61 / 75
5章。ルーチェと合体する
61話。ルーチェと合体し、アザゼルに勝利する
しおりを挟む
「よし! やるぞルーチェ、合体だ!」
「はい」
俺たちの心がひとつになる。
その瞬間、スクリーンに【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】成功率が大きく表示された。
『成功率、99%!? 驚異的な数値です!』
作戦司令室の少女オペレーターが、驚愕している。
俺とルーチェは親子関係だ。
ルーチェの肉体は、俺の遺伝情報を元に作られている。さながら、アダム(最初の男性)の肋骨から造られたイブ(最初の女性)のごとく。
そのため、【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】の成功率は、非常に高くなっていた。元々、1つであった存在が1つに戻るのだ。
「「【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】! ゴォォオオ! 【聖竜剣バハムート】!」」
俺とルーチェの叫びが重なった。
聖竜機バハムートが飛び上がると、その身体が細く折りたたまれて、輝く巨剣へと変形する。
「これは!? な、なんと巨大なミスリルの剣か!?」
「まさか機神専用の【人造聖剣】であるか!?」
ジオス枢機卿と、教皇グリゼルダが目を丸くする。
聖竜機バハムートとの【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】。それは聖竜機が、究極の武装と化すことだ。
「あぐぅっ!? マスター、身体が熱くなって、壊れそうです……ッ」
ルーチェが喘ぎ声を漏らす。彼女の小さな身体が熱く火照っていた。
やはり、不安定な人造生命であるルーチェには負担が大きいか。なら短期決戦しかない。
「すまない、ルーチェ! この一撃で決めてやる!」
機神ドラグーンが、【聖竜剣バハムート】を掴んで天へと飛翔する。
堕天使アザゼルは嘲笑したように見えた。剣の一振りなど、ヤツにとってまるで脅威にならないのだろう。
だが……
「でも私は今、マスターとひとつになれて。マスターの存在を全身で感じられて幸せです……!」
「うぉおおおおお──ッ! 【因果逆転斬(ワールド・ブレイク)】!」
ルーチェの心の昂りと、俺の魂の叫びが重なった。
その瞬間、宇宙の絶対法則が覆される。
機神ドラグーンが振りかざした【聖竜剣バハムート】が、堕天使アザゼルを両断していた。
「理解不能……データ転送します」
アザゼルはそれだけ言い残すと、大爆発を起こす。機体の破片が四散し、巨大な爆炎が俺たちを照らした。
俺が開発した【聖竜剣バハムート】には、因果を逆転する力が備わっていた。
アザゼルがいかに瞬間移動で回避しようが無駄だ。攻撃が当たった結果を、因果律を捻じ曲げて、強制的に現出させる。必殺必中の一撃だった。
もっと、それにはルーチェの天使の力が必要不可欠なのだが……
「やったあぁああああ! ヘルメス様が勝ったわ!」
「うぉおおおお! 救世主ヘルメス様、ばんざあーい!」
ティアが大はしゃぎし、ジオス枢機卿らが感涙にむせんだ。
【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】が解かれ、【聖竜剣バハムート】はドラゴンの形態に戻る。
「……ルーチェ、大丈夫だったか?」
「は、はい。すごく、気持ち良かったです……」
熱に浮かされたように言うと、ルーチェは気を失ってしまった。
はて? 壊れてしまいそうなのに、気持ち良いとはどういう感覚なのだろうか?
幸い、命に別状は無さそうだが……
「おおっ! ヘルメスよ! やはり、おぬしはわらわの見込んだ男なのじゃ!」
少女教皇グリゼルダが、抱き着いてきた。
「おわっ、ちょっと教皇様!?」
「よし、決めたぞ! おぬし、わらわと結婚せい! 教皇は本来、結婚を許されぬのだが、神の子たる救世主とだけは、許されておるのじゃ!」
「はぁ!? いや、俺はアーディルハイド王国のレナ王女と婚約しているんですよ!?」
俺はグリゼルダから離れようとするが、狭いコクピット内では逃げ場がない。
「つまり、まだ結婚しておらぬということではないか!? なら、わらわにもチャンスがある!」
「いや、そうかも知れませんが。そんな発言をしたら、国際問題に!」
「それと教皇様などと、他人行儀な呼び方はやめい! 救世主は教皇より、上の立場じゃぞ。これからはグリゼルダと呼ぶのじゃ!」
「はぁ!? 教皇様を呼び捨てにしたら、俺は信徒から刺されるんじゃ!?」
これ以上、問題を増やさないで欲しい。
『ヘルメス様! 悪魔の群れを撃退できましたわ! ……って、何をなさっておられるのですか!?』
通信を送ってきたレナ王女の眉が吊り上がった。
「うむ! わらわは今、ヘルメスにプロポーズしておったのだ! わらわの夫はヘルメス以外に有り得ぬのじゃ! これは神意であるぞ!」
「神意って! それは、あなたの意思ですよね? 神様は関係ないですよね!?」
俺は全力で断る。
『教皇グリゼルダ様!? 困ります。ヘルメス様とわたくしは、神前で将来を誓い合った仲ですよ!』
『ちょっとお兄ちゃん! 私というのもがありながら、浮気しているの!?』
さらに妹のシルヴィアまで、通信で変なことを言ってきた。
「浮気とかしていない! とにかく、結婚についてはお断りします!」
俺は叫ぶと同時に、レナ王女とシルヴィアとの通信を遮断した。これ以上、おかしな誤解を招きたくない。
「むっ……まぁ、良いじゃ。わらわはまだ14歳。結婚できる年齢ではないしの」
グリゼルダは一応引き下がってくれた。
ほっ。
「じゃが、わらわはおぬしとの間に運命を感じたのじゃ。ふたりで、この世界を良い方向に向かわせて行こうではないか、救世主ヘルメスよ!」
「は、はぁ……まぁ、そういったことなら」
世界を良い方向とかは、壮大過ぎてよくわからないが、俺は頷いた。
「では、わらわと【クリティオス】の連絡先を交換しようぞ! 時々、相談相手になって欲しいのじゃ」
「……わかりました」
俺はタブレット端末を取り出して、グリゼルダと連絡先を交換した。
そういえば、女の子と連絡先を交換するなんてイベントは、俺の人生ではほぼ皆無だったな。幼馴染のティアか、仕事関係のレナ王女、妹とくらいしかやったことがなかった。
「くふふふっ、これでヘルメスといつでも話せるのじゃな」
グリゼルダは何かボソッと呟いた。
あまり頻繁に教皇様から連絡をもらっても困るかも知れないが……また結婚して欲しいとか言われたら、どうしよう。
とにかく、エーリュシオン教国での【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】暗躍を阻止することができた。
今はみんなの無事と、勝利を喜ぼう。
「はい」
俺たちの心がひとつになる。
その瞬間、スクリーンに【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】成功率が大きく表示された。
『成功率、99%!? 驚異的な数値です!』
作戦司令室の少女オペレーターが、驚愕している。
俺とルーチェは親子関係だ。
ルーチェの肉体は、俺の遺伝情報を元に作られている。さながら、アダム(最初の男性)の肋骨から造られたイブ(最初の女性)のごとく。
そのため、【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】の成功率は、非常に高くなっていた。元々、1つであった存在が1つに戻るのだ。
「「【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】! ゴォォオオ! 【聖竜剣バハムート】!」」
俺とルーチェの叫びが重なった。
聖竜機バハムートが飛び上がると、その身体が細く折りたたまれて、輝く巨剣へと変形する。
「これは!? な、なんと巨大なミスリルの剣か!?」
「まさか機神専用の【人造聖剣】であるか!?」
ジオス枢機卿と、教皇グリゼルダが目を丸くする。
聖竜機バハムートとの【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】。それは聖竜機が、究極の武装と化すことだ。
「あぐぅっ!? マスター、身体が熱くなって、壊れそうです……ッ」
ルーチェが喘ぎ声を漏らす。彼女の小さな身体が熱く火照っていた。
やはり、不安定な人造生命であるルーチェには負担が大きいか。なら短期決戦しかない。
「すまない、ルーチェ! この一撃で決めてやる!」
機神ドラグーンが、【聖竜剣バハムート】を掴んで天へと飛翔する。
堕天使アザゼルは嘲笑したように見えた。剣の一振りなど、ヤツにとってまるで脅威にならないのだろう。
だが……
「でも私は今、マスターとひとつになれて。マスターの存在を全身で感じられて幸せです……!」
「うぉおおおおお──ッ! 【因果逆転斬(ワールド・ブレイク)】!」
ルーチェの心の昂りと、俺の魂の叫びが重なった。
その瞬間、宇宙の絶対法則が覆される。
機神ドラグーンが振りかざした【聖竜剣バハムート】が、堕天使アザゼルを両断していた。
「理解不能……データ転送します」
アザゼルはそれだけ言い残すと、大爆発を起こす。機体の破片が四散し、巨大な爆炎が俺たちを照らした。
俺が開発した【聖竜剣バハムート】には、因果を逆転する力が備わっていた。
アザゼルがいかに瞬間移動で回避しようが無駄だ。攻撃が当たった結果を、因果律を捻じ曲げて、強制的に現出させる。必殺必中の一撃だった。
もっと、それにはルーチェの天使の力が必要不可欠なのだが……
「やったあぁああああ! ヘルメス様が勝ったわ!」
「うぉおおおお! 救世主ヘルメス様、ばんざあーい!」
ティアが大はしゃぎし、ジオス枢機卿らが感涙にむせんだ。
【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】が解かれ、【聖竜剣バハムート】はドラゴンの形態に戻る。
「……ルーチェ、大丈夫だったか?」
「は、はい。すごく、気持ち良かったです……」
熱に浮かされたように言うと、ルーチェは気を失ってしまった。
はて? 壊れてしまいそうなのに、気持ち良いとはどういう感覚なのだろうか?
幸い、命に別状は無さそうだが……
「おおっ! ヘルメスよ! やはり、おぬしはわらわの見込んだ男なのじゃ!」
少女教皇グリゼルダが、抱き着いてきた。
「おわっ、ちょっと教皇様!?」
「よし、決めたぞ! おぬし、わらわと結婚せい! 教皇は本来、結婚を許されぬのだが、神の子たる救世主とだけは、許されておるのじゃ!」
「はぁ!? いや、俺はアーディルハイド王国のレナ王女と婚約しているんですよ!?」
俺はグリゼルダから離れようとするが、狭いコクピット内では逃げ場がない。
「つまり、まだ結婚しておらぬということではないか!? なら、わらわにもチャンスがある!」
「いや、そうかも知れませんが。そんな発言をしたら、国際問題に!」
「それと教皇様などと、他人行儀な呼び方はやめい! 救世主は教皇より、上の立場じゃぞ。これからはグリゼルダと呼ぶのじゃ!」
「はぁ!? 教皇様を呼び捨てにしたら、俺は信徒から刺されるんじゃ!?」
これ以上、問題を増やさないで欲しい。
『ヘルメス様! 悪魔の群れを撃退できましたわ! ……って、何をなさっておられるのですか!?』
通信を送ってきたレナ王女の眉が吊り上がった。
「うむ! わらわは今、ヘルメスにプロポーズしておったのだ! わらわの夫はヘルメス以外に有り得ぬのじゃ! これは神意であるぞ!」
「神意って! それは、あなたの意思ですよね? 神様は関係ないですよね!?」
俺は全力で断る。
『教皇グリゼルダ様!? 困ります。ヘルメス様とわたくしは、神前で将来を誓い合った仲ですよ!』
『ちょっとお兄ちゃん! 私というのもがありながら、浮気しているの!?』
さらに妹のシルヴィアまで、通信で変なことを言ってきた。
「浮気とかしていない! とにかく、結婚についてはお断りします!」
俺は叫ぶと同時に、レナ王女とシルヴィアとの通信を遮断した。これ以上、おかしな誤解を招きたくない。
「むっ……まぁ、良いじゃ。わらわはまだ14歳。結婚できる年齢ではないしの」
グリゼルダは一応引き下がってくれた。
ほっ。
「じゃが、わらわはおぬしとの間に運命を感じたのじゃ。ふたりで、この世界を良い方向に向かわせて行こうではないか、救世主ヘルメスよ!」
「は、はぁ……まぁ、そういったことなら」
世界を良い方向とかは、壮大過ぎてよくわからないが、俺は頷いた。
「では、わらわと【クリティオス】の連絡先を交換しようぞ! 時々、相談相手になって欲しいのじゃ」
「……わかりました」
俺はタブレット端末を取り出して、グリゼルダと連絡先を交換した。
そういえば、女の子と連絡先を交換するなんてイベントは、俺の人生ではほぼ皆無だったな。幼馴染のティアか、仕事関係のレナ王女、妹とくらいしかやったことがなかった。
「くふふふっ、これでヘルメスといつでも話せるのじゃな」
グリゼルダは何かボソッと呟いた。
あまり頻繁に教皇様から連絡をもらっても困るかも知れないが……また結婚して欲しいとか言われたら、どうしよう。
とにかく、エーリュシオン教国での【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】暗躍を阻止することができた。
今はみんなの無事と、勝利を喜ぼう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,121
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる