チューニングミス 〜彼氏に浮気されてからロボメイドとともに立ち直るまで〜

橘スミレ

文字の大きさ
10 / 10

微妙な成績

しおりを挟む
 エロ垢作成未遂から一週間、長い長い中間考査が終わった。
 なんやかんやで終わった中間テストの結果は微妙だった。
 さして良い成績でもなく、特別悪い成績でもなく、少し順位を落としただけに終わった。

 勉強に対してそれほどやる気はなく、かといって遊び呆けるほど気にしていない訳でもない。
 ダラダラとローペースに教科書と戯れているうちにテストが終わっていた。
 なんの手応えもなかった。一切の後悔もなかった。
 海の上で、一人浮かんでいるような感覚のまま時間が過ぎていった。

 テストの返却中に調子のいい男子たちが点数を比べあい騒いでいた。
 いつもなら鬱陶しい、邪魔くさい、くらいは考えた。
 けれど今回は縁側で孫を見守る老婆のように元気そうだなとしか思わなかった。

「俺45点」
「うわ負けた。俺42点」

 どちらも赤点40点ギリギリじゃないかというツッコミも浮かばなかった。
 周りの野次でようやくそのことに気がついても、なんの感想も出なかった。
 身の回りで起きるほとんどの事象が遠く離れた地の御伽噺のように聞こえた。

 心は凪いで、つまらない平穏を生み出していた。

「俺93点だった」

 野次の中にときどき混じる元カレの声だけが私の感情を揺さぶる。
 彼の自慢げで、楽しそうな声が私の中に眠っていた怒りを燃やさせた。

 あんなクズ野郎がのうのうと生きてなんでもないように生活していることへの憎しみ。
 アイツは何も気にしていないのに、私はこうも傷ついていることへの怒り。
 腹の底からドス黒いものが溢れ出す。

 どうして私はこれだけ苦しんでいるのにアイツはなんともない?
 どうして彼は何も傷付かず、いつものように高得点を取っているのに私はこれほど傷付き点数を落としているの?
 どうして、どうして、どうして。どうしてアイツは幸せに生きている?
 のうのうと生きてる彼が憎らしく、腹立たしく、許せない。

 腹の底からあふれた感情はアイツへと矛先を向けて膨れ上がる。
 膨れ上がって、膨れ上がって、けれどアイツにぶつけることができずに私を苦しめる。
 この場で彼を罵り糾弾することができればどんなによかっただろうか。

 実際の私は机につっぷし宙をにらむことしかできないけれど、今彼の胸倉を掴み、大声で今までの悪事を叫び、あの脂肪の詰まった腹を殴って、蹴って、吐くまで潰して、殺してやりたい。
 いや、殺す前に内臓を引き摺り出してカッターで微塵切りにしてやりたい。
 どうせ彼のことだ。リスカ用のカッターの一つや二つ持っているに違いない。
 いや、やっぱり切り刻むよりも擦り潰す方がいいか。切られるのは慣れているかもしれない。
 内臓を潰して、関節を破壊し、全身を骨の数と同じくらいにバラして潰す。

 それくらいのことはやってやりたい。いや、それでも私の傷と比べれば浅いだろう。
 どんなに彼を傷つけ苦しめて殺そうとも満足できそうにない。
 どれだけ彼が痛めつけられたところで私の頭の中で彼は暴れ、浮気されたことを思い出させる。

 けれど、彼をこの教室またはこの学校、この世界から排除するだけでも少しは生きやすくなる気がする。
 彼のことを思い出す頻度も減るだろうし、彼の存在も忘れやすくなる気がする。
 彼さえここからいなくなれば、いつかは私も「あんなこともあったね」と笑い話にできるかもしれない。

 一番いいのは彼が勝手に問題を起こして、勝手に処分されて、勝手に退学になることだ。
 未成年飲酒か不純異性交遊かなんかやらかして退学しそうな気もする。
 でも無駄に賢いからバレずにやりやがるかもしれない。
 そもそも退学になるとしてそれがいつになるかわからない。

 そう考えるとやっぱり直接手を下した方がいいんじゃないかと思ってしまう。
 たとえ、自分自身が罪に問われようとも私は彼を傷つけたいし殺したい。

 故意に相手を傷付けようと思ったのはこれが初めてな気がする。
 腹の底が煮え繰り返るような怒りと冷や水を浴びたように冷静に思考する理性が同時に存在して頭が割れそうだ。

 私は60点の解答用紙を握りつぶした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...