憑依転生~女最弱騎士になった『俺』が最強に成り上がるまで

枯井戸

文字の大きさ
56 / 92
白銀編

撃滅の騎士

しおりを挟む

「ほう、ルルーシーよ。神龍の国へと行きたいと申すか?」


 トバ城大宴会場。
 そこでは昼間の出来事がウソのように、どんちゃん騒ぎの宴が開かれていた。
 シノの父親――トバ国皇も、顔をすこし上気させ、気持ちよさそうにしている。
 そこへタカシとテシにサキ、そして合流したシノが皇を囲むようにして座っていた。


「はい。自分がそこへ赴き、あのバカを連れ戻してきます」

「それには皇の知恵が必要なのじゃ……、どうか教えてはくれぬか……?」

「お父さんなら何か知ってるでしょ? お願い、この通りだよ」


 シノは「この通り」と口にはしているものの、ただ普通に座っているだけだった。
 懇願している様子も、悪びれる様子もなく、ただただそこに座っている。


「ふむ。我が娘ながら、どの通り・・・・なのか全く理解できんし、したくないが――それは無理、だな」

「な――なんで……ですか……」

「余はそんな場所は知らぬからだ。知らぬものは教えようがない。つまり、貴様らに頼られる覚えもない。さあ、酒がまずくなる。各々に散らばれ。宴を楽しめ」

「お父さん、勇者様と世界を回ったじゃない! その時に何か――」

「くどいぞ、我が娘よ。神龍なぞ、そのような大層な生き物。余は見たこともない」

「ウソ! お父さん絶対何か隠してるでしょ!」

「ム。――だがこれは誓って、それについて隠しているのではない」

「じゃあ、なにについてなの?」

「ふぅ……、仕方がない……。そこで待っておれ」


 トバ皇はそう言うと、ものぐさそうに立ち上がり、フラフラと上階へと上がっていった。

 ――数分経過。
 待てど暮らせど聞こえてくるのは宴の音のみ。
 トバ皇が上階から降りてくる気配はなかった。
 そのことに不審におもったタカシが、そこにいる誰よりも先に口火を切った。


「……遅くね?」

「も、もしかして――」


 シノは急いで立ち上がると、トバ皇のあとに続くようにして、上階へと駆け上がった。
 タカシとテシは顔を見合わせると、宴会のおつまみを貪るサキを置き、シノの後を追った。

 トバ国大広間。
 そこは薄暗く、シノ以外の気配はなかった。


「シノさん……! 皇はもしかして逃げ――」

「しっ」


 シノは自らの口に人差し指を当て、タカシを制した。
 シノはそろりそろりと足音を殺し、大広間にある畳。
 そのうちの一枚を縁に立った。
 シノはそこで片膝をつき、
 バンッ!!
 と、畳の端を手のひらで思いきり叩いてみせた。
 その勢いで畳はパタンとひっくり返り、中に潜んでいたトバ皇が現れた。
 トバ皇は顔からは血の気がサーッと、引いていっている。


「さあ、お父さん、観念しなさい!」


 シノはトバ皇の手をガッと掴むと、そのままグイッと引っ張り上げた。
 トバ皇はその反動で、腕の中に持っていた何か・・を畳の上へゴロンと落とした。
 テシはそれをすばやく拾い上げると「取ったのじゃー!」と言い、その何か・・を頭上へ掲げた。


「おいテシ、それは――」

「余の、なけなしの酒だ……」


 トバ皇は観念したようにそう言った。
 しかしシノはお構いなしに、トバ皇を問いただす。


「ちょっと、これ……度数高いお酒じゃない! あれだけお医者様から言われてたじゃない、度数の高いお酒は飲まないでって!」

「だって清酒とか、あんまり美味しくないし……」

「ふつうに美味しいよ! ……じゃない。ああ、もう! こんなに減ってるし……」

「なんだ、この展開……」

『親子喧嘩……ですかね?』

「神龍について何か知ってると思ったのに……、興ざめなのじゃ」

「とりあえず、これは没収ね没収。絶対飲ませないから」

「そんな殺生な……! そ、そうだ、その酒と役に立つ情報を交換せぬか」

「役に立つ情報ですか……? もしかして、神龍に関する……?」

「そうだ神龍について、だ」

「――な!?」

「知ってるの? お父さん?」

「し、知っているとも……!」

「言って」

「え、でも、取引……」

「いますぐ」

「あのですね……お酒を……」

「…………」

「ロンガが以前、神龍のことについて何か言っておった……」

「ロンガ君が?」

「そうだ」

「情報って、それだけ?」

「う……うん……」

「……いっちゃん。そのお酒渡して」


 テシはシノにそう言われると、持っていた酒をシノに手渡した。


「お……、おお、さすが我がむす――」


 シノは酒の蓋をポンと、抜くと残っていた酒を一気に飲み干した。
 トバ皇は「ああ……余のとっておきが……」と呟きながら、がっくりと項垂れる。
 シノはそれをしり目に口元をグイッと拭うと、
「はい、お酒」
 と持っていた酒瓶をトバ皇の横へ転がした。


「えげつねえ……鬼だ……」

「ひっく、……んまあ、中身のことについては言及してなかったからねぇ……酒瓶だろうが、酒だろうが、関係ねえっしょ?」

「それって屁理屈じゃ……。ていうか、シノさん、酔ってます? 酔ってますよね? ほっぺた赤いですよ」

「うるへー! 酔ってなんかなーいわよ! あらひのカ・ワ・イ・コ・ちゃん。えへへへーんちゅっ、んちゅ」

「うわ、酒くさっ」

「お、おねえちゃん、これ……姫の飲んだ酒、五十度以上あるぞ」

「まじか……それを一気にって――んむ!? んううううう!!」


 シノはタカシの頬を持って、ぶっちゅーと、濃厚な口づけをした。
 タカシは目を白黒させながら、強引にシノを引きはがす。


「うぷ……、酒きらいなのに……それがダイレクトに……っ」

「んふふー。ひくっ。さーてさてさて、ルーシーちゃん成分も補給したし、ロンガ君のとこに――」

「その必要はない」


 大広間に男の声が響く
 男はガチャガチャと、赤色の鎧を揺らしながら歩いてきた。
 エストリア騎士最強、赤色の騎士撃滅のロンガ。
 その顔つきは弟であるヘンリーに似ていたものの、いくつもの修羅場をくぐってきていたのか、険しいものとなっていた。
 髪はタカシと同じ赤色。
 体つきはヘンリーよりもがっしりとしており、背丈も一回りほど高い。


「えっと……」

「ロンガ君じゃーん。来てくれたんだー。ひさしぶりーげんきー? あたしはぁ……げんきぃー! んふふふ、あははは!」

「こ、この人が……ロンガさん? 来ていたのですか?」

「なぜなら、オレはずっと宴会の席にいたからだ。なぜならオレはずっとおまえらを見ていたからだ。なぜならオレはひとりでずっと酒を煽っていたからだ。……楽しそうだった」

「は、はぁ……」

『タカシさん、また変わった人が出てきましたけど……』

「変わった言うな。おまえんとこの最強騎士だろうが」

『でも、あれですね。ヘンリーさんの証言とも、シノさんの証言ともちがう性格ですね。何があったんでしょう』

「酒でも飲んでるからだろ……。おまえんとこの国は、まじで変な騎士しかいねえよな」

「ルーシー、おまえはわかる。おまえはオレのことを知らない。だから、声のかけようがない。……だが、おまえとおまえ。シノとテシ。なんで無視した?」

「いやー、たははは、なんかチラチラ見てるなー……てのはわかってたけどさー」

「ちょっと、怖かったのじゃ」

「有り体に言うとさぁ、関わり合いになりたくなかったって言うのが本音だったかなぁー。んだってさ、うざいんだもん」

「姫!?」

「ふっ、そうか……うざいか……哀しい」

「なんで涙目……」

「……ときに、オレに用があるんじゃなかったのか?」

「ああ、そうそう。神龍のことについて聞きたいんだよねー。なんか知ってんでしょ? おーしーえーなーさーいーよー、このこのー! デュクシデュクシ!」

「いたっ……ふっ、神龍か。いたっ……よかろう、オレの知っていることについて話してやる。……いたっ」

 ロンガそう言うと踵を返して歩きだした。
 しかし、誰一人としてロンガの後をついていこうとはしない。

「ところでロンガくんさ、なーんでそんなうざったい話し方になってんの? 前まではもっとこう……、爽やかな好青年だったじゃん。いまはなんか……絡みづらい」

「おもいきり絡んでんじゃん……」

「? なにを言っているのだ姫。ロンガ殿はずっと『ふっ』が口癖じゃぞ」

「はあ? ほんとに?」

「ふっ、そんなことはないぞ」

「言ってんじゃない。はーあ、なーんかガッカリだよ、ロンガ君にはほとほとガッカリだよ。反省して?」

「姫!?」

「あ、そういえば、初めまして……ですよね。自分は――」

「ルーシー……だろ。ふっ、知っているとも」

「そ、そうですよね。さっきも自分の名前言ってましたしね……」

「おい、なぜ知っているのか? ……という、理由は聞かないのか?」

「え? いえ、別に知りたくはないんで」

「ふっ、そうか。……哀しい」

「あのいまはとにかく、神龍のことについて聞きたいのですが……」

「そうだったな。なら、場所を変えよう。ここはなにかと良くないからな」

「こ、ここに、なにかあるんですか?」

「ふっ、言ってみただけだ。雰囲気づくり、というやつだ。気にするな」

「ルーシー」

『なんですか?』

「ひとつ、言っていいか?」

『偶然ですね、わたしもちょっと感じたことがあります』

「すっっっっっっっっっげえ」
『殴りたい!』
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

処理中です...