外れスキル《魔王城クリエイト》で無敵の城を築け!〜魔王の娘であることが発覚して実家を追放された聖女は、最強城塞を築いて引きこもります

こはるんるん

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3章。魔王城、攻防戦

34話。聖女シルヴィア、さんざんな目に合う

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 私はヴェルトハイム聖騎士団を率いて、4日かけて、ようやく城塞都市ゼルビアに到着した。
 4日も馬車に乗っていると、さすがに腰が痛くなってしまう。舗装されていない道を走ると突上げるような振動で、座っていられなくなるし……

 えーいっ、遠征など初めてしましたけど、かなり不自由でめんどくさいものですわね。
 野営になると、身体も満足に洗えないなんて。水が貴重品だなんて、冗談じゃないですわ。

 ああっ、サッサとあの魔女アルフィンの首を取って、王宮の湯殿でくつろぎたいですわ。

「これはこれは、聖女シルヴィア様、ようこそおいでくださいました。歓迎の宴の準備はできております」

 ゼルビアの領主が城門前まで迎えに来て、私に平伏する。
 ふんっ、辺境の田舎貴族とはいえ、それなりに礼儀はわきまえているようですわね。

「わたくしは疲れておりますの。さっさと屋敷に案内なさい。それと兵糧の徴発を行います。5000人分の兵糧、10日分を今すぐ用意するように」

「はっ、い、いえ、お待ちください! 徴発と申しますと、まさかお代はいただけないのでしょうか?」
 
 領主の男が青ざめた顔で問い返してきた。

「当然でしょう? これは魔王を討つ聖戦ですわよ。なら、すべての国の民は喜んで協力すべきですわ。
 それともまさか、聖女であるこの私に逆らうつもりですの?」

「め、滅相もございません!」

「それなら良いですわ。わたくし、一瞬、あなたが魔王の内通者ではないかと疑ってしまいましたの。一族郎党、火あぶりの刑にされなくて、良かったですわね?」

 私がにっこり微笑むと、領主は恐怖に震えてコクコクと頷いた。

 あーっ、気持ちいい! 聖女の権力を振りかざすのは最高ですわ。
 これでさらに王妃になれれば、もう誰も私に逆らうことなど、できませんわね。
 私は上機嫌で、城塞都市ゼルビアに足を踏み入れた。



 その夜、贅の極みを尽くした盛大な宴が開かれた。
 この街の冒険者ギルドから、ワインの献上もあった。

 なんでも『冒険者狩り事件の黒幕が、勇者様であると噂した不届き者がおり、勇者様の名誉を傷つけてしまったお詫び』だそうだ。

「ふん、殊勝な心がけですわね」

 サルどもからの献上品など、どうせ低品質。私が口をつける必要はないと思ったけれど。なんと一本だけ超高級品ワインとして有名なロムン・コンティが入っていた。
 聖女様へ、というメッセージ付きだ。

「ほ、ホンモノかしら? 一杯いただきますわ!」

 毒味役として雇った冒険者に一口飲ませて、安全を確認させる。
 だ、大丈夫みたいだった。

 私が口をつけると、華やかな味わいが口内で爆発した。時間を忘れさせてくれる最高に贅沢なワインだった。

 少しだけのつもりが飲み過ぎてしまい、心地よく酔った状態で私は床についた。まあ、多分、二日酔いなどにはならないでしょう。
 さあ、明日はいよいよ、魔王城の攻略を……

「シルヴィア様、大変でございます! ゴーストの群れが襲ってきました!」

 眠りに落ちようとした瞬間、伝令兵が私の寝室の扉を叩いた。

「なんですって……!?」

 アルフィンは生意気にも夜襲を仕掛けてきたらしい。どうやって厳重な警備態勢にある城塞都市に、アンデッドを送り込んできたのかわからないけれど。

 安眠を妨害されて、私は怒りと共に立ち上がる。とりあえず、ゴーストどもを蹴散らして。

「うっ……!?」
 
 その時、私は猛烈な腹痛を感じた。
 ちょ、ちょっと食べ過ぎたかしら?
 とにかく、トイレに行かないと……

「ゴースト程度、お前たちだけで対処しなさい!」

 扉を開けて命じると、とにかくトイレに向かってダッシュする。
 すると、トイレには順番待ちの行列ができていた。みんな私の配下の聖騎士たちだ。

「な、何これ、どうなっていますの……?」

「あっ、シルヴィア様! どうやら、先程の宴の食事に当たってしまったらしく……」

「食あたりですって!? この屋敷の衛生管理はどうなってますのよ!?」

 大事な決戦前になんてことなの。これは領主に厳重抗議してやらなくては。遠征から帰ったら、吊るし上げて多額の賠償金を……
 って、今はそれどころではありませんわ。

「あなたたち、そこをどきなさい! トイレは私が最初に使いますわ!」

 私が聖騎士たちを押しのけようとした時だった。
 壁から滲み出るように半透明のアンデッドモンスター、ゴーストが出現する。

「敵だ! 迎撃準備!」

 聖騎士たちは腹痛に耐えながら、なんとか神聖魔法を放とうとする。
 だけど、魔法を使うには集中力を必要とするため、こんなコンデションでは、まともに発動できないようだった。

 逆にゴーストたちから攻撃魔法を撃ち込まれて、悲鳴が上がる。
 そして、私をさいなむ苦痛も限界に達していた。

「きゃああああっ! 敵なんて、どうでも良いですわ! とにかく、とにかく退きなさい!」

「あっ、シルヴィア様、おやめください! 攻撃ができません!」

 私が聖騎士たちと押し合いをしていると、ゴーストの放った雷撃の魔法が、私の背中に命中した。
 低威力の取るに足りない攻撃魔法だったけれど、それは私に取って致命的なものとなった。

「きゃあああああぁっ!?」

「ああっ、シルヴィア様……!?」

 がんばって耐えていたモノが、溢れ出てしまった。
 それは私の聖女としての神聖さ、カリスマ性を著しく傷つける結果になった。

 こ、こんなことが、エルトシャン殿下のお耳に入ったら、もう絶対にお嫁に行けませんわぁあああ!



「業突く張りのクソ聖女シルヴィア、出て来い!」

「ク、クソ聖女ですって……!?」

 悪夢のような一夜が明けた次の朝。屋敷を群衆が取り囲み、私に罵声を浴びせていた。
 昨晩のことはトップシークレットになっているハズ。な、なぜ、コイツらが知っていますの?

「まさか、取り逃がしたゴーストどもが漏らした? い、いや、私は漏らしていませんわ!」

 って、私は何を言っているのかしら。
 お、落ち着かなくては。クソだなんて良くある罵声だわ……っ
 くっ、なぜ聖女である私が罵詈雑言を浴びなくてはならないの?
 私は混乱したままベッドから起き上がる。

「お前が回復薬を10倍に値上げしたおかげで、俺たちはまともに回復薬を買えなくなっちまったんだぞ!」

「何が魔王を倒すだ! この街を危ない薬の実験場にしていたクセに!」

「お前ら聖王国の連中が作った回復薬なんぞ、誰が買うものか!? アルフィンの奇跡の回復薬があれば、十分だ! 全部、突き返してやる!」

 群集は屋敷に向かって、次々に上位回復薬(ハイポーション)を投げつけてきた。
 窓ガラスが割れて、飛び散った回復薬で部屋がめちゃくちゃになる。

「くぅ!? な、なんなんですの!?」

「シルヴィア、大丈夫か!?」

 ロイドお父様が部屋に飛び込んで来た。
 ロイドお父様も昨晩の騒ぎであまり寝ていないのか、目の下にクマを作っている。

「お父様! 屋敷が暴徒に取り囲まれていますわ。早くなんとかなさってください!」

「今、配下の者どもを鎮圧に向かわせているが……どうも昨晩の食事に下剤が入っていたらしく、みな調子が悪い」

「はぁ!? 食事に下剤ですって? 私たちは魔王を討伐する聖女の軍勢ですのよ! な、なぜ、そんな扱いを!?」

「お前が回復薬の値段を10倍にしたのが、この街の連中は気に入らないらしい。
 その上、この街はアルフィンが作った安価で強力な回復薬が出回っているようだ」

 回復薬は人の生死を左右する貴重品だ。聖王国はこれの産出を一手に担ってきたため他国に対して優位に立っている。でも、より安価で強力な回復薬が出てくるとなると、話は変わってくる。

「アルフィンお姉様の回復薬ですって!? くっ、まさか魔王の娘の分際で、この街の住人を取り込んでいたなんて……」

「とにかく、この街でのヴェルトハイム聖騎士団の評判は最悪だ! 俺たちは敵視されている!」

 ロイドお父様は苦虫を噛み潰したような顔で告げる。

「逆に冒険者狩り事件を解決したこともあって、この街でのアルフィンの評判は相当高いようだ。そのアルフィンが手を回して、住人どもを扇動しているとしたら……
 こんな街に長居するのは危険だ。すぐに出立せねば!」

 本来ならここで英気を養っておきたいところだったけれど。食事に下剤を盛られるわ、ゴーストどもは襲ってくるわ、大衆は敵に回るわで、とても安全に休むことなどできませんわ。

「わかりましたわ! でもその前にあの暴徒どもを火刑にせねばなりませんわ。
 この私をク、クソ聖女などと……」

 私は怒りと屈辱に全身を震わせた。

「昨晩のお前の粗相については箝口令を敷いている! もう忘れろ、その程度のことくらい!」

「はぁ!? そ、その程度のことですって!? 私はもう社会的に抹殺されたも同然ですわ!」

「火刑など行ったら、さらに群衆の怒りを買うぞ! そうなったら、今後の補給に支障が出る。本来の目的を忘れたのか、俺の名声がかかっているのだぞ!」

 お父様にたしなめられて、私は押し黙った。お父様の名声など、どうでも良いけど……確かにそれは一理ある。

 万が一、城攻めが長期化した場合、補給に支障が出るのはマズイ。今回のように下剤を盛られる危険もある。

「くぅううう……わかりましたわ。でも、勝利して戻ってきたら。この私を罵倒した連中は全員、火あぶりの刑にしてやりますわよ!」

 私は激情を抑えきれずに絶叫した。
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