194 / 316
第2章 丹梅国グルメ戦記・黄龍降臨
第174話 決裂激突 vs黄龍
「……ふ。……ふふふ」
黄龍がまた空気を震わせながら、自嘲気味に笑っていたが――
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」
「ちょ……っ」
こちらの言葉が、何か決定的な逆鱗に触れたのか。
黄龍の笑い声は空気だけでなく、私の体を芯から揺さぶるほどに大きなものへと変わっていった。
「……他の三柱にも言われました」
「え?」
黄龍が滔々と言葉を紡ぎ始めるが、空気は依然震えたまま。
「わたくしは変わってしまったと」
「そう……なんですか……」
「ですが、このとおり、わたくしはわたくしのまま。なんの変化もありません。……ですが、青竜も、白虎も、玄武も、みな一様に、鳳凰を鳳凰と認めなかった」
「だから、他の三柱を吸収した」
紅月がトドメだと言わんばかりに告げる。
「いえ、わたくしの目的はあくまでも魔王の排除。それについては一点の曇りもありません。しかし――」
突然、黄龍の体が鳴動を始める。
立っていられないほどの揺れが私たちを襲い、やがてそれは姿を現した。
いや、正しくは現れてはいなかったのだ。
黄龍の途轍もなく長い体の先――
その先が、頭が、なかったのだ。
首の断面は、血も肉もなく、ただの空白。
黄龍が有しているのは胴体のみ。
まるで頭部を切り落とされた蛇が、暴れることも、藻掻くこともせず、ただ冷静に、知的に、神格を保ったままそこに存在している。
その異様な姿に、在り様に、私は恐怖を覚えた。
「このとおり、わたくしは完全な黄龍になることはできなかった。これでは――」
黄龍はそこまで言って一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに続ける。
「これではわたくしが贋物で……残響種として切り落としたそれが、本物のようではありませんか」
「ち、違う……! それは違うのじゃ鳳凰様! 妾たちに上も下もない! 妾たちはふたつで――」
「穢らわ……しい……!」
「……へ?」
「悍ましい、卑しい、呪わしい、禍々しい、忌々しい……恨めしい! あなたのような下等な、生物以下の汚物が、このわたくしと同列だなんて、想像するだけで……想像するだけで……想……像……する……だけで……ああっ! キモチガワルイ!」
「真緒! 速度!」
瞬間、紅月の怒声により、現実に揺り戻される。
その言葉の意図を理解するよりも早く、私の指は、紅月の速度値を上げていた。
そして首のない黄龍が、頭からフェニ子を呑み込むべく、ぬるりと脈動する。
しかし――
〝――ザッ〟
紅月がものすごい速さでフェニ子の体を抱きかかえて、一気にこの場から離脱する。
「……ふぅ、二度は言いません。そして、これはお願いでもありません。それを置いて去りなさい」
「嫌です」
私が答える。
断固たる意志で、黄龍の要求を拒絶する。
「邪魔を……しようというのですね……神たる黄龍の……」
「いいえ、私たちの旅の邪魔をしようとしているのは、あなたです。黄龍様」
「減らず口を……」
「それに、フェニ子はもう私たちの仲間です。フェニ子を捨てたあなたに、フェニ子をどうにかする権利はありません」
「ならば、それの為に死を選ぶと」
「死にはしません。私たちは必ず、生きて冒険を続けます。そのためにここで――ケリをつけます」
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
異世界のんびり放浪記
立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。
冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。
よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。
小説家になろうにも投稿しています。
転生したら魔王の乳母だったので、全力で育児をします!
氷桜 零
ファンタジー
日本のブラック企業で過労死した主人公・ミリア。
気がつけば、魔族として異世界転生していた。
魔王城にて、災害級のギャン泣きベビーである生後3ヶ月の魔王ルシエルと遭遇。
保育士経験を活かして抱っこした瞬間、暴走魔力が静まり、全魔族が驚愕。
即座に「魔王の乳母」に任命され、育児を全面的に任されることに!?
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
通学途中に突然異世界へと飛ばされた、ごく普通の女子高生・武久佳奈。
何の力も持たない彼女が願うのは、ただ一つ――両親と友人の待つ元の世界へ帰ること。
右も左も分からない異世界で、佳奈は生きるために魔法や剣術を一から学び、少しずつ自分の力を積み重ねていく。
旅の中で出会う仲間たちとの絆、別れ、そして幾度も立ちはだかる試練の数々……。
それでも彼女は歩みを止めない。帰りたいという願いだけを胸に、前へ進み続ける。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、“ごく普通の少女”が努力だけを武器に異世界を生き抜く、成長の物語である。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)