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一品目 腕
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さて、どこから食べようか。
やわらかいお餅みたいな太ももか、白くてふわふわとしたお腹か。
色々迷ったが、私は腕から食べることにした。
モルの綺麗な腕に歯を立てる。お腹がすいた時に噛みすぎて傷だらけの私の腕とは全く違う。
初めて食べた【ケーキ】は好きな味がした。口に入れるとスポンジケーキのようにふわふわでとろけるような幸福感に包まれた。
きっとこれが甘いということなんだろう。
少し刺激のある血がアクセントになっていて食べやすい。これは酸っぱい、なのだろうか。きゅっと縮みたくなるような味がした。
これは無限に食べれる。私は確信した。
今まで味というものを知らなかった。モルは味がないと食べた気がしないんじゃ、と心配してくれたが食べれないことはなかった。
ただあまり好んで食べるようなものでもないので本当にお腹が空いた時とモルがいる時以外は食べていなかった。
それと比べてモルはどうだ。食べるだけでここまで幸せになれるものを私は知らない。
多分、これが美味しいなのだろう。
もう一口、もう一口と私はモルの手を食べた。
私が噛みちぎったせいでユメの綺麗な手は歪な形をしている。もう綺麗なモルはいないのだと思うと、いまさらながらも悲しくなる。
だがこうも考えられる。モルを全て食べてしまえばモルと一体化できるのでは、と。
モルは生前、私の容姿をとても気に入っていた。
初めて会った時もそうだった。新学期、モルは【フォーク】のクラスにやってきた。
【フォーク】と【ケーキ】が同じ空間にいるのは危険だからクラスをかけてある。それなのにモルはわざわざ被食者である【ケーキ】の彼女はノコノコと【フォーク】のクラスにきたのだ。
モルは教室に入るなり私に近づいてきた。そして開口一番にこういった。
「あなた、可愛いね」
私は困惑した。今まで人喰いやら鬼やらと貶されてきた私を可愛いといったのだ。
そんなことを言われたら好きになってしまうじゃないか。
考えてみてほしい。今まで誰にも愛されず、親にさえ見捨てられた私が初めて可愛いと言われたのだ。これで惚れないはずがない。
その後、何かと行動を共にするようになった。モルは可愛いものが好きらしい。
「可愛いものと一緒にいたいの。だから可愛いカノンとずっと一緒にいたい!」
「それは告白? 付き合う……?」
「あ……はい」
こうして付き合い始め今さっきまで同棲していた。
もし私たちのどちらかが男ならこのあとは結婚、という選択肢があっただろう。だがこの国はそういう選択肢を与えてくれなかった。私たちに残された一緒になるための選択肢は「私がモルを食べる」ことだ。
だからモルも食べてくれたら嬉しいと書いてくれたんじゃないだろうか。
なら、私がすべきはモルを食べることだ。私はキッチンから包丁を取ってきて、骨から肉を切り分けながら食べる。少々難しいがこの方が綺麗に見える。
初めて知った甘いと酸っぱいのおかげで美味しく食べれる。
しばらく食べていると骨が出てきた。絶対硬い。でも、残したくない。
私は取り敢えず二の腕の骨を肩から外し、まな板の上で切ってみる。無理だった。硬すぎる。
仕方がないので舐めようとするとほろりと崩れた。どうやら【フォーク】の体は【ケーキ】を味わうのに最適化されているらしい。
私は甘くてとろけるような骨も食べた。これも中が酸っぱい。
食感はチョコレートと似ている。
モルは疲れるとよくチョコレートを食べていた。元気になれる魔法みたいなお菓子だといっていた。懐かしい。骨がチョコレートみたいになったのも私に元気を出してほしいからかもしれない。
「大丈夫。ちゃんと全部食べるからね」
私はモルの両腕を食べ切った。これだけでもかなりお腹が膨れたが、初めての「味」のおかげで無限に食べられそうだ。
次はどこを食べようか。
やわらかいお餅みたいな太ももか、白くてふわふわとしたお腹か。
色々迷ったが、私は腕から食べることにした。
モルの綺麗な腕に歯を立てる。お腹がすいた時に噛みすぎて傷だらけの私の腕とは全く違う。
初めて食べた【ケーキ】は好きな味がした。口に入れるとスポンジケーキのようにふわふわでとろけるような幸福感に包まれた。
きっとこれが甘いということなんだろう。
少し刺激のある血がアクセントになっていて食べやすい。これは酸っぱい、なのだろうか。きゅっと縮みたくなるような味がした。
これは無限に食べれる。私は確信した。
今まで味というものを知らなかった。モルは味がないと食べた気がしないんじゃ、と心配してくれたが食べれないことはなかった。
ただあまり好んで食べるようなものでもないので本当にお腹が空いた時とモルがいる時以外は食べていなかった。
それと比べてモルはどうだ。食べるだけでここまで幸せになれるものを私は知らない。
多分、これが美味しいなのだろう。
もう一口、もう一口と私はモルの手を食べた。
私が噛みちぎったせいでユメの綺麗な手は歪な形をしている。もう綺麗なモルはいないのだと思うと、いまさらながらも悲しくなる。
だがこうも考えられる。モルを全て食べてしまえばモルと一体化できるのでは、と。
モルは生前、私の容姿をとても気に入っていた。
初めて会った時もそうだった。新学期、モルは【フォーク】のクラスにやってきた。
【フォーク】と【ケーキ】が同じ空間にいるのは危険だからクラスをかけてある。それなのにモルはわざわざ被食者である【ケーキ】の彼女はノコノコと【フォーク】のクラスにきたのだ。
モルは教室に入るなり私に近づいてきた。そして開口一番にこういった。
「あなた、可愛いね」
私は困惑した。今まで人喰いやら鬼やらと貶されてきた私を可愛いといったのだ。
そんなことを言われたら好きになってしまうじゃないか。
考えてみてほしい。今まで誰にも愛されず、親にさえ見捨てられた私が初めて可愛いと言われたのだ。これで惚れないはずがない。
その後、何かと行動を共にするようになった。モルは可愛いものが好きらしい。
「可愛いものと一緒にいたいの。だから可愛いカノンとずっと一緒にいたい!」
「それは告白? 付き合う……?」
「あ……はい」
こうして付き合い始め今さっきまで同棲していた。
もし私たちのどちらかが男ならこのあとは結婚、という選択肢があっただろう。だがこの国はそういう選択肢を与えてくれなかった。私たちに残された一緒になるための選択肢は「私がモルを食べる」ことだ。
だからモルも食べてくれたら嬉しいと書いてくれたんじゃないだろうか。
なら、私がすべきはモルを食べることだ。私はキッチンから包丁を取ってきて、骨から肉を切り分けながら食べる。少々難しいがこの方が綺麗に見える。
初めて知った甘いと酸っぱいのおかげで美味しく食べれる。
しばらく食べていると骨が出てきた。絶対硬い。でも、残したくない。
私は取り敢えず二の腕の骨を肩から外し、まな板の上で切ってみる。無理だった。硬すぎる。
仕方がないので舐めようとするとほろりと崩れた。どうやら【フォーク】の体は【ケーキ】を味わうのに最適化されているらしい。
私は甘くてとろけるような骨も食べた。これも中が酸っぱい。
食感はチョコレートと似ている。
モルは疲れるとよくチョコレートを食べていた。元気になれる魔法みたいなお菓子だといっていた。懐かしい。骨がチョコレートみたいになったのも私に元気を出してほしいからかもしれない。
「大丈夫。ちゃんと全部食べるからね」
私はモルの両腕を食べ切った。これだけでもかなりお腹が膨れたが、初めての「味」のおかげで無限に食べられそうだ。
次はどこを食べようか。
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