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第2章 丹梅国グルメ戦記・黄龍降臨
第164話 フェニ子の正体 その1
しおりを挟む「ようこそ、いらっしゃいました」
またどこからか声だけが響いてくる。
しかし相変わらず黄龍の顔だけは見えない。
「……重ねて、このような姿で申し訳ありません」
心を読まれたのだろうか。
黄龍に立て続けに謝られる。
「い、いえ、ちょっと、その荘厳すぎる御身に圧倒されてしまいまして……」
正直、ここまでの話だと黄龍って神様らしいし、こんな感じに下手に出てこられると、すごく恐縮してしまう。言葉遣いも変になってしまう。
「なに『心を読まれた』みたいな反応しているのよ、貴女」
「紅月」
「相変わらず、表情に出てたわよ」
「そ、そっか……」
神様だからてっきり、読心術的なものを使えるのかと思ったけど、そうでもないみたい。
「ふふふ……」
そんなやりとりをしていると、今度は柔らかい笑い声が聞こえてきた。
「すみません。あなたがたのやり取りが、微笑ましくて……」
「は、はぁ……」
「如何でしたか、ここまでの道中……その子は役に立ちましたか?」
その子。黄龍が訊いているのは、フェニ子のことだろう。
そういえばここに飛ばされてから、色々なものに圧倒されて気が回らなかった。
私はフェニ子を見たが、彼女は相変わらずという様子だった。
黄龍と目を合わせない……のは、しょうがないとして、ずっと足元に視線を落としている。
その姿はフェニ子の容姿ともあわさって、さながら親に叱られている子どものように見えた。
「……ええ、彼女は、彼女なりに頑張って、私たちを助けてくれました」
「親愛的……」
「まあ、燦花から丹梅国までで起きたアクシデントの大半は、彼女由来だとは思いますけど……」
私がそうやって話にオチをつけると、フェニ子はより項垂れてしまった。
「なるほど。たくさんの経験をしてきたみたいですね?」
「の、のじゃ……」
「……そろそろ本題へ移っても?」
紅月がしびれを切らしたように切り出す。
「すみません。人間は、いきなり本題へ入るのを厭うと聞きましたので……」
「それは、時と場合によります」
「ええ、ええ、それならどうぞ。わたくしのほうも、その対応で差し支えありません」
紅月はひと呼吸置くと、私と同じように、私たちから一番近い胴体を見た。
「……ここ数日、私たちは、瑞饗の四方にある祠を回ってきました」
「ええ、存じております」
「最初に訪れた鳳凰の祠を除き、彼女は各祠で奉られている宝玉に触れ、青竜、白虎、玄武の記憶の一部を見てきました。そして、その中で鳳凰が過去に……過去に、他三柱の神を吸収したと思しき記憶も、彼女から聞き及びました」
「そうでしたか。……ですが、なぜそれをわたくしに?」
紅月は一瞬、驚いたような表情を浮かべていたが、やがてニヤリと口角を上げて、続けた。
「……お戯れを。鳳凰が青竜、白虎、玄武を吸収しているのが本当であれば、彼女はどうなるのですか?」
紅月はそう言って、俯いているフェニ子を見た。
「彼女? 彼女がどうしたのです?」
「彼女は自身で鳳凰と名乗っていました。しかし、これまでに、その片鱗を見せていない。彼女が使う技はどれも炎を使うもの……」
「使わなかっただけでは」
「では、なぜ彼女は燦花で火の鳥の姿を模っていて、現在、私たちの前に黄龍がいるのでしょう」
黄龍は答えない。
「……なぜこの期に及んで、まだ白を切り続けているのかはわかりませんが、答えは明白です。あなたが鳳凰だから……ですよね」
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