パリの落書き

碧美安紗奈

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神父 side

未来③

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(あの二人だったのか)

 そう追懐しながら、挙式の場で神父は唱えた。
「これより、二人を夫婦とします」と。
 今、教会のこの祭壇の前に、神父の記憶にある二人はいたのだった。

 二コラとマリアンヌは幸福に満たされて抱き合い、口付けを交わしていた。
 それを温かく見守る神父は、ふと誰かの視線を感じて天井を見上げた。そこには、モザイク画による天使が描かれている。
 その天使が、かつて自身が出会った少女に似ていると、彼は初めて勘付いた。
 瞬間。ふと、天使が笑った気がした。
 (そうか)と神父は思いを巡らした。

 誰かの目から見ればつまらなく、意味を成さない事象のようでも、ほんのひと欠片の良心が、どこかで奇跡のような幸をもたらすこともあるのではなかろうか、と。

 それから悟ったのだった。

 ――奇跡は毎日起きているのかもしれない、我々が気付かないだけで。
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