34 / 275
第1章 ド底辺冒険者東雲・組昇級戦
閑話 組員と構成員と一般冒険者【東雲視点】
「そもそもの話、須貝組の組員とここで依頼を受けてる、普通の鉄級冒険者ってどういう線引きなの?」
私がそんな質問を投げかけると、須貝さんと雨井は互いに顔を見合わせた。
両者とも、鳩が豆鉄砲を食ったようだ。
普通の疑問だと思うんだけど、なにかまずいことでも言ってしまったのだろうか。
「おまえなあ、どんだけうちに興味なかったんだよ」
「え」
「いいじゃないか、雨井。教えて差し上げな」
「へい」
雨井は須貝さんに頭を下げると、まっすぐ私に向き直った。
「まず真緒の言う組員と、他の鉄級冒険者の明確な線引きだが……そんなにない」
「ないの?」
「ああ。そもそも、まずは前提が間違ってっから、ここらで一度正しておくがよ、今まではおまえに合わせてたが……真緒が組員とその他冒険者って呼んでるのは、それは間違いだ。正しくは構成員と組員と呼ぶ。つまり、真緒が組員と呼んでいる存在は構成員で、その他冒険者は組員ってなるわけだ」
「え、じゃあ私……須貝組の組員ってことになるの?」
「そうだ。おまえだって一応、須貝組に所属してんだ」
「ま、まじですか……」
まさか私がこんな団体に所属して、片棒を担がされてたなんて……。
まぁ、いまさらか。
「そうじゃねえと、昇級戦に参加するとか無理な話だろ」
「そっか。昇級したいだけなら、昇級戦のときだけ腕利きの冒険者雇ったらいいんだもんね」
「そう。だから原則として昇級戦に参加するのは、クランのメンバー……つまり、うちだと組員までのみとなるわけだ」
「なるほどね。……でも、いちおう構成員と組員とで呼び方は分けてあるんだよね。明確な線引きはないって言ってたけど」
「もちろん、そういう些細な違いはある。だが、線引きはない」
「……どういう意味?」
「たしかに構成員だと事務的な仕事も任されるが、俺がお前の任務に同行したように、いわゆる冒険者のような仕事もする。違いがあるとすればそれくらいだ。線引きは……それこそ呼び方くらいだな」
「じゃあなんで、構成員と組員とで分けてるの?」
「それは簡単だ。俺たちが組長と盃を交わしてるかどうかだな。俺たちは須貝組に、組長に心底惚れてるから、ここでお世話になってんだ。要するに気持ちの問題ってやつだな」
「盃……つまり、正社員か契約社員かの違いってことね。……でも、待遇自体はそんなに変わらないと……」
「なんだ真緒、おまえまさか組に興味が――」
「ないです」
きっぱりとここで否定しておく。
組員の時みたくなあなあで構成員になったら、今度こそ私が終わる。
どのみち銅級に上がれたらそこで辞めるつもりだしね。
私ができる恩返しは、須貝組をきっちり昇級させるまでだ。
「ははは。こりゃいい。きっぱり振られちまったね、雨井」
「組長ぃ……笑いごとじゃねえですよ……」
「ま、こちらとしちゃあ、東雲さんがその気ならいつでも歓迎するさ」
「は、はぁ……」
「御覧のとおり、うちの組は間口が広い。どんだけ脛に傷を持ってようが、言葉が通じなかろうが、勇者の称号を剥奪された異世界人だろうが、組の下で働きてえってんなら拒まねえし、食いっぱぐれさせねえ。……けどね、構成員はべつだ。一度なっちまったら簡単には辞められねえ。それが掟だ。よくよく考えるこったね」
「いやだから……入りませんよ……」
「もちろん、もしもの話だ。ただ後で知らなかった……なんて、言われてもね。報告、連絡、相談はきちんとやるもんだ。そうだろ? 雨井」
「か、勘弁してくださいよ……組長……」
雨井は居心地が悪そうに頭を掻いた。
あなたにおすすめの小説
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界で俺の初級魔法が最強でした。無自覚に絶望から救った美女やエルフたちに溺愛されています
仙道
ファンタジー
やり込んでいたゲームの世界に転移した主人公、渉。この世界では、渉にとっての「初級魔法」が最高峰の威力だった。しかし、他の冒険者たちが雑魚モンスター1匹に苦労しているのを見て、「みんなわざと弱い魔法を使って戦闘を楽しんでいるんだな」と思い込む。
渉は手加減を続けながら、美女たちを無自覚に救い出していく。渉は毎回「余計な手出しをしてしまった」と後悔するが、ヒロインたちはそんな渉の強さと優しさにますます惹かれ、激しく溺愛してくる。なぜこんなに好かれるのか全く理解できないまま、渉は柔らかくていい匂いのする女の子たちに囲まれ、この異世界で生きていく。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。