無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸

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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀

第148話 わからずじまい

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『おっと、いちおう断わっておくが、さすがにこの転移魔法で、嬢ちゃんを元の世界に戻す……ってのは無理だからな』
『そ、そうですか……』
『俺が使ってるのは、あくまでこの国の場所と場所とを繋ぐだけ。世界は越えられねえ』

 ほんの少しだが期待してしまった。
 いや、べつにすぐに帰りたいというわけではないけど、帰る手段があるなら確保しておくに越したことはないなと。

『……じゃあ、呂さんはその鯤を、どこかに送っているということですか?』
『そうだな』

 それだけ。
 続きを話してくれる気配はないようだ。

『……えっと、ちなみにそれはどこへ?』
『ま、あとのお楽しみだ』
『そ、そうですか……』
『なあに、すぐにわかる』

 そう言っている呂さんの表情はどこか誇らしげだ。
 まだ彼と出会ってそんなに経ってないけど、なんか嫌な予感がする。

『……ではあの、釣りの試練にしたのって……もしかして……?』
『おう、想像のとおりだ。……俺は古今東西、あらゆる魚を釣ってきたが、鯤はまだでな。一度でいいから拝んでみたかったのよ』
『でも、そんな伝説な魚を釣れる保証、なかったですよね?』
『そりゃそうだ。そんな簡単に釣れてたまるかってんだ。俺だって四六時中糸垂らしちゃいるが、気配すら感じ取ったことはねえ。今回の試練だって、人数が多けりゃそのぶん、確率も上がるんじゃねえかって思っただけだ。だが――』
『だが……?』

 私がそう訊き返すと、呂さんはフェニ子を見た。

『鳳凰様がいるなら話はべつだ』
『フェニ子が……? 彼女が釣りと何か関係があるんですか?』
『知らねえか? 鳳凰様ってのは縁起のいい、吉兆の象徴だ。そんな御方が現れたとなりゃ……なあ?』
『なあ、とか言われても……』
『ま、出なかったら出なかったで、諦めはついてたさ。べつに釣れるまでおまえさんらを拘束するつもりもなかった。だから――』

 呂さんはそこまで言うと、思い出したかのように今度は玄冥を見た。
 玄冥はというと、相変わらず我関せずといった様子で、蛇媧の頭の上でだらけている。

『玄冥』
「……ふぁぁ……なに……?」
『なに、じゃあねえだろ。鯤を釣り上げてんだ。試練は終了。いちおうてめぇが守護者せきにんしゃなんだから、閉会の挨拶くらいやれよ』
「……おつかれ」
『かーっ、締まらねえな……!』

 ぬるっと宣言されてしまったが、どうやらこれで玄武の試練は終わりのようだ。
 あとはいつも通り、祠へ行って宝玉に触って記憶を見るだけだが……他になにか、訊くべきことはないだろうか。
 私はそう考えて、改めて呂さんを見る。

 紅月は何か勘付いてそうだが、私は未だにさっぱりだ。
 無駄のない立ち居振る舞いに、鯤を一撃で仕留める技……ただ者でないのはわかるけど、訊いたら教えてくれるのだろうか。

『あ、あの……呂さんはそもそも、誰なんですか?』
『あ? 俺か? 俺は……ただの干乾びたジジイだよ。釣り好きの仙人みてえなもんだ』
『そ、そうですか……』

 案の定というか、まともに答えてくれるつもりはないみたいだ。
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