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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の蛇亀
第154話 待ち人
しおりを挟む『――それで、その、呂さんは面識も、あるんですか?』
会話を適当なところで切り上げ、私はそろそろ本題へと入る。
呂さんは少しだけ考えるように視線を上げた。
『少しだけな』
『それは、どういう……』
『難しいんだよ』
『難しい?』
『ああ。俺の立場的に、ヤツと会うのがな。詳しくは話せないが、俺とヤツとはあまり大っぴらに会うことはできねえ』
『ちなみに、最後に会ったのは……?』
『十日前だな』
『いや、めっちゃ最近』
『その時のビアーゼボは、まあ、なんていうか、ソワソワしてやがったな』
『ソワソワ?』
『おう。なんつーか、まあ、ソワソワだ。ヤツとはそれなりに長い付き合いだが……そんな俺から言わせてもらうと――〝誰かを待っている〟』
呂さんはそう言って、鋭い視線を私に向けた。
『――の、かもな』
『それが、私たち……ということでしょうか?』
『はは、そうは言ってねえだろ』
どういうことだろう。
もっさんが予め、ビアーゼボに連絡を入れていたのだろうか。
『まあ、これはあくまでも俺の予想なんだが……どうやら真緒、おまえさんの顔を見る限り、その〝待ち人〟になにか心当たりがありそうだな?』
『そ、そんな……心当たりなんて……』
つい反射的にシラを切ってしまったけど、呂さんの情報の見返りとして、もっさんの件を話したほうがよかったのだろうか。
『一国の支配者である魔王が、一見、ただの異国の女冒険者にしか見えない人間に会いたい理由……か』
呂さんはそう言って、楽しそうに顎ひげを撫でた。
……うん。
まあ、彼の場合は推理することに楽しみを見出してそうだし、ここは黙っておくか。
『――これから起こることに、関係してるのかねえ……』
聞こえるか聞こえないかくらいの呂さんの呟きを、私の耳が拾い上げる。
ちらりと横目で紅月を見るが、どうやら彼女のほうは聞こえていないようだった。
今、この場でそのことについて質問してもよかったのだが――
「のう、親愛的……そろそろ……」
フェニ子がそう言って、遠慮がちに私の服の裾を引っ張ってきた。
そうだ。
だいぶ脱線してしまったが、今はなによりもまず、宝玉に触ることが最優先事項だ。
『……すみません、呂さん。このあたりで……』
『おっと。そうだな。つい、あれこれ話し込んじまった。まったく、歳は取りたくねえもんだ』
呂さんはそう言って口を開け、ガボガボと笑った。
『……行こう、フェニ子』
「う、うむ」
私はそう言うと、呂さんに会釈をして祠の奥へとまた泳ぎ出した。
ふと振り返ると、呂さんはこちらに向けて軽く手を振っている。
どうやらついてくるつもりはなさそうだ。
「……ねえ、真緒」
しばらく泳いでいると隣にいた紅月が、真剣な眼差しを私に向けていた。
「なに?」
「呂さんの件なのだけれど……」
「うん。紅月も気になっ――」
「歳を取っても素敵ですよ……と、私のほうで付け加えたほうがよかったかしら」
「……どうでもいいんじゃない?」
こいつ、隠さなくなってきたな。
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