62 / 75
6章。みんなと合体する。超竜機神アルティメット・ドラグーン
62話。ヘルメスの策略で、皇帝は泣きそうになる
しおりを挟む
3日後──
『わらわはエーリュシオン教会を束ねる教皇グリゼルダである。重大な発表がある故に、しばし皆の時間をちょうだいのするのじゃ!』
俺のタブレット端末から、少女教皇グリゼルダの可憐な姿が、空中に映し出された。
これは世界中のすべての【クリティオス】から流されている映像だ。数千万人単位の人間が、これを見聞きしていることになる。
『わらわは錬金術師ヘルメスを、父なる神が遣わした救世主と認めたのじゃ。また、その身内であるルーチェに大聖女の称号を与え、ゼバルティア帝国に出現した悪魔のダンジョン攻略を依頼した。これに反対する者、妨害せんとする者は神敵と心得よ!』
ラクス村へと向かう道中で、俺はこれを聞いていた。
ルーチェとティアは、すでに村に帰っていた。俺は正体を隠すために荷物持ちのロイとして、村までレナ王女に頼まれた荷物を運んでいた。
面倒ではあるけど必要なことだ。なにより、ずっとヘルメスでいるのは疲れる。
「よし、一斉配信はうまくいっているようだな」
『はい! さすがはロイ様です。情報を制する者は、世界を制するですね!』
レナ王女からも、配信成功の知らせが来ていた。
【クリティオス】には、いざという時、俺にとって必要な情報を流せるような機能も備えてあった。それによって実現したのが、このグリゼルダの宣言だ。
『教皇聖下! ダンジョンは帝国の財産でもあります。そのような勝手を申されては……!』
動転した男の声が、配信に割り込んできた。
おっ、これは……
どうやら、目的の人物が釣れたようだ。
『これはゼバルティア帝国皇帝エーギル殿ではないか? 悪魔が湧くダンジョンを財産とな……? その考えはまさに悪魔信仰! 異端であるぞぉおおお!』
教皇グリゼルダは、かわいい声で皇帝を一刀両断した。
もし帝国がクレームをつけてきたら、内容をそのまま流し、断罪する手筈になっていた。
『い、異端ですと!? お待ちくだされ! 教会には帝国も、それなりの献金をしております! 我が信仰の厚さは、教皇聖下もご存知のハズ……ッ!』
『言い訳は許さぬ。悪魔は人類の天敵ぞ! 聞けばこれを放置し、アーディルハイド王国に多大な損害をもたらしているそうではないか? まさかとは思うが、帝国は悪魔と契約を交わしておるのではなかろうな?』
グリゼルダの背後から、異端者審問官らが拷問器具の大型ハサミを打ち鳴らす音が聞こえてきた。
『教皇聖下、教理省・異端審問官、総勢3451名、総員集合完了しました! 被告、ゼバルティア帝国皇帝。判決、死刑! 異端者に地獄の責苦をタップリと味あわせてやりましょう! アヒャヒャヒャ!』
『うむ!』
『うむ、ではないぃいいいい……! た、頼みますから、時間を! 時間をくだされ! 重臣たちと協議の末、お返事いたしますので、そのように性急にこと運ばれては……!』
皇帝はビビリまくった様子だった。
異端審問官の悪名は世界中に轟いている。彼らに話は通じない。どのような国家、権力者であろうと、地獄の底まで追い詰める。
とにかく、敵に回すと厄介極まるヤバい奴らだった。
『あい、わかった。国境近くに十字軍を集結させるのじゃ。7日以内に返答が無い場合、あるいは要求が受け入れられない場合は、わらわ自らが軍を率いて悪魔討伐を開始する。悪魔も、それに与する者どもも、すべて殲滅じゃああああ!』
『うぉおおおおお! 神罰、神罰!』
『邪悪なる悪魔の信徒どもに、神の鉄槌を!』
教皇グリゼルダの背後に集まった聖騎士たちが、鬨の声をあげる。なるべく好戦的で熱狂的な声を出してもらっていた。
『はぁわわわわッ!』
案の定、皇帝は動揺しまくっていた。
グリゼルダが悪魔討伐を大義名分に、帝国を侵略するとでも思ったのだろう。
無論、グリゼルダには戦争を起こす気などない。
『皇帝エーギルよ、改心し、懺悔せよ! さもなくば、断頭台行きじゃ!』
『うぉおおおおおおお! 異教徒征伐だぁあああ!』
配信はそこで途切れた。
皇帝はさぞ、ショックを受けただろう。
よし、これで計略は成功だな。
これで皇帝が俺たちのダンジョン攻略を非難したり、妨害したりすることは、公にはできなくなった。
そんなことをしたら、エーリュシオン教会と本気で敵対することになってしまう。
『ヘルメスよ、今ので良かったかの?』
教皇グリゼルダが、俺に通話を寄越してきた。
「はい。ありがとうございます。ばっちりです」
まあ、やや、やり過ぎ感はあるが、故郷のラクス村と王国を守るためである。
『それは良かったのじゃ。そうじゃ、ダンジョン攻略が終ったら、また遊びに来ぬか? 悪魔についての情報交換も兼ねての』
「そうですね」
攻略対象のS級ダンジョンは、悪魔の故郷である地獄と繋がっている可能性もある。
グリゼルダには、しっかり報告しておくべきだろう。
『それを聞けて安心したのじゃ! ルーチェも連れてくるが良い。絶対じゃぞ!』
「はい。では」
俺は通話を切った。
グリゼルダから、本気で気に入られてしまったみたいだ。
俺はレナ王女の婚約者という立場なので、微妙ではあるのだけどな……
『わらわはエーリュシオン教会を束ねる教皇グリゼルダである。重大な発表がある故に、しばし皆の時間をちょうだいのするのじゃ!』
俺のタブレット端末から、少女教皇グリゼルダの可憐な姿が、空中に映し出された。
これは世界中のすべての【クリティオス】から流されている映像だ。数千万人単位の人間が、これを見聞きしていることになる。
『わらわは錬金術師ヘルメスを、父なる神が遣わした救世主と認めたのじゃ。また、その身内であるルーチェに大聖女の称号を与え、ゼバルティア帝国に出現した悪魔のダンジョン攻略を依頼した。これに反対する者、妨害せんとする者は神敵と心得よ!』
ラクス村へと向かう道中で、俺はこれを聞いていた。
ルーチェとティアは、すでに村に帰っていた。俺は正体を隠すために荷物持ちのロイとして、村までレナ王女に頼まれた荷物を運んでいた。
面倒ではあるけど必要なことだ。なにより、ずっとヘルメスでいるのは疲れる。
「よし、一斉配信はうまくいっているようだな」
『はい! さすがはロイ様です。情報を制する者は、世界を制するですね!』
レナ王女からも、配信成功の知らせが来ていた。
【クリティオス】には、いざという時、俺にとって必要な情報を流せるような機能も備えてあった。それによって実現したのが、このグリゼルダの宣言だ。
『教皇聖下! ダンジョンは帝国の財産でもあります。そのような勝手を申されては……!』
動転した男の声が、配信に割り込んできた。
おっ、これは……
どうやら、目的の人物が釣れたようだ。
『これはゼバルティア帝国皇帝エーギル殿ではないか? 悪魔が湧くダンジョンを財産とな……? その考えはまさに悪魔信仰! 異端であるぞぉおおお!』
教皇グリゼルダは、かわいい声で皇帝を一刀両断した。
もし帝国がクレームをつけてきたら、内容をそのまま流し、断罪する手筈になっていた。
『い、異端ですと!? お待ちくだされ! 教会には帝国も、それなりの献金をしております! 我が信仰の厚さは、教皇聖下もご存知のハズ……ッ!』
『言い訳は許さぬ。悪魔は人類の天敵ぞ! 聞けばこれを放置し、アーディルハイド王国に多大な損害をもたらしているそうではないか? まさかとは思うが、帝国は悪魔と契約を交わしておるのではなかろうな?』
グリゼルダの背後から、異端者審問官らが拷問器具の大型ハサミを打ち鳴らす音が聞こえてきた。
『教皇聖下、教理省・異端審問官、総勢3451名、総員集合完了しました! 被告、ゼバルティア帝国皇帝。判決、死刑! 異端者に地獄の責苦をタップリと味あわせてやりましょう! アヒャヒャヒャ!』
『うむ!』
『うむ、ではないぃいいいい……! た、頼みますから、時間を! 時間をくだされ! 重臣たちと協議の末、お返事いたしますので、そのように性急にこと運ばれては……!』
皇帝はビビリまくった様子だった。
異端審問官の悪名は世界中に轟いている。彼らに話は通じない。どのような国家、権力者であろうと、地獄の底まで追い詰める。
とにかく、敵に回すと厄介極まるヤバい奴らだった。
『あい、わかった。国境近くに十字軍を集結させるのじゃ。7日以内に返答が無い場合、あるいは要求が受け入れられない場合は、わらわ自らが軍を率いて悪魔討伐を開始する。悪魔も、それに与する者どもも、すべて殲滅じゃああああ!』
『うぉおおおおお! 神罰、神罰!』
『邪悪なる悪魔の信徒どもに、神の鉄槌を!』
教皇グリゼルダの背後に集まった聖騎士たちが、鬨の声をあげる。なるべく好戦的で熱狂的な声を出してもらっていた。
『はぁわわわわッ!』
案の定、皇帝は動揺しまくっていた。
グリゼルダが悪魔討伐を大義名分に、帝国を侵略するとでも思ったのだろう。
無論、グリゼルダには戦争を起こす気などない。
『皇帝エーギルよ、改心し、懺悔せよ! さもなくば、断頭台行きじゃ!』
『うぉおおおおおおお! 異教徒征伐だぁあああ!』
配信はそこで途切れた。
皇帝はさぞ、ショックを受けただろう。
よし、これで計略は成功だな。
これで皇帝が俺たちのダンジョン攻略を非難したり、妨害したりすることは、公にはできなくなった。
そんなことをしたら、エーリュシオン教会と本気で敵対することになってしまう。
『ヘルメスよ、今ので良かったかの?』
教皇グリゼルダが、俺に通話を寄越してきた。
「はい。ありがとうございます。ばっちりです」
まあ、やや、やり過ぎ感はあるが、故郷のラクス村と王国を守るためである。
『それは良かったのじゃ。そうじゃ、ダンジョン攻略が終ったら、また遊びに来ぬか? 悪魔についての情報交換も兼ねての』
「そうですね」
攻略対象のS級ダンジョンは、悪魔の故郷である地獄と繋がっている可能性もある。
グリゼルダには、しっかり報告しておくべきだろう。
『それを聞けて安心したのじゃ! ルーチェも連れてくるが良い。絶対じゃぞ!』
「はい。では」
俺は通話を切った。
グリゼルダから、本気で気に入られてしまったみたいだ。
俺はレナ王女の婚約者という立場なので、微妙ではあるのだけどな……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,121
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる