見えない所で人助け！冒険て楽しいなぁ〜

１．労働のあとの一杯と自分語り

「今日も仕事の後のビールは美味～い♪」



薬草採集に素材集めで得た収入で、ギルドに併設された食堂で食事をしながらビールを飲む。



私の唯一の楽しみ。



今日も頭をすっからかんにして疲れを労うのだ。



２年前に自国から出奔。
ソロの冒険者として隣国を転々と移動しながら活動し先月やっと国を跨いで、現在辺境にあるギルドにお世話になっている。

底辺ランクの冒険者を維持したい私は、同じ場所を長居ていると難しい。
『ランクの判定試験うけなさいっ』て言われてしまう。

私は最低ランクで気侭にやりたいのよ
仲間を作らない馴れ合わないこれ鉄則。

かといって情報交換を交わす為の知り合いは各地で作ってはいる。
コミュ障な私でも頑張ってるのさ。

冒険者のネットワークは侮れないからねぇ。

もちろん格ギルドにもきちんとした情報は得られます。



そして誰にも言えない秘密が…



なんと私、異世界転生してます。



自国にいる時に貴族の令嬢だったのです。
しかも婚約者が王太子殿下ときた。

学園の勉強やら王族の勉強で学ぶ以外に
執務や公務に明け暮れて毎日深夜に帰宅。

食事も睡眠も侭ならず心身ともに限界で出奔してしまいました！

まぁ、婚約破棄（解消）は無事に済ませましたが。

本来なら妃教育など受けて執務と公務まで行っていたら恐らく無事じゃ済まなかったはず（幽閉やら毒杯など）。

情報を漏らさない為の魔法誓約で漏らせなくしてるから見逃して貰いました。

そして更に本来修道院でお世話になるところ、自ら死を偽装して今に至ります。

新聞で自分の葬儀をしりました。

なので、現在私は死んだ事になってるのです。

名前も、ギルドにて偽名で登録してるので無問題。



「フローラお疲れさん
今日ものんでるねぇ　飯は何食ってんの？」



「ギンさんお疲れー　今夜は豚ときのこのソテーだよ」



この辺境ギルドに顔出して最初に声を掛けてきてくれたベテラン冒険者のギンさん。

４０代くらいのナイスミドルで奥さんと娘さんの3人家族だ。

娘さんと同じ歳くらいの私を見て心配で声を掛けたらしい。

始めはナンパかとかなり警戒してしまった。笑



そう、私の現在の名前は『フローラ』だ。

平民でも貴族でも一般的な名前、前世では女なら『花子』男性なら『太郎』みたいな感じ。

前世みたいな和風の名前も考えたけど、同じ転生者が居ないとも限らないしバレたくないし目立ちたくない。



とにかく波風立たず穏やかに過ごしたい私なのである。



「じゃあギンさん　食べ終わったから帰るね！おやすみ～」



「おう！　気をつけて帰りなよ　またな」