パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん

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2章。バフ・マスター、Lv5覚醒

29話。バフ・マスター、地上最強の剣技を自分のモノとする

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 リディアが僕の腕に手を当てて、解毒の魔法をかけてくれる。

「か、かなり厄介な毒みたい。完全に抜くには時間がかかりそうだわ」

 彼女は泣きそうな顔になっていた。
 僕は壁にもたれかかりながら、応える。

「悪い。先輩たちの様子がおかしいのに気づいていたのに……もっと警戒すべきだった」

「ううん。誉れ高きブラックナイツの騎士が敵に寝返っているなんて。予想もつかなかったもの」

「……いや、予想してしかるべきだった。バフ・マスターの弱点はこちらに敵意を持っている人間にまで、バフをかけてしまえることなんだ。フォルガナがそれに気づけば、必ず寝返り工作を仕掛けてくると、予想できたハズだったのに」

 僕は歯噛みした。

「これじゃリディアを守る近衛騎士団長、失格だ」

 ルーンナイツの少女たちに、近衛騎士の自覚が足らないと注意をしたが、僕自身にも油断があった。

 僕はまだまだ英雄と称えられた父上には及ばないらしい。

「そんなことない! アベルがいてくれなかったら、私はとっくに死んでいたのよ。あなたは最高の騎士だわ」
 
 リディアが、ギュッと僕の手を握って、励ましてくれた。

「そう言えば、パーティ会場でのバランの様子はおかしかったわね。あなたに忠誠を誓うのをためらう素振りを見せたりして……
 アンジェラと顔を合わせないように出ていったようにも見えたわ」

「まさか、バラン団長が今回の件に絡んでいると?」

「アイツ。部下を見捨てて逃げ出そうとした処分がまだだったけど……まさか、アンジェラ王女を手引きしたとか? 明日になったら呼び出して、トコトン追求してやるわ」

 リディアが怖い顔をして告げた。
 ブラックナイツから裏切り者を出したのだ。例え、今回の襲撃とは無関係だったとしても、バラン団長には重い処分が下るだろう。

「ひぐぅああああっ!?」

 その時、僕がタックルを食らわせて気絶させた騎士が、突然、胸を押さえて苦しみだした。

「きゃあ! なっ、なに!?」

 騎士の全身からドス黒い瘴気が立ち昇っている。

「な、何か危険な呪いをかけられているみたいだぞ。リディア、【解呪(ディスペル)】だ!」

「えっ、でもアベルの治療がまだ……」

「僕は後回しで良いから、早く!」

 リディアの神聖魔法【解呪(ディスペル)】は、暗黒魔法の効果を打ち消すことができる。

 アンジェラ王女が、リディアの【聖女】を天敵と言った理由はこれだ。
 神聖魔法は【聖女】にしか使えない。

「わかったわ!【解呪(ディスペル)】!」

 神聖な輝きが降り注ぐと、騎士は痙攣をとめて、ぐったりした。
 その身から溢れ出ていた瘴気も消え失せる。

「な、なんだったのかしら?」

 僕たちは安堵の息をつくが、もうひとりゼノがいたことに思い至った。

 グォオオオオ!

 およそ人間とは思えない咆哮を上げて、ゼノがぶち抜いた壁から姿を見せる。
 その身体は筋肉が大きく膨れ上がり、全身から黒いオーラを撒き散らしていた。

「まっ、まさか、ここ、これって……!」

 リディアが恐怖に顔を歪める。

「人間を生きたまま高位アンデッド、吸血鬼に転生させる秘術。【吸血鬼化(ノスフェラトゥ)】!?」

「人間を吸血鬼に転生って……【解呪(ディスペル)】で元に戻せないか!?」

「無理よ! もう転生は終わってしまってるみたい」

「くそぅ!」

 僕はふらつく身体に鞭を打って立ち上がる。
 おそらく剣をまともに振れるのは一度だけだ。

 今日の昼間に5000回近く行った素振りを思い出す。
 大陸最強の騎士と謳われた父上の上段斬りだ。
 
 神剣グラムを抜いて構える。

「おお、おんな。処女の生き血!」

 ゼノが乱杭歯の生えた口を開けて、リディアに飛びかかって来た。
 人の領域を超越したスピードだった。

「アベル!」

 人間は極限まで追い詰められると、身体が最適な動きをするという。この時、僕の中で、歯車が噛み合ったような感覚があった。

 僕の振った剣は音さえ置き去りにして、ゼノの身体を断ち切った。

「ああっ……すまねぇ」
 
 ゼノは短い悲鳴を上げた後に、全身が砂となって崩れた。

 ゼノ先輩……
 感傷に浸りそうになるが、まだ終わりじゃない。

「リディア、僕の治療を頼む。アンジェラを甘く見ていた。ここまでの策を練っていたとすると……多分、ティファが危ない」

 アンジェラはティファの尾行を読んで、罠を張っているハズだ。
 バフ・マスターで最強レベルにまで強化されているからと、安心はできない。
 
「りょうかいよ! 彼女を助けに行きましょう!」

 リディアが力強く頷いた。

―――――――

吸血鬼の真祖を倒しました。
経験値を獲得しました!

名 前:アベル・ベオルブ

レベル:22(UP!)

体 力: 5543 ⇒ 5896(UP!)

筋 力: 8421 ⇒ 8732(UP!)

防御力: 6647 ⇒ 6941(UP!)

魔 防: 6005 ⇒ 6225(UP!)

魔 力: 7132 ⇒ 7385(UP!)

敏 捷: 5429 ⇒ 5660(UP!)

―――――――
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