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魔法少女派遣会社
決着ゥ☆ラスボス沈
しおりを挟むなんだ?
一体どういう事なんだ?
私が茫然と社長室の入り口で突っ立っていると──
「──キャーーーーーーー! イヤーーーーーーー!」
耳をつんざくような男性の悲鳴が部屋に響いた。
「ミス・ストレンジ・シィムレスくんのエッチ! 何、普通の人間連れて来てるのよ! もう! 知らない!」
目の前のトカゲ男(?)が、相変わらずキンキンと甲高い、耳障りな声で騒ぎ立てる。トカゲ男はイスから立ち上がると、その場で片足をぴょんと折り曲げ、自分の体を抱き、怯えるように私を見た。
なんだこの痛さ。なんだこの古さ。完全に前時代的なリアクションじゃないか。私にはわかってしまう。
「ジャンニィ秋山さん、よく見てくださいまし。この人間はキューティブロッサム、魔法少女ですわ」
〝ジャンニィ秋山〟
聞いた名前だ。……この人(?)が、魔遣社の代表取締役。私のターゲットか。
「わあっ! アラ、ほんま! ……て、言うとる場合か! 仕事が早すぎんねん、シィムレスくん! こっちはまだ髪に〝むぅす〟もつけてへんのに! すんまへんな、こんな無粋なカッコしてからに!」
「ああ、えっと……おかまいなく……? ……なんでコテコテの関西弁?」
「ジャンニィ秋山さん、キューティブロッサムを連れて来いとおっしゃったのは、あなたでしてよ」
「いやいや、ちょい待ちぃて! そら言うたよ、連れて来い言うたけどやな、きみ、部屋から出て入っただけやん。数秒やで? なんでそんな早よ捕まえられんねん。ひろみちゃんの能力でももうちょいかかるで? どないなっとんねん、ほんまに」
「たまたま外にいらしたので」
「ズコー! ……でも、そか! ほなしゃーないか! ってなるかい! せめてノックせえや! こんこんって! 変装する暇もないやんけ! 普段は人の面かぶっとんのに!」
ジャンニィ秋山はそう言うと、精工に出来た人の頭部を、まるでかぶり物のようにかぶってみせた。何かボタンのような物を押し、プシユウという空気が抜けるような音が鳴ると、ジャンニィ秋山は感触を確かめるように目をパチパチ、口をパクパクさせると、改めて私に向き直ってきた。
「おっす、おら人間! よろしくな!」
前時代的なノリは置いといて、たしかに今は人間にしか見えない。すごい技術だ。どないなっとんねん。あ、移った。
「いや、もう色々遅いと思いますよ」
私が冷静にツッコむと、ジャンニィ秋山はかぶっていた人間の頭部を強引に脱ぎ、床に思い切りベチャっと叩きつけた。
「ほら見ぃ! バレとるやないかい! 計画がぜぇーんぶ、パァ! わしの頭も、パァ!」
「おほほ、笑えますわね」
「おま……なにわろてんねん! こんドアホ!」
「あら、このあたくしに何か文句でも?」
「ああ、すんまへん、すんまへんっ! そないなつもりはないんですぅ……でも、ただですねえ、せっかくS.A.M.T.潰すために魔遣社作ったのに、お終いになってもうたから、こんなんじゃわしら、健康で、文化的な暮らしが送れなくなってしまいまっせ?」
「なら、正面からキューティブロッサムを叩き潰せばよろしいのでは?」
「ほんまや! その手があったな! さっすがシィムレスはん! 天才か!?」
ジャンニィ秋山は大股でドシンドシンと私に近づいてくると、その指で、尖った爬虫類特有の鉤爪で、私を指さしてきた。
「……この、アホの魔法少女が! おまえらのせいで、わしの生活はぐちゃぐちゃや! 覚悟せいや! パチパチにかましたるからな!」
ジャンニィ秋山は私の顔の近くでキャンキャン騒ぐと、弓を引くような動作で、大きく腕を振りかぶった。
──パシン!
そのあまりにも大きな隙に、私の平手打ちがジャンニィ秋山の頬に命中する。
ジャンニィ秋山は「さんまっ!?」という断末魔を上げながら、私のすぐ横、の壁に、体ごとめり込んでしまった。
手加減はしたから、たぶん死んでないとはお思うけど……。
「……なんだったんだ、一体」
「ジャンニィ秋山さんはインベーダーの中では頭脳担当で、戦闘はからっきしですの」
「いや、なに普通に解説してんの。あんたも助太刀しないと」
「なぜ?」
「なぜって、そりゃレンジの雇い主なんでしょ? ジャンニィ秋山さんって。それなら立場的に助けないとさ。……なんで私がこんな事言ってんだ?」
「雇い主? ……いいえ、それは違いましてよ」
「え? 違うの?」
「あたくしは何者にも傅きません。これはただ、あたくしが賃金をもらって、労働力という対価を支払っているだけですの」
「……それを雇用って言うんだよ?」
「知ってます。……まあ、ともかく、これで魔遣社はぶっ潰れるでしょうね。あなた方の目論見通り、ね」
「……はあ? なに? 知ってたの?」
「あ、当たり前ですの! 見くびらないでくださいませ! ……まったく、あなた方のキモい演技に付き合うのは、ほんっとー……に、骨が折れますわ」
レンジはそう言うと面倒くさそうに、壁にめり込んだジャンニィ秋山をズボッと引っこ抜いて、そのまま部屋から出て行こうとした。
「え? 終わり? どうすんの? このビル?」
「あなた方に差し上げますわ」
「い、いらないよ! こんな派手な建物! しかもインベーダーのお古なんて、しかも位置モロバレじゃん!」
「じゃあ廃棄なさいな」
「いやいや、このビル処分するのにいくらかかると思ってんの!? てか、なに終わった感じになって帰ろうとしてるの!? 帰さないからね!?」
「あら、あなた意外と情熱的ですのね」
「べつにそういう意味で言ったわけじゃないんだけど……」
レンジは大きくため息をつくと、ジャンニィ秋山をその場に雑に置き、応接用のソファに腰かけた。
「ええ、少しくらいなら、あなたの質問に答えてもいいですわ」
レンジが足を組んで私を見上げてきた。
立っているのは私なのに──
見下ろしているのは私なのに──
なんで私が気圧されなきゃいけないんだ。私はムッと口一文字に結ぶと、レンジと向き合うように、ドカッとソファに座った。
「……ジャンニィ秋山って、何者?」
「いきなりですわね。……ま、いいですわ。質問に答えると言いましたし。ジャンニィ秋山……それは、そこでノビている方の名前です。あたくしが〝ビューティー高島田〟という名前を人間界で使っているのと同じですわね」
「いや、そうじゃなくて、どういうインベーダーで、何をしようとしていたの?」
「魔遣社……魔法少女派遣会社を設立し、この世界を再び滅ぼそうとしていました」
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