外れスキル《魔王城クリエイト》で無敵の城を築け!〜魔王の娘であることが発覚して実家を追放された聖女は、最強城塞を築いて引きこもります

こはるんるん

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2章。聖騎士団との対決

29話。冒険者狩りに忠誠を誓われる

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「この私は栄光なる勇者の使徒がひとり……敗北など、絶対に許されんのだ──ッ!」

 バルトラは懐から、さらにエンジェル・ダストの錠剤を取り出した。彼は迷うことなく、あるだけの薬を飲み込む。

「さらに上位の天使を、この身に降臨させてやる! 恐れ慄くが良い!」

 ずんっと、空気が震えた。
 バルトラの身体から、圧倒的な魔力が放射される。

「血迷ったか。人の身で、上位の天使を取り込もうなど。自殺行為でしかないぞ」

 ランギルスお父様が、ため息を吐く。

「この私は、勇者の使徒! ならば神は私に力を貸してくださる! 必ず……っ!」

「やれやれ。神に愛されているなどと……どうやったら、そのような狂気の結論に達することができるのか。理解に苦しみますな」

 ヴィクトルも呆れたように肩を竦めた。

「黙れ! 邪悪なる魔族ども! この私がすぐに審判を下して……っ!」

 バルトラの怒声が、途切れた。

「ぐぁ……!? あっ、ああああ!?」

 バルトラの肉体の表面に亀裂が走り、ボロボロと崩れ出していく。
 彼は苦痛の絶叫を上げた。

「痛い! 痛い!? なんだ、これは!……? ど、どうなって!?」

「実験とやらを繰り返してきたのなら、見慣れた光景ではないのか? 拒絶反応という奴だ」

「天使との融合など試みれば、当然のことですな」

「バカな!? 私は勇者の使徒! 私は特別な存在のハズ……」

「自分を特別などと。その傲慢さ、地獄で後悔するんだな」

 ランギルスお父様と、ヴィクトルはもうバルトラを攻撃しようとはしなかった。
 哀れみのこもった目で、自滅しつつある聖騎士を見つめる。

「い、嫌だ! 死にたくない……っ!」

 バルトラは取り乱して腕を振り回す。そうしている間にも、彼の肉体は加速度的に崩壊していった。

「バルトラ……!」

 バルトラには、かつて剣を教えてもらった。その時の光景が脳裏に蘇る。彼が、このまま死に行くのを見るのは忍びなかった。

「大丈夫、落ち着いて。私が助けます!」

「アルフィン、この男を救うつもりなのか……?」

 ランギルスお父様が怪訝そうな顔をする。

「はい、そうしなければ、私はきっと後悔すると思います。それにお母様なら、きっとそうしたと思います」

「ミリアが……?」

 お父様は目を瞬いた。

「……【闇回復(ダークヒール)】!」

 私は喉を掻きむしるバルトラの腰に手を触れて、回復魔法を放った。
 バルトラの肉体の崩壊を止めるには、直接、ありったけの魔力を注ぎ込む必要があると思ったからだ。

「ぐぅうう!?」

 バルトラの身体は燃えるような熱を持っていた。私の手に鋭い痛みが走る。

「何をなさっているのですか、お嬢様。 そうまでして助けるほどの価値がある者ではございません!」

 ヴィクトルが泡を食って、私を止めようとする。私はそれを無視して続けた。

「大丈夫! バルトラ! 絶対に助けるから気をしっかり持って!」

「あ、アルフィン様……!」

 バルトラは私の呼びかけに、多少、落ち着きを取り戻した。

「なぜです? 私はあなたを殺そうと……それに魔王の娘というなら、我らの敵のハズ……」

「あなたが亡くなったら、ロイドお父様や、ヴェルトハイム聖騎士団のみんなが悲しむでしょう?」

「……ロイド様は無能者に対して無慈悲です。他の使徒たちも、私が失態を犯したと知ったら手を叩いて喜ぶに、決まっています」

 バルトラは乾いた笑いを上げた。

「……少なくとも、私はあなたが死んだら悲しみますよ」

「……なっ……」

 バルトラから発せられていた敵意が消えていく。
 それが、私の【闇回復(ダークヒール)】が受け入れられる余地を作った。猛烈な勢いで、癒やしの力がバルトラの体内に浸透していく。

「……ハハハッ、な、なぜ、神はあなたを聖女にお選びにならなかったのか……あなたが聖女であれば、喜んでお仕えできたのに」

 崩壊寸前だった彼の肉体が、徐々に萎んでいき……やがて元の人間に戻った。
 バルトラはうつ伏せに倒れて動かなくなる。

「あ、あの状態から元に戻ったのか……?」

 ランギルスお父様がバルトラに近寄って、息をしているか確認した。 

「気絶しているだけのようだ。【闇回復(ダークヒール)】は闇の力。天使との融合を解除する効果もあるのか」

「さ、さすがに疲れました……」

 私は魔力を使い果たして、へたり込む。
 緊張から解放されて、疲労がどっと出てしまった。

「暴走した天使の力を抑え込んでしまうとは……なんという絶大なる魔力。このヴィクトル、感服しました」

「ああっ。さすがは俺とミリアの娘だ。だが、あまり無茶はしてくれるな。敵を回復などして……一歩間違えれば、お前がどんな目に合っていたかわからないぞ」 

 ランギルスお父様が私を心配そうに見下ろした。
 言われて気づく。確かに、至近距離から反撃を受ける危険があった。無我夢中で、そんなことまで考えている余裕が無かった。

「アルフィン様、ありがとうございます! おかげで、兄上が……兄上が助かりました」

 ティファが私の元に駆け寄ってきて、頭を下げた。
 彼女に寄り添うように、冒険者狩りのエルフがやって来る。

 一瞬、身構えてしまうが、彼からはもう先程までの殺気は微塵も感じられなかった。

「アルフィン様。僕を……何より僕の妹を助けていただき、感謝の言葉もありません」

 エルフの少年はひざまずき、私に臣下の礼を取った。

「僕はルスカと申します。あなた様に剣を向けた非礼、幾重にもお詫びいたします。なにとぞ僕を妹ともども、あなた様の臣下の末席に加えては、いただけますよう」

「臣下……?」

 ルスカの真剣な様子に、私は戸惑ってしまう。

「アルフィン、お前が魔王になるつもりがあるのなら。これからも大勢の者たちから跪拝(きはい)を受けることになるだろう。今のうちに、慣れていくんだな」

「え、えっと……どうすれば良いのでしょうか?」

 王妃になるための教育は受けてきたが、魔王になる教育は受けていない。どのように立ち振る舞えば良いのか、わからなかった。

「一言、『許す』と言えば良い。鷹揚にな」

 なるほど……意外と簡単だった。

「は、はい。ありがとうございます。ルスカさん。『許します』。どうか、よろしくお願いします」

 私は失礼の無いように立ち上がって、ペコリと頭を下げた。
 ルスカは呆気に取られていた。

「アルフィンお嬢様……それでは威厳というものが」

 ヴィクトルが額に手を当てている。

「ふふふっ、なるほど。良いじゃないか、腰の低い魔王がいても。アルフィンを侮るような奴がいたら、俺たちが睨みを効かせれば良い」

 ランギルスお父様が声を上げて笑った。
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