周囲が見えなくなった隙に、俺はザックの背後に忍び寄って、手刀を首に叩き込んだ。
ザックは意識を失って倒れる。
「ふぅ~、危なかった……」
ルーチェの正体と聖竜機をそうそうにお披露目してしまったが、この場を収めるにはこうするしかなかった。
俺はレナ王女の冒険者仲間なので、その関係でルーチェと行動を共にしていたとすれば、不自然ではないハズだ。
「やったぁ! さっすが、お兄ちゃん!」
シルヴィアが黄色い歓声を上げる。
「すげぇ! これがヘルメス様の新兵器か! イフリートが子供扱いじゃないか!」
「うわっ、カッコいい!」
「人造生命(ホムンクルス)ですって!? あの娘、天使みたいにかわいいわ!」
野次馬たちが集まってきて、【聖竜機バハムート】の威容と、ルーチェの美貌に感嘆の声を上げた。
聖竜機は未完成で、まだ戦闘行動はまともにできない。
イフリートを倒した噂はすぐに広がるだろうし、これは早々に聖竜機を完成させる必要があるな。
だが、その時、想定外のことが起こった。
わかるか? 俺たちの憧れSランクのレナ王女の相棒は、てめぇみたいなド底辺じゃなくて、俺こそふさわしいんだ!」
「いや、俺は単なる荷物持ちで……」
「黙れ! 俺は何度もレナ王女に仲間にしてもらえるように頼んで、断られてんだぞ!? 俺より、てめぇの方が格上だとでも言うのか、あっあーん!?」
要するにレナ王女に振られた八つ当たりか……
ザックと名乗った男が指を鳴らすと、炎をまとった巨人が突然現れる。強烈な魔力を帯びた紅い目が、俺を睨みつけた。
「これは……炎の精霊【イフリート】!?」
「ヒャハハハハ! 大正解だぜ! わかったなら這いつくばって、レナ王女の相棒の座はザック様にお譲りしますと言うんだな! じゃねぇと消し炭だぜ?」
めちゃくちゃなことを言われた。
「そんなことをしたところで、レナ王女の相棒に成れるハズがないだろう?」
「うるせぇ! 街中で、てめぇに赤っ恥をかかせれば、レナ王女も考え直すだろうよ!」
「ちょ! 正気なの!? 街中で、そんな怪物を喚び出すなんて!」
シルヴィアが恐怖で息を飲む。
イフリートの放つ熱波で気温が急上昇し、肌が焼けるようだった。
通行人からも悲鳴が上がった。
「おっ! かわいいじゃねぇか。クソ雑魚の分際で、こんなかわい子ちゃんを連れて歩くなんざ、ますますムカつくぜ! おい、嬢ちゃん、そんなヘナチョコ野郎よりも、俺様に乗り換えろよ。天国を味あわせてやるぜ、ヒャッハー!」
ザックはシルヴィアを見て、好色そうに舌なめずりした。
「お兄ちゃん……!」
シルヴィアが俺にすがりついてくる。
コイツ……妹に危害を加えるつもりなら、俺も容赦する気はない。
たが、相手が上位精霊イフリートとなると、厄介だった。
『マスター、相手は武力を用いて、シルヴィアとマスターを脅迫しています。犯罪者として、無力化してしまって、よろしいでしょうか?』
ルーチェが念話魔法で俺の心に語りかけてきた。
それ自体は簡単だが、【精霊使い】を倒した場合、使役されていた精霊が暴走し、周囲を破壊する恐れがある。
イフリートを瞬殺し、かつ俺の正体がバレないようにするには……この手しかない。
『なるほど、理解しました。最良の戦術だと思います。さすがはマスターです』
ルーチェは魔法で、俺の心を読み取って返事をしてくれた。
「ヒャハッ! そっちの娘も、嘘みてぇにかわいいじゃえねか? よし決めたぜ! ついでに両方ともこの俺に差し出せ。10秒以内だ! 10秒以内に言う通りにしなけりゃ、イフリートの火炎をお前らにブチ込んでやる!」
ザックがバカ笑いを上げる。イフリートが火炎を噴射し、街路樹を火だるまにした。
コイツ、完全に一線を超えたな。
「きゃああああっ!?」
「アヒャハハハハッ! 見たか、これが俺の力だぁ! そら、1、2……」
ザックは街に被害が出ることなど、まったく考慮していないようだった。
もう1秒たりとも、コイツの好きにはさせておけない。頼むぞルーチェ。
「警告します。私は錬金術師ヘルメスによって生み出された人造生命(ホムンクルス)。【聖竜機バハムート】の主です。あなたの行動は、王国の法を犯しています。よって、すみやかに制圧します」
「何ッ……!?」
「ヘルメス様の造った人造生命(ホムンクルス)だって!?」
この発言には、ザックも面食らったようだ。
俺たちを遠巻きに見ていた人々も驚愕の声を上げる。
「我が呼びかけに応えよ。【聖竜機バハムート】」
ズドォォォオオ──ンッ!
ルーチェの召喚に応じ、巨躯が空間転移してきた。出現した聖銀(ミスリル)製の白竜【聖竜機バハムート】が、イフリートを踏み潰す。
イフリートは断末魔と共に、最後の抵抗として火炎をまき散らした。だが、聖銀(ミスリル)装甲で覆われた聖竜機は小揺るぎもしない。
「俺の無敵のイフリートが!?」
今だ。巻き上がった粉塵で周囲が見えなくなった隙に、俺はザックの背後に忍び寄って、手刀を首に叩き込んだ。
ザックは意識を失って倒れる。
「ふぅ~、危なかった……」
ルーチェの正体と聖竜機をそうそうにお披露目してしまったが、この場を収めるにはこうするしかなかった。
俺はレナ王女の冒険者仲間なので、その関係でルーチェと行動を共にしていたとすれば、不自然ではないハズだ。
「やったぁ! さっすが、お兄ちゃん!」
シルヴィアが黄色い歓声を上げる。
「すげぇ! これがヘルメス様の新兵器か! イフリートが子供扱いじゃないか!」
「うわっ、カッコいい!」
「人造生命(ホムンクルス)ですって!? あの娘、天使みたいにかわいいわ!」
野次馬たちが集まってきて、【聖竜機バハムート】の威容と、ルーチェの美貌に感嘆の声を上げた。
聖竜機は未完成で、まだ戦闘行動はまともにできない。
イフリートを倒した噂はすぐに広がるだろうし、これは早々に聖竜機を完成させる必要があるな。
だが、その時、想定外のことが起こった。
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