「私のために死ねるなら幸せよね!」と勇者姫の捨て駒にされたボクはお前の奴隷じゃねえんだよ!と変身スキルで反逆します。土下座されても、もう遅い

こはるんるん

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2章。500人の美少女から溺愛される

24話。北側諸侯を味方につける

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 魔法通信室には、イルティアが魔王から略奪した目も眩むような金銀財宝が積み上げられていた。
 魔王軍の包囲を受けて、王都に運べなかった戦利品の残りを、兵士に命じて、すべてかき集めたのだ。

 イルティアは王座のような見事なしつらえの椅子に、傲然と腰掛ける。その髪は、きらめく金髪に戻され、全身から王女にふさわしい威厳を放っていた。

「ルカ様。申し訳ございませんが、北側諸侯との交渉中は、ずっとメイドのフリをしていてくださいね」

「……わかった」

 ボクは髪を銀色に染めて、メイド服を着ていた。
 これからここで、通信魔法を使った北側諸侯との交渉が行なわれる。彼らをボクの味方に引き込むにあたって、どんな連中であるのか見ておきたかった。

 アルビオン王国の北。大陸中央には、魔王が支配する広大な魔王領が広がっている。
 オーダンの領主ティアルフィ公爵家をはじめとする北側諸侯は、魔王領からの強力な魔物の侵入に備える役目を持った者たちだ。

「お、お美しい。よくお似合いでございます」

 騎士の正装をしたエリザが、ボクを見て顔を赤く染める。
 美少女から好意を寄せられるのはうれしいけど、美しいとか褒められると、微妙な気分だ。完全に、男として見られていないな……

「なんでメイドなんだか。できれば次からは男装がしたいんだけど」

「それは人類の損失でございます!」

 エリザが間髪入れずに断言した。
 おい、人類の損失って、なんだ……?

「そろそろ、始めますよ。通信開始5秒前……」

 イルティアの言葉に慌てて襟を糺す。
 彼女の目の前に設置された6つの大きな水晶玉に、北側諸侯たちの顔が写しだされる。

「ごきげんよう。我が国の誉れ高き盾、北側諸侯のみなさん。アルビオン王国第二王女。ルカ=ミレーヌ=アルビオン。突然の招集にも関わらず、お集まりいただき感謝いたします」

「これは王女殿下! 20万の魔王軍を寡兵にて、返り討ちにされたと聞き及びました。さすがは女神様に選ばれた勇者様。いやはや頼もしい限りですな!」

「さよう。これほどお美しい上に、父君に勝るとも劣らぬ武勇をお持ちとは。王女殿下がおられれば、我が国は安泰でございます」

 諸侯は口を開くと、一様にイルティアに媚を売った。

 彼らはオーダンが魔王軍の包囲を受けているにも関わらず、国王の命令に従って援軍を出さなかった。
 どうも、そのことに負い目を感じているようだった。

「ええ。もし私が敗北したら、次はみなさんのご領地が蹂躙されたでしょうから。気が気ではなかったでしょう」

 イルティアは、猫がネズミをなぶるかのような嗜虐的な笑みをもらす。

「なにしろ、お父様は北側の領地はすべて放棄して、兵力を王都に集めるおつもりでしたからね」

「はっ。陛下からは、魔王軍に利用されぬよう。領内のあらゆる施設、資材、食料を焼き払い、井戸には毒を入れるように指示されました……」

 一番右の白髪の老貴族が、顔面蒼白となって告げた。

「焦土戦術。敵の大軍を引き込んで壊滅させるには効果的ですが、実行する方は、たまったものではないですわよね?」

 それはそうだ。そんなことをしたら、その土地は死んだも同然だ。

「はっ。まさしく。王女殿下のご活躍のおかげで、我が領民は無事に冬が越せます。感謝の言葉しかありません」

「我ら一同、深く感謝申しあげます」

 老貴族をはじめとする諸侯たちは、一斉に頭を下げた。

 北からの大量の避難民を、国内の他の土地で養いきれる訳がない。
 土地も家も備蓄していた食料も失っては、野垂れ死ぬ者が大勢出ただろう。

 それが防げて、うれしい限りだった。

「それはそうと王女殿下……殿下はルカ様とお名前を変えられた上に。アルビオン王家を廃し、この国を共和制にすると宣言なされたとか? まことでありましょうか?」

 中央の水晶に映る恰幅の良い中年男が、恐る恐るといった感じで尋ねた。

「さすがはルキオン伯爵。昨日のことなのにお耳が早いですね。その通り、私は初代勇者の名にあやかってルカと改名しました。アルビオン王国のみならず、いずれ、世界のすべてを支配するであろう王者の名です」

「おおっ……! な、なんと」

 諸侯の面々が色めき立つ。それはボクも同じだった。

 ルカが世界を支配する王者の名だって……?
 イルティアのヤツ、何を言い出すんだ。

 ボクの目的が世界征服であるなどと、諸侯に誤解されては困る。
 
 だか、メイド姿のボクが口を挟んで、交渉を台無しにする訳にもいかず、ことの成り行きを見守るしかなかった。

「王国を共和制にするというのは、民衆の支持を集めて、お父様に勝つための方便にすぎません。私が新たに女神から授けられた究極の聖剣は、私を支持する者の数とその想いの強さで攻撃力を増します。無欲な聖女を演じて愚民どもを扇動し、力を手に入れる。それが目的です」

 足を組み替えながら、イルティアは他人を見下しきった邪悪な笑みを浮かべる。
 勇者というより魔王のような貫禄だった。怖い。

「お父様はこともあろうに勇者である私をないがしろにし、弟のエリオットを溺愛しています。いずれ、エリオットを国王にと考えているのです。
 私が窮地にあったにも関わらず、援軍を出さなかったのが何よりの証拠。私はみなさん同様、国王陛下から見捨てられた存在なのです。このようなことが許せるでしょうか?」

「ゆ、許せませんな……」

 ドレスより伸びたイルティアの細足を覗き込みながら、ルキオン伯爵が告げる。
 この男はそうとう好色そうだった。さきほどまでは、イルティアの顔色をうかがっていたのに、緊張が緩んだのか、今は下卑た欲望をあらわにしている。

 イルティアは彼の性格を計算に入れて、足を組み替えたようだった。
 
「すでにオーダンの領主。名門ティアルフィ公爵家は、私への帰順を示しています。
 私の元には20万の大軍に打ち勝った精鋭の聖騎士団と、究極の聖剣。さらには魔王から奪った魔導書まであります。
 その私を裏切って。
 ふふっ……お父様のお命は風前の灯だとは思いませんか?」

 諸侯たちはゴクリと喉を鳴らした。

「私が女王となったあかつきには、みなさんには領地の加増と、子々孫々にいたるまでの繁栄を約束しましょう。
 まずは手始めに、お集まりいただいた感謝の印として、この部屋にある財宝を差し上げます。もちろん、私が世界を統べれば、あなた方には国のひとつやふたつ任せても良いですわよ?」

 国のひとつやふたつって……!?
 そんな無茶な約束をしてしまって良いのかと、ボクは内心、度肝を抜かれる。
 
「ま、まことでございますか!? 私はルカ王女殿下に忠誠を誓います!」

「わ、私も!」

「ルカ王女殿下! 実は私には、王女殿下とちょうど同い年くらいの息子がおりまして。一度、お目通りいただけないかと……」

「オースティン伯爵、抜け駆けは許さんぞ!」

 イルティアの大ボラは効果てきめんだった。
 諸侯たちは、競うように王女ルカに忠誠を誓う。

『イルティア、国を与えるとか本気で言っているのか?』

『無論、嘘です。ご心配なさらなくても、ルカ様が王位についてしまえば、反抗する気も起きなくなるでしょう。強い者に従うのが長生きの秘訣であることくらい、こいつらも心得ていますよ』

 通信魔法でイルティアの心に語りかけると、彼女は自信満々で返した。
 そうかも知れないが、後々のトラブルの火種になっても困る。後でイルティアには、無責任な発言をしないようにキツく注意しておかなくては……
 
「あなた方が、我が臣として期待に見合う働きをするなら、私もそれに応えましょう。ただし、もし言葉を違えてお父様につくようなことがあれば……残念ながら、我が統治下で、お家が続くことはあり得ませんわよ」
 
「はっ! 肝に銘じます」

「では……オーダンは魔王軍の攻撃により多数の怪我人が出ています。回復魔法の使い手である神官を可能な限り、派遣なさい。
 城壁や城門の修復も急務です。職人の派遣と資材の運搬を命じます。王都の動向を探り、怪しい動きがあれば逐一報告を。
 兵も、いつでも動かせる状態にしておきなさい」

「はっ!」

 イルティアの指示に、諸侯たちはすべてイエスと答える。
 確実に贈り物以上のリターンを引き出していた。

 こうして北側諸侯の6名は、ボクの配下に加わることになったのだ。


究極の聖剣。現在の攻撃力18779
(北側の領民もルカの支配下に加わり、ルカに救われたため攻撃力が爆上がり)
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