憑依転生~女最弱騎士になった『俺』が最強に成り上がるまで

枯井戸

文字の大きさ
14 / 92
雑兵編

ただのヘタレかと思ってたらボンボンだった。

しおりを挟む
 ルーシーの家の食卓。
 そこにはタカシとその両親、ドラゴンの少女とヘンリーが食卓を囲っていた。
 少女は相当空腹だったのか、手と口を休めることなく、食べ物を胃に送り続けていた。


「それで結局、その子に服買ってあげたんすね」

「まあな……」

「さっすが姉御! オレにできないことを平然と――」

「おまえはなんで普通にオレん家で飯食ってんだよ!」

「父さんが誘ったんだよ!!」

「なんでだよ!!」

「聞けばヘンリー君の家は、あのものすごい良家らしいじゃないか。……どうだルーシー、ここらで玉の輿に乗ってみては」

「うるせえな、だれがこんなやつと……」

「そんなぁ……オレには恐れ多いですよ、お父さん」

「っち……あのな、そもそもオレは結婚とか、そういうのは考えてねえからな」


 タカシの意見にルーシーも『そうだそうだ』と被せて言った。


「おおう、なんということだ! 我が娘がそっちの趣味をもっていたとは……」

「ちげえよ! いや、オレは違くねえけど、あんたの娘はちげえよ!」

「そうですよ、お父さん。ルーちゃんにはまだはやいかと……」


 ルーシーの母親が食べ終えた食器を片付けながら言った。


「それに玉の輿もなにも、オレはもう青銅騎士だぞ? もはや逆玉だろうが」

「逆玉……? なにを言っているんだ、ルーシー」

「あの、姉御……その、ちょっと言いづらいんですけど、オレも青銅なんすよね……」

「はぁ? おまえが? 冗談だろ?」

「すみません、オレの実家がロクでもないとこでして……」

「オヤジもさっき言ってたな。……おまえの実家って一体、なんなんだ」

「サルバトーレ家って、聞いたことないっすか?」

「……なんだそれ? 聞いたことな――」

『ええ!? サルバトーレ?』


 タカシの声を遮るようにして、ルーシーが声をあげた。


「うるっせえな。って、なんか知ってんのか?」

『知ってるもなにも、大臣さんの家じゃないですか!!』

「は? ダイジンって……大臣? エストリアの?」

「はい……恥ずかしい話なんすけどね……。青銅に上がれたのもコネみたいなもんで……」

「だろうな」

「はは、相変わらずキツイっすね。けど、ほんとその通りで……実力なら雑兵の中でも下の下、毎日まわりには白い目で見られる日々で……オレとしては剣を握って、なんやかんやするよりも、他にやりたいことが――」

「いや、それはいいとしてさ。なんでおまえ、あんないらなくなった兵を、掃いて捨てたような戦争に参加してたんだよ。ボンボンとかなら普通、適当に後方で安全な仕事してるだけって選択肢もあったんじゃないのか? それも大臣の息子ともなれば、なおさらだろ」

「なに!? ルーシー、なんだ、その話は……!?」

「あんたは黙ってろ。……どうなんだ? ヘンリー」

「それは……」

「話したくないってか?」

「すんません……」

「……まあ、いいや。おまえが前に、家に帰りたくないみたいなこと言ってたから、だいたい察しはつくしな」

「すんません。なんか言い訳みたいに使っちゃって……でも、オレが姉御を尊敬してるのはマジっすから!」

「いらねえよ! さっさと帰れおまえは」

「……うう、了解っす……」


 ヘンリーはそういうと食卓から立ち上がると、ルーシーの両親に頭を下げた。


「ごちそうさまっした。うちの料理なんかより、よっぽど美味かったっす」

「それはよかったわ。また、いつでも食べにきていいですからね。ヘンリーさん」

「ああ、いつでも来なさい。ついでに娘ももらっていきなさい」

「死ね、クソオヤジ」


 ヘンリーはすこしはにかむと、そのまま家から出ていった。


「さて、ルーシー。話があるんだが」

「……なんだよ」


 ルーシーの父親は真面目な顔でタカシに向き直った。
 その迫力に気圧されたのか、タカシは少しだけ身構えるように、父親をまっすぐに見た。


「さっきの話か?」

「違う。その子はだれだ」


 そう言って父親はドラゴンの少女を指さした。


「え? ああ、って今更かよ! さっき話してたじゃねえか!」

「それはそれ、これはこれ。きちんと説明しなさい」

「これはあれだよ……、拾った」

「なんてことだルーシー、またかおまえは」

「また?」

「忘れたとは言わせんぞ! いままで拾ってきたネコ三匹に犬四匹、スライムとピクシー、さらに今度はドラゴンだと? だれが最終的に餌をやってきたと思ってるんだ!」


 タカシは冷めたような目でルーシーを見た。


『いやいや、違うんですよ! ホント可哀想で……仕方なく……』

「はぁ……」

「うるさい! あたしをそんなやつらと一緒にするな! おかわり!」


 ドラゴンの少女は空になった皿を、ルーシーの母親に渡した。
 母親は「はいはい」というと皿を受け取り、キッチンへと消えていった。


「とにかく、我が家で飼うのは反対だ。炭鉱から拾ってきたのだったか? きちんと返してきなさい! 親御さんも心配しているだろう」

「……どうなんだ? 親御さんとやらは心配してんのか?」

「わかんない」

「だとよ。この通り、記憶はほとんどないらしい。そんな可哀そうな少女を、オヤジは見捨てるのか?」

「ぐぬぬ……! それよりも、名前はなんというんだね」

「ドーラだ」

「名前あるのかよ! いくら聞いても知らねーって言ってたじゃねえか!」

「いま思い出したんだ」

「なんてやつだ。試しに一発殴ったら、もうすこし思い出すんじゃないか?」

「あ! いーのか、ルーシー。そんなことしたら王様に怒られるんだぞ?」

「躾だからいいんだよ」

「うう……目がマジだぞルーシー……。でも、ホントなんだ。あたしの名前はドーラ。あとはトシが、十万と九歳だってことくらいしか思い出せないんだ」

「じゃあなんで炭鉱なんかにいたんだよ。さすがにそこまでの記憶はあるだろ?」

「なんでだろ……なにかから逃げてたような気はするんだ。それがすごく怖くて、必死に逃げて、それで気が付いたらあの炭鉱にいたんだ。ホントなんだ!」

「ドラゴンを脅かすほどのなにか……か。それを撃退することはできなかったのか?」

「わからない。あたし、だれかを傷つけるのは好きじゃなくて……それがすごく強いやつじゃなくても、逃げてたかも……」

「なるほどな。だからあのときもオレに反撃せず、ただ泣いてただけだったのか……」

「あたしはフツーに暮らせたら、それ以上はなにもいらないんだ! お願いだ! あたしを追い出さないでくれないか?」

「ま……追い出すもなにも、それ以外オレには選択肢はないからな」

「あ、ありがとうルーシー! おまえ、意外といいやつなんだな!」

「それと、おまえの体にもすこし興味があるからな。ククク……」

「な、なんだかすごいイヤな目だぞ、ルーシー……」

「や、やはり我が娘はそういう趣味の持ち主だったか……ここは理解ある親になるべきか、あるいは頑なに認めないでいるか……迷うッ!」

「そういう意味じゃねえって!」





 王都内、某所。


「大臣、聞きましたか。例の件」

「……なんだ。またうちの、ダメなほうの息子がなにかやらかしたか?」

「いやいや、そういう話じゃないですって。……でも、無事帰ってきてよかったですね。ヘンリーくん」

「フン、厄介払いしておいたゴミが帰ってきたのだぞ。これ以上不愉快なことがあるか」

「相変わらずですね。そんなんじゃヘンリーくん、お父さんに愛想尽かせて出て行ってしまうかもしれないですよ?」

「……それよりもなんの用だ。ゴミの話をするために話しかけてきたわけではないだろう? こんなところを見られてはまずいと、おまえもわかっているだろう」

「最年少で青銅に選ばれた女の子のことですよ」

「なんだ、それは」

「なんだかすごい後輩がでてきたみたいですね。僕もうかうかしてらんないな」

「質問に答えろ。誰だそれは」

「ホントに知らないんですか? たしか十六歳くらいの女の子ですよ」

「……どうせ、どこの馬の骨ともわからん、コネ昇進のやつなのだろう?」

「ところがどっこい、そうじゃないみたいですよ。それも聞くところによると、なんとあのノーキンスと素手で渡り合ったという話も……」

「……そいつは人間なのか? 魔族の者では……?」

「どうやら、人間みたいですよ。それもシノちゃんが夢中になるくらい、可愛いとか」

「……あの女は、相手が女だったらなんでもいいのだろ」

「まあ……、そこは強く否定できませんけどね……」

「しかし、そうか……。これでまたエストリアの騎士団が盛り上がるわけか……ククク……」

「……そろそろ何を考えているか、教えてはもらえないですか?」

「ふむ、マーノン。おまえにしては大胆な提案だな。……だが、まあ待て。まだその時ではない。期待せずに待っていろ。おまえはおまえのすべきことするんだな」

「ふふ、悪い顔してますよ。大臣」

「もともとこういう顔だ。気にするな」
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

処理中です...