パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん

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1章。バフ・マスター、Lv4覚醒

5話。【団長SIDE】バラン団長、剣聖を引き留めるためにバフ・マスターを追放していないと嘘をつく

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「敗北、また敗北だと……!?」

 兵営に戻って来たバランは、壁を怒り任せに叩いた。壁に大穴が開く。

 彼に付き従う騎士たちは、その怒りの矛先がいつ自分に向かってくるかわからず、ビクついていた。

「これで、4連敗だそ! 貴様ら何をしておるのか!?」
 
 魔物の軍勢は、調子に乗ったのか、何度も国境を侵すようになっていた。

 バランは失態を取り返そうと、団員たちの消耗も癒えぬままに出撃を繰り返し、返り討ちに合っていた。

 敵は、ただのゴブリンの軍勢かと思えば、凄腕の魔法使いが、複数、紛れ込んでいた。

 魔法に対して、今のブラックナイツに詳しい知識や対抗策を持っている者はおらず、翻弄され続けた。

「魔族と手を組むなど……フォルガナめ、なんと恥知らずな!」

 リディア王女の襲撃事件といい、魔法王国フォルガナが、裏で糸を引いているのは明白だった。

「団長っ……こ、これはもう、アベルに戻って来てもらわなくては、立ち行かないのでは?」

「ティファ副団長にも、お戻りいただきましょう!」

 ふたりの男が、意を決した様子で進言した。
 バランは無言で、そのバカどもを殴りつける。男たちは、壁に激突して失神した。
 
「不愉快だ! 二度と、俺の前で奴らの名は出すな!」

「……はっ!」

「魔法使いなど、懐に入りさえすれば、どうにでもなる! 我がブラックナイツが負けるハズがないのだ!」

 今までは、魔法攻撃など喰らっても大した被害は出なかった。

 それが、あの落ちこぼれのアベルのバフの恩恵であったとは……

 認める訳にはいかなかった。

 ブラックナイツが最強の騎士団たりえたのは、すべて団長である自分の手腕の賜物だ。

「アベルだと……あのような軟弱者など不要!」

 何より、アベルは前団長シグルドの息子だ。
 英雄シグルドよりも、自分の方が優れていると、証明せねばならなかった。

「失礼……ブラックナイツの団長殿?」

 突如、目の前に黒髪の美しい少女が現れ、バランに声をかけてきた。

「そうだが。貴殿は、まさか……!?」

「……私はイブ」

「剣聖イブ殿か!」

 そっけなく答えたイブに対して、バランは歓喜に震えた。
 イブは【剣聖】のスキルを持ち、剣を極めるべく武者修行をしている18歳の少女だ。

 ブラックナイツに迎えるべく、以前から使いを何度も送っていた。

「世間一般では、そう呼ばれている。過分な評価」

「何を言われるか。貴殿には、副団長の座を用意しておる。ぜひとも、この俺の右腕になってもらいたい」

 イブは剣士として、明らかに強者の風格を漂わせていた。
 それに予想以上の美しさだ。これは愛人として飼うのも良い。

「了解。それよりも英雄シグルド殿の息子、アベル殿にお会いしたい」

 意外すぎる言葉に、バランはとまどった。

「アベルだと? ……奴は使えぬゆえに、追放処分としたが?」

「……竜を一撃で倒すような剛剣の使い手を、なぜ追放?」

 イブが首をかしげる。

「大地が裂ける程の一撃。あれ人の域を超えている。私はアベル殿から教えをこうべく、ここに来た」

 アベルがドラゴンを倒し、王女を救ったという噂は、ここ数日で爆発的に広がっていた。
 もはや、国内で知らない者はいない。

 その跡地は、地面に深い亀裂が走り、木々が吹き飛んでいた。
 リディア王女は、それをアベルが剣を振った余波であると、言い広めていた。
 
「私はシグルド殿にかつて試合を挑み、敗れた。
 ティファより、アベル殿はシグルド殿を超える逸材と聞いて楽しみにしていたのだが……?」

「アベルがシグルド殿を超える逸材だと?」

 バカも馬鹿も休み休み言え。
 奴がドラゴンを倒したなどと、何かの間違いだ。そうに決まっている。

 鼻で笑うバランを、イブは冷ややかな目で見た。

「アベル殿が、ここにおられないなら、ここに所属する意味はない」

「いや、待たれよ!」
 
 バランは慌てて、イブを引き留めた。

「アベルを追放処分にしたというのは……言葉を誤った。経験を積ませるため、新設される王女近衛騎士団に出向させたのだ」

「……本当?」

「そうだ。ヤツの所属は、未だにこのブラックナイツだ。やがて戻って来る故、ここに滞在されてはいかがかな?
 その方が、何かと都合がよろしかろう」

 口からでまかせだった。
 とにかく剣聖イブをブラックナイツに在籍させ、戦力として利用し、これ以上の敗北を防がねばならなかった。

「……わかった。そういうことなら」

 イブはコクリと頷いた。
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