「私のために死ねるなら幸せよね!」と勇者姫の捨て駒にされたボクはお前の奴隷じゃねえんだよ!と変身スキルで反逆します。土下座されても、もう遅い

こはるんるん

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2章。500人の美少女から溺愛される

33話。ミリアとお忍びデート

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2日後――

「ルカお姉様とお忍びデートだなんて興奮するわ!」

「いや、デートじゃないからね。ボクの家族に会いに行くだけだからね」

 大はしゃぎのミリアに抱きつかれたボクは、苦笑して答える。
 あの、胸が腕に当たっているんですけど……

 美少女に身体を密着されるというシチュエーションは、何度味わっても慣れることがない。

 ミリアの父、ハゾス様から教えてもらった大規模魔法を使うためには、三日ほどの準備が必要だった。
 その間、多少、暇ができたので、ボクの家族に会いに行くことにしたのだ。

「すごいわ! ルカお姉様! ドレスをまとえば女神も嫉妬するほどの美少女で、男装すれば世界一の麗人だなんて、むっほー! 鼻血が出ます!」

 ボクは冒険者風の服を着て、男装していた。
 髪はポニーテールに結い上げ、胸は目立たないようにサラシを巻き、ゆったりした外套を着ることで隠している。

 首からはFランク冒険者であることを示す銅のプレートを下げていた。ボクはイルティアの護衛役になる前に、冒険者ギルドに登録していたので、これを変装の材料に使うことにしたのだ。

「ミリア。人前では、お兄ちゃんと呼んでよね。平民に扮して、男装しているんだからさ」

「はい、お兄様!」

「ちょ、ちょっと。そんなふうに兄を呼ぶ庶民がいると思う?」

 公爵令嬢として育ったミリアに平民のマネごとさせるのは、骨が折れそうだった。
 ミリアも町娘に変装するために地味な服を着ていたが、振る舞いの端々に高貴さが滲み出ている。

「で、では……ルカお兄ちゃん!」

「おおっ、いいじゃない。その感じ」

 ここ最近、ずっと姫様とか呼ばれていたので、お兄ちゃんと呼ばれると感動だ。
 それに男物の服に身を包んで、男扱いされると、目の前がひらけたような開放感がある。

 スカートだと思いっきり走ったり、足を開けて座ったりできないので、割とストレスなんだよな……

 昨日、スカートを履いたまま、中庭から屋敷の二階のテラスに跳び乗ったら「なにをやっているんですか!?」と、エリザに怒られた。はしたないらしい。

 女の子っていうのは不便なものだ。

「ああっ、もうずっとズボンをはいて過ごしていたい……」

「それは人類の損失ですよ。お姉様!」

 ボクと手をつないでオーダンに向かって歩くミリアが、憤然と告げる。

 領主の屋敷には都市外に脱出するための秘密の抜け道がある。イルティアが脱出に使ったモノだ。
 これを使ってオーダンの南に広がる森に出たボクたちは、南城門を目指していた。

 ボクが外出しようとすると、聖騎士団のものものしい護衛が常に張り付く。これでは、とてもじゃないけれど、家族団欒などできない。

 髪を銀色にしてイルティアと入れ替わればひとりで外出できるが。今度は街をめちゃくちゃにした魔王の手先だ、などと人々に怖がられてしまう。

 そこで男装をして、お忍びで出向くことにした。
 
 それには抜け道をミリアに教えてもらう必要があり、相談したところ「私も絶対について行きます!」と言って聞かなかった。 

『ルカお姉様のご両親ということは、私のお父様とお母様も同然! 今のうちにごあいさつしておかなくては!』

 とのことだった。
 ミリアは頭が良い娘だと思うけど、ときどきネジが飛ぶ。

 ボクの両親は冒険者相手にポーション(回復薬)や毒消し薬を売っている、しがない薬屋にすぎない。
 領主である公爵様にあいさつなどされたら、卒倒してしまうだろう。

 もっとも王女の御用人商人に指定して、ポーションを大量発注したので、すでに卒倒しているかも知れないが……

「……な、なんだ、この大勢の人は?」

 城門に近づくと、都市に入るための審査待ちの人々で長蛇の列ができていた。
 以前は、こんな魔王領に隣接している辺境を訪れる人など、あまりいなかったハズなんだけど……? 

 今は傭兵を募集しているが、それにしても、予想以上の人だかりだった。

 その中には吟遊詩人もおり、リュートを弾きながら英雄譚(サーガ)を歌っていた。

「闇が深ければ深いほど、希望の星は輝く。その名は勇者ルカ。女神が遣わした聖なる乙女……」

 なんかボクを題材にした英雄譚を披露しているようだった。
 顔から火が出るほど恥ずかしくて、思わず回れ右をしたくなる。

「ちょっと、お姉様……!」

 固まって列に並ぼうとしないボクの袖をミリアが引っ張る。
 仕方がないので、我慢して並ぶことにした。
 
「手に持つ聖剣は、悲しみを終らせるための刃。その一撃に、ついに邪竜は地に沈む」

 吟遊詩人は、退屈を持て余した人々から拍手喝采を受けていた。

「いいぞ、兄ちゃん!」

「俺たちは、ルカ姫様の義勇兵になろうとやってきたんだ! 景気づけにもう一曲頼むぜ!」

「うぉおおお! 俺たちを見捨てるような国王はルカ様と一緒にぶちのめしてやるぜ!」

 たくさんの投げ銭を帽子に入れてもらい、吟遊詩人はアンコールに応えようとした。

「ちょっと待って! できればルカ王女の英雄譚以外で!」

 ボクもお捻りを投げて、リクエストを出す。

「ああん? なんだ兄ちゃん。これからオーダンに入ろうっていう冒険者が、ルカ様にケチをつけようってのか?」

「まさか国王派の回し者じゃ、ねぇだろうな?」

「俺たちは、ルカ姫様親衛隊だぞ!?」

 殺気立った強面の男たちに囲まれて、ボクはたじたじになった。
 中には『ルカ姫様、命!』と書かれたハチマキをした男もいた。

 な、なんなんだ、この人たち……? ルカ姫様親衛隊?

「お姉様、ダメよ! 北側の領民たちは、ルカ姫様のおかげで救われた。街を廃墟にされずに済んだって、お姉様は大、大、大人気になっているのよ! お姉様の信者になった人たちがオーダンに集まってきていて。義勇兵として共に戦いたいって、ものすごい騒ぎになっているんだから」

 ミリアが小声でボクに耳打ちする。

「そ、そうなのか……?」

 そんなことは、まったく知らなかった。
 もしかして、この長蛇の列はそのためだったのか?
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