パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん

文字の大きさ
67 / 70
4章。限界突破の外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

67話。フォルガナ王の最後

しおりを挟む
「終わりよ! もうあなたに勝ち目はないわ。フォルガナ王!」

 リディアが胸を張って宣言する。

「エンジェルナイト。最初は驚きましたが。強化された私のスキルの力を最大限引き出せば、勝てない相手ではありません……っ!」

 ティファも肩で息をしながらも、ダレスを睨みつける。彼女はひとりで、天使の軍団を片付けてしまっていた。

「まさか……これを解き放つことになろうとはな」

 だが、ダレスは不敵に笑った。
 
「神の力の顕現たる聖剣ブリュナーク! 聖なる力ですべてを浄化し、焼き滅ぼす剣だ。貴様らも物語で聞いたことがあるだろう?
 神に逆らいし覇王の軍勢10万を、一瞬で消滅させた断罪の刃をな」

 その手に、目を焼くような輝きを放つ光の剣が出現する。

「もっとも、これを使う代償として、余の寿命20年を差し出さねばならぬのだが……喜べ、貴様はそれに値する敵だ。今ここで討ち滅ぼしてくれる」

 ダレスは僕を見据えて言う。

「例え上位天使だろうと、これを受けては滅びるしかない。
 フハハハ! アンジェラ、お前の母はどうやら二度死ぬことになりそうだな」

「……お父様っ」

 アンジェラは父王を決然と見つめた。

「そんなことは、決してさせません。お母様は今度こそ私が守り抜きます。この命のすべてを賭けて」

「ふっ……暗黒魔法では、神聖魔法に絶対に勝てん。これは神の定めた絶対のルールだ。
 まして、この聖剣を余が手にした今となっては。お前がいくら強がったところで無駄な足掻きよ」

『みなさん。聖剣を持ったフォルガナ王は地上最強の存在です。私が刺し違えてでも動きを止めますから、その隙に倒してください』

 死神化したアンジェラの母が、そんな提案をしてくる。
 その目は、なんとしても娘を守り抜くという覚悟に満ちていた。

「やっと親子が再会できたのに、すぐにお別れなんて、悲しすぎるだろうが!」
 
 父上の姿が脳裏を過ぎった。
 そうだ。この場の誰も犠牲にせず、みんなで生きて帰る。騎士の戦いは守る戦い。

 そのために、父上の奥義を使ってやる。

「ティファ、【風皇刃(ふうおうじん)】を付与(エンチャント)してくれ!」

「アベル様!?」

 それだけ告げて、僕はダレスに向かって突撃した。
 たぶんティファなら、これだけで僕の考えを汲み取ってくれるハズだ。

 父上の最後の言葉。

『我が奥義、眼に焼き付けよ』
『あとはティファを頼れ』

 多分、この技を伝授してくれようとしていたのを感じた。
 父上の想いはティファにも伝わっているに違いない。

「おもしろい。神の力の前に消え去るが良い!」

 ダレスが光の剣を振り下ろしてくる。
 その時、僕の剣に旋風の魔法が付与(エンチャント)された。
 ティファが、かけてくれたのだ。

 僕は腕を捻り、拳を回転させ、全力の回転刺突を繰り出した。
 父上が見せてくれた【風皇刃(ふうおうじん)】の動きだ。

「【筋力】を限界突破! ベオルブ流魔法剣奥義【風皇刃(ふうおうじん)】、喰らいやがれぇえええええ──ッ!」

「アベル様、私の力とシグルド様の奥義でどうかフォルガナ王をっ!」

「小賢しい! 魔法剣ごときで、余の聖剣は止められぬ!」

 僕には勝算があった。
 進化したティファのスキル【恋刃(このは)】は大好きな人のために魔法剣を使うと攻撃力が3~6倍になるスキルだ。

 これは自分で魔法剣を使った場合だけでなく、他人の剣に魔法を付与した場合でも同じ効果を得られるじゃないか?
 僕はそんな仮説を立てていた。

 神剣と聖剣が激突する。

「まさか、まさか……この聖剣ブリュナークと打ち合うことができようとは!」

 ダレスが感嘆の声を上げた。

「見事だ! 余がおらなければ、貴様こそ地上最強であったろうよ!」

 僕の仮説は正しかったようだが、神剣グラムが激突の負荷に耐え切れなかったようだ。
 剣が刃先から徐々に削られ、ひび割れていく。

「ああっ! アベル様!?」

 ティファが悲鳴を上げた時だった。

「アベル! 私のスキルを強化して! 【武器修復(リペア)】!」

 リディアの言葉に、僕はアンジェラのスキル強化をカット。リディアのスキルを【大聖女】に強化した。

 その瞬間、破壊される寸前だった神剣グラムが修復される。

「一瞬で復元だとっ!? 【大聖女】の力か!?」

「ありがたいリディア! お前の想い、無駄にはしないぞ!」

 僕は力任せに剣を押し込む。
 風皇刃は、敵の防具や武器を破壊して攻撃を叩き込む技だ。壊せないなら、武器ごと敵を叩き潰す。
 【筋力】を限界突破させた僕にならできる。

「おっ、おお、おのれ──ッ!」

『ダレス、あなたの負けです!』

 アンジェラの母が、ダレスの胴をデスサイズで薙いだ。

「お父様っ……! これでお別れです。【破滅の火】(メギド・フレイム)!」

 アンジェラより漆黒の炎の濁流が放たれる。
 母娘の攻撃は、ダレスの魔法障壁を打ち砕き、その身を裂いて、焼く。

「貴様らっ!?」

 その猛攻にダレスは片膝をついた。
 【HP自動回復・極】(リジェネレーション)の能力で、すぐに傷は回復するが、それは致命的な隙となった。

「これで終わりだぁああああ──ッッ!」

 僕は強引に神剣グラムを押し込んで、ダレスを叩き斬った。
 【風皇刃(ふうおうじん)】によって、その身が粉微塵に吹き飛ぶ。

 フォルガナ王ダレスは、ここに最期を迎えたのだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

処理中です...