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2章。500人の美少女から溺愛される
25話。神殺しの勇者王
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一日前――
「これはまさしく、あのお方の剣技……!」
国王シュナイゼルは、水晶柱に映った映像を食い入るように見つめて、うめいた。
獅子のような金色の短髪に、凄みのある整った顔立ち。鍛え抜かれた身体をした威風堂々たる男だ。
映像に流れるのはシュナイゼルの娘、勇者イルティアが、天から叩き落とされる無残な姿だった。
勇者が偽物に敗北するという有り得ざる光景。
だが、かの剣聖の剣技を受け継いだ者が相手であったのなら、イルティアでは荷が重かったと言わざるをえない。
シュナイゼルは我が子の安否など眼中になく、ルカの剣技に魅入っていた。
これこそまさしく、シュナイゼルが至高の武として憧れ、敗北の屈辱と共に目に刻んだ神殺しの剣だった。
「剣聖ヴァラド。人でありながら雷神を斬り殺した男。かの御仁が弟子をとっていたとは……」
シュナイゼルにとって、剣聖ヴァラドは理想の存在だった。
18年前、女神より勇者に選ばれた直後。武者修行と称して世界中を旅して、剣聖を探し求めた。
気紛れに現れては村々を滅ぼしてきた暴虐なる下位神、雷神を返り討ちにしたと噂される剣聖に教えをこうためだ。
たが、巡りあった剣聖は、ぜひ弟子にして欲しいというシュナイゼルの要求を跳ね除けた。
『女神を殺したいだと? とんだ勇者もいたもんだ』
剣を学びたい目的を正直に話せと言われ、この男なら理解してくれるものと信じて打ち明けた。
『女神にとって人間など駒に過ぎん!』
それを鼻であしらわれ、思わず叫んだ。
剣聖はシュナイゼルの話を聞いても、女神殺しを容認しなかった。
勇者となったシュナイゼルは、女神と言葉を交えることで、勇者の本質に気づいた。
人間を守護する女神ネーノイスは、兄である邪神と何千年にも及ぶ争いを続けていた。女神は勇者を、邪神は魔王を生み出して、地上で代理戦争を行わせていたのだ。
そこに正義などなく、神々のくだらない兄妹喧嘩に、人間と魔物が翻弄されているだけだった。
シュナイゼルは女神より魔王討伐の使命を与えられたが無視し、神々を倒すための力を手に入れることに奔走した。
真の敵は魔王ではなく、女神と邪神であるとシュナイゼルは見定めた。女神の便利な手駒として一生を終えるなど、誇りが許さなかった。
剣聖から弟子となることを断られたが、それなら無理やりでも技を盗んでやろうと戦いを挑んだ。
一度でも見た技は、自分の物にできる自信があった。
『やれやれ。二言目にはスピードだのパワーだの。勇者ってのは、意外と単細胞なんだな。スキルと能力値の強さだけがすべてを決するなら、この世には竜種しか生き残らなかっただろうに』
ステータス的には、剣聖よりも自分の方が圧倒的に上のハズだった。
だが、負けた。その剣技も一度見ただけで見切れるほど、底の浅いモノではなかった。
『お前さんは最強かも知れねえが。剣の才はないな』
生まれてから、この力でねじ伏せることができなかった相手など、誰ひとりいなかった。
剣も魔法も歴代王家、最強クラスの才能の持ち主だと、もてはやされてきた。
それがここまでコケにされ、若きシュナイゼルは、何度も何度も剣聖に戦いを挑んだ。そして、ことごとく破れた。
『悪いことは言わねえ。神殺しなんざ、やめときな』
そう言って、剣聖ヴァラドは去っていた。
シュナイゼルは屈辱を晴らそうと、その後も剣聖の足取りを追った。
剣聖に勝てぬようでは、上位神である女神や邪神にかなうハズもない。
だが、その消息は王家の力を持ってしても、ようとして知れなかった。
「余(よ)よりも、ルカとかいうこの小娘の方が剣の才があったなどというのか?」
そんな剣聖が弟子をとっていたことは、意外という他なかった。
ルカについては、イルティアより通信魔法で情報を得ていた。『変身』という他人の姿と能力をコピーするレアスキルの持ち主で、イルティアの身代わりとして使い潰す予定だった者だ。
それが魔王軍を撃破し、イルティアになり代わってしまうとは……
イルティアは魔法を極めることこそ、最強に至る道だと信じ、剣を軽視していた。
故にルカの剣技が、人間の領域を超えたモノであることを見抜けなかったのだろう。
もともと、あの娘は2年前に急死した双子の姉と比べてデキが悪かった。勇者の器ではなかったのだ。
「イルティア……愚か者めが」
ぶざまにも奴隷に身をやつして生き延びた娘の姿を見て、シュナイゼルは吐き捨てるように呟いた。
だが、イルティアのおかげで『魔王の魔導書』が手に入った。それだけは褒めてやるべきだろう。
これで最強の軍勢を作り出せる算段が整った。
これまで、ただひたすらに磨き上げてきた己の力と、この軍勢の力が合わされば、必ずや女神を凌駕するに違いない。
「……どうやら女神はアルビオン王家を見限り、新たな勇者を地上に遣わしたようですね」
犬のように首輪を付けられたエルフの王女が、気丈にもシュナイゼルを見上げて言った。
年の頃、15歳ほどのあまりに美麗で可憐な少女だった。
神の手による至高の芸術品のように整った美貌は、凛然として、近寄りがたい雰囲気を放っている。
「左様。このルカなる者を倒せば、いよいよ天上の女神も地上に降り立ち、余と剣を交えるに違いないでしょうな」
弟子を倒されたとなれば、剣聖ヴァラドも再び姿を現す可能性がある。
剣聖の技をもう一度、目にし、その奥義を盗みつくせば、女神と戦う上で大きな力となるだろう。
かの剣聖を地べたに這いつくばらせるところを想像し、シュナイゼルは笑みをもらす。
「シュナイゼル、愚かな人。女神を倒せるなどと、本気で考えているのですか? 女神を滅ぼせば、人と魔の永劫の戦いが終わるとでも?」
「無論。『魔王の魔導書』のすべてを解き明かせば、不老不死となることができる。余が女神と邪神になり代わる新たな神として、永遠にこの世界に君臨することができるのだ。その圧倒的な力を持ってこそ、真なる平和は実現する!」
シュナイゼルは王女を繋いだ鎖を引っ張り、彼女を強引に抱き寄せた。
その途端、青白い火花が散って、痛みから王女の身体を手放してしまう。
「いい加減、余の求愛を受け入れてはいただけぬか、アナスタシア姫?」
「堕落したあなたになど、誰が抱かれますか」
エルフの王女は、王族の純血を維持するため、他種族の男を拒絶する魔法を生まれながらにかけられていた。
この魔法を解くには、エルフ王の許しが必要だった。
エルフの王族の生き残りは、アナスタシアだけ。すなわち彼女が望めば、この魔法は解除できる。
だが、どのような脅しや苦痛を与えられても、誇り高きエルフの王女は、シュナイゼルに抱かれるのを拒否した。
「姫、そなたは美しい。永遠に美しいままだ。余は欲しいと思ったモノは、すべて手に入れる。余の娘、イルティアの近衛騎士団長エリザ=ユーフォリア。かの者は、そなたの異母妹であること、エルフの長老どもが吐きましたぞ?」
アナスタシアの顔色が目に見えて変わった。
その反応で、情報が真実であることをシュナイゼルは確信する。
「ハーフエルフには、エルフの王族を名乗る資格がない。すべて家臣に落とされる。しかし、姫はそれを不憫と思い、早くに母を亡くしたエリザに姉として接し、魔法の手ほどきなどしていたそうですな? 長きエルフの歴史の中でも例がないことと、長老どもは憤っておりましたぞ」
「エリザはアルビオン王家に長らく仕えた忠臣であるハズですよ!」
「勇者を、我が娘を裏切るとは、大した忠臣であることよ」
シュナイゼルの揶揄に、アナスタシアは声をあら上げる。
「エリザに、わたくしの妹に何かしたら、舌を噛み切って死にます! あなたの野望にはわたくしの『オーバースキル』が必要なのでしょう!?」
「これはしかり。妹殿は、アナスタシア姫を救うべく命をかけているというに。そなたに先立たれと知ったら、どれほど嘆き悲しむでしょうかな?」
「そ、それは……」
痛いところを突かれてアナスタシアは言葉を濁す。
エリザを利用すれば、アナスタシアを手懐けることは、たやすそうだ。
シュナイゼルは内心、ほくそ笑む。
エリザだけは生かして捕らえるとしよう。
「さて、そろそろ日課を片付けるとするか」
シュナイゼルが指を弾くと、床に巨大な五芒星の魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣が血のような赤い光を放つと、輝きの中から、九つの首を持った巨大なドラゴンが現れた。
見る者すべてに、死の絶望を与えるであろう威圧感。
これは、それぞれ異なる種類の古竜を錬金術によって融合させたドラゴンキメラだ。
シュナイゼルのスキル【複製】は、手に触れた消費アイテムを無限に複製できる。
生物を複製することはアナスタシアの『オーバースキル』で、スキル効果をアップさせても不可能だった。
だが、死体を繋ぎ合わせ、錬金術によって、かりそめの命を与えたキメラだけは例外だった。動く死体であって、生物とは判定されなかったのだ。
九つの首から咆哮を上げ、ドラゴンキメラがアナスタシアを喰い殺そうと迫る。
これは敵味方の区別なく、ただ暴れ回るだけの最凶モンスターだ。
「破神流、天破雷神閃」
シュナイゼルが腰の剣を抜くと同時に、怪物の巨体が両断された。
かつて、雷神を斬り殺したという剣聖の奥義。稲妻よりも速き一撃だった。
剣聖の技を目に焼き付け、独自に再現して習得したものだ。
=========
ドラゴンキメラを倒しました。
経験値を獲得。
レベルアップしました!
クラス【キング】。レベル999になりました!
==========
シュナイゼルの頭の中に無機質な声が響く。
古竜9体分の経験値を持つドラゴンキメラを複製して、一日数体、毎日倒していた。
魔王領を探索するよりも、よほど効率の良い経験値稼ぎだった。
これによって、シュナイゼルのレベルはもはや誰にも到達できない至高の領域に到達していた。
それこそ、神に手が届く領域に。
「余の力はすでに剣聖を超えた。アナスタシア姫よ、見ておるが良い。剣聖の弟子にして、女神に選ばれた娘、ルカを葬ることで、これを証明してみせよう!」
広間にシュナイゼルの高笑いが響いた。
「これはまさしく、あのお方の剣技……!」
国王シュナイゼルは、水晶柱に映った映像を食い入るように見つめて、うめいた。
獅子のような金色の短髪に、凄みのある整った顔立ち。鍛え抜かれた身体をした威風堂々たる男だ。
映像に流れるのはシュナイゼルの娘、勇者イルティアが、天から叩き落とされる無残な姿だった。
勇者が偽物に敗北するという有り得ざる光景。
だが、かの剣聖の剣技を受け継いだ者が相手であったのなら、イルティアでは荷が重かったと言わざるをえない。
シュナイゼルは我が子の安否など眼中になく、ルカの剣技に魅入っていた。
これこそまさしく、シュナイゼルが至高の武として憧れ、敗北の屈辱と共に目に刻んだ神殺しの剣だった。
「剣聖ヴァラド。人でありながら雷神を斬り殺した男。かの御仁が弟子をとっていたとは……」
シュナイゼルにとって、剣聖ヴァラドは理想の存在だった。
18年前、女神より勇者に選ばれた直後。武者修行と称して世界中を旅して、剣聖を探し求めた。
気紛れに現れては村々を滅ぼしてきた暴虐なる下位神、雷神を返り討ちにしたと噂される剣聖に教えをこうためだ。
たが、巡りあった剣聖は、ぜひ弟子にして欲しいというシュナイゼルの要求を跳ね除けた。
『女神を殺したいだと? とんだ勇者もいたもんだ』
剣を学びたい目的を正直に話せと言われ、この男なら理解してくれるものと信じて打ち明けた。
『女神にとって人間など駒に過ぎん!』
それを鼻であしらわれ、思わず叫んだ。
剣聖はシュナイゼルの話を聞いても、女神殺しを容認しなかった。
勇者となったシュナイゼルは、女神と言葉を交えることで、勇者の本質に気づいた。
人間を守護する女神ネーノイスは、兄である邪神と何千年にも及ぶ争いを続けていた。女神は勇者を、邪神は魔王を生み出して、地上で代理戦争を行わせていたのだ。
そこに正義などなく、神々のくだらない兄妹喧嘩に、人間と魔物が翻弄されているだけだった。
シュナイゼルは女神より魔王討伐の使命を与えられたが無視し、神々を倒すための力を手に入れることに奔走した。
真の敵は魔王ではなく、女神と邪神であるとシュナイゼルは見定めた。女神の便利な手駒として一生を終えるなど、誇りが許さなかった。
剣聖から弟子となることを断られたが、それなら無理やりでも技を盗んでやろうと戦いを挑んだ。
一度でも見た技は、自分の物にできる自信があった。
『やれやれ。二言目にはスピードだのパワーだの。勇者ってのは、意外と単細胞なんだな。スキルと能力値の強さだけがすべてを決するなら、この世には竜種しか生き残らなかっただろうに』
ステータス的には、剣聖よりも自分の方が圧倒的に上のハズだった。
だが、負けた。その剣技も一度見ただけで見切れるほど、底の浅いモノではなかった。
『お前さんは最強かも知れねえが。剣の才はないな』
生まれてから、この力でねじ伏せることができなかった相手など、誰ひとりいなかった。
剣も魔法も歴代王家、最強クラスの才能の持ち主だと、もてはやされてきた。
それがここまでコケにされ、若きシュナイゼルは、何度も何度も剣聖に戦いを挑んだ。そして、ことごとく破れた。
『悪いことは言わねえ。神殺しなんざ、やめときな』
そう言って、剣聖ヴァラドは去っていた。
シュナイゼルは屈辱を晴らそうと、その後も剣聖の足取りを追った。
剣聖に勝てぬようでは、上位神である女神や邪神にかなうハズもない。
だが、その消息は王家の力を持ってしても、ようとして知れなかった。
「余(よ)よりも、ルカとかいうこの小娘の方が剣の才があったなどというのか?」
そんな剣聖が弟子をとっていたことは、意外という他なかった。
ルカについては、イルティアより通信魔法で情報を得ていた。『変身』という他人の姿と能力をコピーするレアスキルの持ち主で、イルティアの身代わりとして使い潰す予定だった者だ。
それが魔王軍を撃破し、イルティアになり代わってしまうとは……
イルティアは魔法を極めることこそ、最強に至る道だと信じ、剣を軽視していた。
故にルカの剣技が、人間の領域を超えたモノであることを見抜けなかったのだろう。
もともと、あの娘は2年前に急死した双子の姉と比べてデキが悪かった。勇者の器ではなかったのだ。
「イルティア……愚か者めが」
ぶざまにも奴隷に身をやつして生き延びた娘の姿を見て、シュナイゼルは吐き捨てるように呟いた。
だが、イルティアのおかげで『魔王の魔導書』が手に入った。それだけは褒めてやるべきだろう。
これで最強の軍勢を作り出せる算段が整った。
これまで、ただひたすらに磨き上げてきた己の力と、この軍勢の力が合わされば、必ずや女神を凌駕するに違いない。
「……どうやら女神はアルビオン王家を見限り、新たな勇者を地上に遣わしたようですね」
犬のように首輪を付けられたエルフの王女が、気丈にもシュナイゼルを見上げて言った。
年の頃、15歳ほどのあまりに美麗で可憐な少女だった。
神の手による至高の芸術品のように整った美貌は、凛然として、近寄りがたい雰囲気を放っている。
「左様。このルカなる者を倒せば、いよいよ天上の女神も地上に降り立ち、余と剣を交えるに違いないでしょうな」
弟子を倒されたとなれば、剣聖ヴァラドも再び姿を現す可能性がある。
剣聖の技をもう一度、目にし、その奥義を盗みつくせば、女神と戦う上で大きな力となるだろう。
かの剣聖を地べたに這いつくばらせるところを想像し、シュナイゼルは笑みをもらす。
「シュナイゼル、愚かな人。女神を倒せるなどと、本気で考えているのですか? 女神を滅ぼせば、人と魔の永劫の戦いが終わるとでも?」
「無論。『魔王の魔導書』のすべてを解き明かせば、不老不死となることができる。余が女神と邪神になり代わる新たな神として、永遠にこの世界に君臨することができるのだ。その圧倒的な力を持ってこそ、真なる平和は実現する!」
シュナイゼルは王女を繋いだ鎖を引っ張り、彼女を強引に抱き寄せた。
その途端、青白い火花が散って、痛みから王女の身体を手放してしまう。
「いい加減、余の求愛を受け入れてはいただけぬか、アナスタシア姫?」
「堕落したあなたになど、誰が抱かれますか」
エルフの王女は、王族の純血を維持するため、他種族の男を拒絶する魔法を生まれながらにかけられていた。
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アナスタシアの顔色が目に見えて変わった。
その反応で、情報が真実であることをシュナイゼルは確信する。
「ハーフエルフには、エルフの王族を名乗る資格がない。すべて家臣に落とされる。しかし、姫はそれを不憫と思い、早くに母を亡くしたエリザに姉として接し、魔法の手ほどきなどしていたそうですな? 長きエルフの歴史の中でも例がないことと、長老どもは憤っておりましたぞ」
「エリザはアルビオン王家に長らく仕えた忠臣であるハズですよ!」
「勇者を、我が娘を裏切るとは、大した忠臣であることよ」
シュナイゼルの揶揄に、アナスタシアは声をあら上げる。
「エリザに、わたくしの妹に何かしたら、舌を噛み切って死にます! あなたの野望にはわたくしの『オーバースキル』が必要なのでしょう!?」
「これはしかり。妹殿は、アナスタシア姫を救うべく命をかけているというに。そなたに先立たれと知ったら、どれほど嘆き悲しむでしょうかな?」
「そ、それは……」
痛いところを突かれてアナスタシアは言葉を濁す。
エリザを利用すれば、アナスタシアを手懐けることは、たやすそうだ。
シュナイゼルは内心、ほくそ笑む。
エリザだけは生かして捕らえるとしよう。
「さて、そろそろ日課を片付けるとするか」
シュナイゼルが指を弾くと、床に巨大な五芒星の魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣が血のような赤い光を放つと、輝きの中から、九つの首を持った巨大なドラゴンが現れた。
見る者すべてに、死の絶望を与えるであろう威圧感。
これは、それぞれ異なる種類の古竜を錬金術によって融合させたドラゴンキメラだ。
シュナイゼルのスキル【複製】は、手に触れた消費アイテムを無限に複製できる。
生物を複製することはアナスタシアの『オーバースキル』で、スキル効果をアップさせても不可能だった。
だが、死体を繋ぎ合わせ、錬金術によって、かりそめの命を与えたキメラだけは例外だった。動く死体であって、生物とは判定されなかったのだ。
九つの首から咆哮を上げ、ドラゴンキメラがアナスタシアを喰い殺そうと迫る。
これは敵味方の区別なく、ただ暴れ回るだけの最凶モンスターだ。
「破神流、天破雷神閃」
シュナイゼルが腰の剣を抜くと同時に、怪物の巨体が両断された。
かつて、雷神を斬り殺したという剣聖の奥義。稲妻よりも速き一撃だった。
剣聖の技を目に焼き付け、独自に再現して習得したものだ。
=========
ドラゴンキメラを倒しました。
経験値を獲得。
レベルアップしました!
クラス【キング】。レベル999になりました!
==========
シュナイゼルの頭の中に無機質な声が響く。
古竜9体分の経験値を持つドラゴンキメラを複製して、一日数体、毎日倒していた。
魔王領を探索するよりも、よほど効率の良い経験値稼ぎだった。
これによって、シュナイゼルのレベルはもはや誰にも到達できない至高の領域に到達していた。
それこそ、神に手が届く領域に。
「余の力はすでに剣聖を超えた。アナスタシア姫よ、見ておるが良い。剣聖の弟子にして、女神に選ばれた娘、ルカを葬ることで、これを証明してみせよう!」
広間にシュナイゼルの高笑いが響いた。
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