現実世界に魔物が現れたのでブラック会社を辞めて魔法少女になりました~PCをカタカタするよりも魔物をボコボコにするほうが性に合っていた私、今

枯井戸

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魔法少女派遣会社

ぬるぬる☆気遣いインベーダー

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「──今更驚かないけど、世界を滅ぼす……て、具体的にはどんな感じで?」

「簡単です。まずは邪魔な魔法少女たちが所属する、S.A.M.T.という組織を社会的に抹殺し、行き場を失くします。その為の装置・・が、ここ、魔法少女派遣会社です」

「つまり、魔法少女と魔法少女をぶつけて、対消滅させようとした、と?」

「概ねその通りですわね。こちらでも魔法少女を雇い、人気を得、世論を味方につけてから、あなた方を叩くつもりでした。あたくしに白羽の矢が立ったのも、その延長戦ですわ。……その後、行き場を失い、バラバラになった魔法少女たちを各個撃破、順次殺害していき、最後に残ったあなた──キューティブロッサムを、あたくしたちの魔法少女派遣会社の総力を以て叩く。これが、ジャンニィ秋山さん……もとい、〝いんべえだあ〟の企み、ですわね。最も、それも失敗に終わってしまいましたが」

「え、えげつないな……」

「ええ。本当に。……あまり言いたくはありませんが、今回の出来事、最初からあたくしも本気でこの作戦に加担していたら、マジで人類滅んでいましたわよ」

「ゲ、マジで?」

「マジです。……考えてもみなさいな。一階のロビーであたくしとあなたが戦っていたら、間違いなく次々に加勢が出て、まずはさっきそこにいた魔法少女さんが、そしてあなたが死んでいましたわよ。それも、二回」

「な、なんかすんません……」

「まったく、自覚を持ちなさいな、キューティブロッサム。なにも腕っぷしが強いだけが、〝強さ〟ではありませんのよ」

「め、面目ない……でも、なんでわざわざ人類を助けるような事を?」

「この様なしょうもない作戦が気に食わなかったから、ですわ」

「き、気に食わない……」

「言ったでしょう? あなたは絶対にあたくしが、直々・・にぶっ潰す、と」

「おっしゃっておられました……」

「だから、他の誰かにあなたを殺されるのは、あたくしとしても不本意でしたの。……ですが、もっとも、この程度でやられてしまうのなら、それまでの魔法少女。と、割り切っていましたが」

「そ、そうなんですね……」

「とにかく、ギリギリ合格。といったところですわね」

「や、やったー……合格だー……」


 いちおう、表面上だけは喜んでみる。


「はぁ……まったく、先が思いやられますわね……」

「あと、もうひとつだけ訊いておきたいことがあるんですけど……」

「……その気持ち悪い言葉遣いを止めたら聞いてあげます」

「さっきの子、霧須手さん……の事なんだけど、覚えてる?」

「ええ。たしか、頭の悪そうな言葉遣いで、日本刀を振り回す子でしたわよね。名前は憶えていませんわ」

「いや、覚え方! ……まあ、だいたいあってるけど」

「しょうがありませんの。だってあたくし、今はあなた以外の魔法少女など、アウトオブ眼中。興味すら湧きませんので……」


 レンジはそう言うと、意味ありげな視線を私に投げかけてきた。私はこれを無視すると続けた。


「それで、その子の元メンバーについてなんだけどさ、ちょっと変な事言ってて、自分たちの力は先天的ではない……つまり、私みたいにロストワールド由来の力じゃなくて、ジャンニィ秋山から授かったって聞いたんだけど」

「あら、ベラベラとおしゃべりですのね、あの子たち」


 レンジの言葉の端に、殺気にも似た不快感を感じ取る。


「……ちょっと、変なことしないでよ?」

「おほほ、それは、どういう意味かしら?」

「手を出すなって言ってんの」

「あら、その様な野蛮な事なんて……ただ」

「ただ?」

本来なら持ち得なかっ・・・・・・・・・・・〝力〟を得る、という行為は、並大抵の事象ではございません。それを無理に自然の摂理に反して得ようとすれば、それなりの代償を払わなければなりません」

「そ、それって……」

「遠くないうちに、あの子たちのところに永遠という名のお迎えが来るでしょうね」

「そ、そんな……っ! せっかく霧須手さんと仲直りしたのに……! どうにかならないの!?」

「〝どうにか〟とは? ……もしかしてあなた、よもやこの状況で、あの子たちの事を気に掛けているのかしら?」

「いや、そりゃまあ……霧須手さんの友達だし……」

「あなたに──あなた如き・・に、そんな余裕があると思いまして?」

「はあ? どういう意味──」

「──あんまり舐めてるとぶち殺しますわよ」


 部屋中の空気が一気にピンと張りつめる。
 弛緩していた筋肉が極限まで硬直する。
 レンジの言葉が質量を孕み、重力を授かる。
 これは脅しじゃない。
 逸らせない目が──
 動かせない指が──
 言葉よりも雄弁に、私に語り掛けてくる。
『お前の目の前にいるのは敵だぞ』
『お前の目の前にいるのは、人が如何なる兵器を用いても倒せなかった敵だぞ』
 ──と。


「──さすが、あたくしの眼力に億すことなく睨み返してくるなんて、さすがあたくしのライヴァルですわ」

「いや、そういうのいいから。普通にビビるから止めて」

「とまあ、突き放してはみましたが、もうあの子たちの運命は、あなたの手の届かないところにあります。有体に言うと、〝もうどうにもなりません〟」

「そう……かぁ……まじかぁ……。せっかく霧須手さん仲良くなれたのに、せっかく霧須手さんの笑顔を見れたのに……」


 霧須手さんがこれを知ったら悲しむだろうな。


「……ねえ、これ、あんまり聞きたくないんだけど、あの子たち、あと、どのくらいしか生きられないの?」

「それ訊いてどうしようと?」

「いや、その、せめて心構えというか、それを知る事で、霧須手さんに伝えるか伝えないかって、選択も出来るし……」

「そう、ですわね……。こちらの感覚で言うと、あと80年くらいで死にますわね、あの子たち」

「……十分じゃん! それもう、天寿全うしてるよ!」

「80年程度で天寿とは……〝人〟の〝命〟と書いて、〝儚〟と読むとは、昔のニンゲンはよく言ったものです」

「……ねえ、もうちょっと勉強しない?」

「あら、あたくし間違えてしまったかしら?」

「何もかも間違ってるよ。……じゃあさ、これと少し似た質問なんだけど、人に力を与えることが出来るって事は、逆に〝力を失くす〟って事も出来るの?」

「ええ、もちろん出来ますわよ」


 その言葉を聞いて、昨日の出来事が思い浮かぶ。


「ねえ……もしかしてだけど、昨日レンジが普通に外出してたのに、空の色が変わらなかったのって……」

「はい。あたくしに敵意がなかったから、ですわ」

「敵意?」

「敵意とは呼んで字の如く、敵に発する意という意味。つまり、あたくしからあなたたちへの害意です」

「ていうことは、インベーダーが害意を持って人の前に現れると、空が紅くなって、コーヒーを飲もうと人の前に現れても、空の色は変わらないって事?」

「理解が早いですわね」

「……やっぱりそういう事なんだよね。ちなみに、それってレンジだけなの? それとも、インベーダー全員がこういう事出来るの?」

「全員です。あたくしたちもなぜ空が紅くなるのかはわかりませんが……それと、さきほどあたくしがあなたを威嚇した時、空の色は変わっていたと思いますわ」

「なるほどねえ。……あれ? それってつまり──」


 つまり、空が紅くなったって事は、ここら辺の人たちはもう避難を開始してて、もうすぐここに色々な人たちが押し寄せてくるって事か。


「おほほほほほ! あたくしがただ、なんの脈絡もなくキレる、情緒不安定なナマモノだと思いまして?」

「あ、うん」

「ひでえですわね!?」

「どの口で言ってんだか」

「……さて、お話も済んだようですし、あたくしはもう帰ります」

「帰るって、あのアパートに?」

「ええ。もちろん。……他にどこへ?」

「いや、マジであそこに住んでるんだなって……」

「マジに住んでいますわ。すこし、いえ、かなり狭いですが、なんとなく落ち着きますのよね」

「まあ、私も住んでたから、何となくその気持ちわかるよ……」

「はい。では、あたくしはこれにて……ごきげんよう、キューティブロッサムとひろみ・・・さん」

「……ひろみ?」


 何を言っているんだ、このインベーダーは、と私が疑問に思っていると、部屋から「ゲ」という声が聞こえてきた。
 レンジは「ふふん」と小さく、得意げに鼻を鳴らすと、床に転がっていたジャンニィ秋山を豪快に肩に乗せ、そのまま扉から出て行った。
 レンジを見送った私は、ゆっくりとした口調で、この部屋にいるであろうひろみに語り掛ける。


「ひろみ、いるの?」


 返事はない。


「……出てきなさい。さっきの聞いたでしょ? もう終わりよ、魔遣社は」


 私がそう言うと、私が居ますわっていると、レンジが座っていたソファの間──そこのテーブルの下から、ぬるっとひろみが出てきた。


「いや、なんでそこに……」
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