憑依転生~女最弱騎士になった『俺』が最強に成り上がるまで

枯井戸

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白銀編

聖虹騎士vs白銀少女

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「さて」
「さて」

 タカシとデフ、ふたりの声が重なる。

「あ、どうぞどうぞ」


 デフが遠慮がちにタカシに譲った。


「あ、どうも。それで、我々はどうしましょうか。お茶でもします? 近くにおいしいコーヒーをだしてる喫茶店があるんですよ」

「そうなのかい? それもいいかもね。……それにしても、年のわりにずいぶんと渋いものを飲むんだね。ルーシーさんはコーヒーが好きなのかい?」

「好きか好きじゃないかと聞かれれば、じつはそうでもないんですよ。でも、最近は朝が早いので、そのために飲んでるっていうのもあるかもしれません。でも、おいしいのはおいしいです……ただし、ミルクと砂糖を大量に入れないと飲めないんですけどね」

「――マーノンくんが来るかと思ってたよ」

「……それ、マーノンさんにも似たようなことを言われました」

「そうなのかい? マーノンくんは元王マーレー殿とはかなり親しかったし、忠誠も誓ってたんじゃないかな。少なくとも、僕にはそう見えていたね」

「それ、たぶん正解なんじゃないかと……ですが、デフ殿は違ったのですか?」

「残念ながら、僕はあの人に忠誠を誓うことはできないかな」

「あんなにカンニングペーパー書いてもらったのにですか?」

「カンニングペーパーを書いてくれることには感謝してるけど、それだと書記さんたち全員に忠誠を誓わないとダメでしょ。それはさすがにね」

「その理論は謎ですけど、少なくともふつうは、感謝しているひとを殺してまで引きずり降ろそうなんて思わないですけどね」

「そうかな? マーレー殿はたまたま王の座にいた。僕はそれを容認できなかった。それで十分じゃないかな。マーレ殿がいまから書記になりたいっていっても、僕は止めないよ。むしろ歓迎するかもしれないね」

「そんなにも、争いの絶えない世の中にしたいのですか?」

「はっはっは、腕っぷしはあっても、なにもわかっていないようだねルーシーさん。いいかい、僕だって、別に血みどろの戦争を望んでいるわけじゃないんだ。できるなら、戦争なんて関係ないところで、ゆっくりと、しずかに暮らしたいさ」

「ならば――」

「理想はね。でもね、できないんだ。やるやらないの問題じゃない。僕たちはこういう生き方しかないんだ。わかるかい? 人はだれしも、いまよりもよりよい生活をしたいと思ってる。そのためには昇進したり、重要な役職に就いたり、商売の手を広げたり……そして、僕たちはそれがたまたま戦争・・だったってだけなんだ。他には知らないんだ、生きていく方法をね。ひたすら人を殺して、殺して、殺して、殺す。いままでそれだけだったのに、急になにもせず、なにも考えず、なにも心配しない生活なんて耐えられるわけないじゃないか。ここが限界。それが僕たちの結論だった」

『ちょっとカチンときました。タカシさん、いまからわたしの言う言葉を復唱してください』

「……ああ、わかった」

 タカシはすぅっと息を吸うと、ルーシーの言葉に続いて言葉を紡いでいった。

『――だったら、エストリアを出ていけばよかったじゃないですか! こんなにもエストリアの人たちを殺しておいて、それが自分たちの生き方じゃないって? だから殺すって? フザケないでくださいよ! 甘えないでくださいよ! だったら、そんなに言うんなら、エストリアを出て、自分たちだけで暮らして、エストリアの人たちと関係のないところで戦争していけばいいじゃないですか! エストリアはそういうあり方なんですから、なんでそれを、わざわざあなたたちのために変えないとダメなんですか! なんでそれで無関係な人たちを巻き込めるんですかっ! わたしには理解できません! 理解したくもありません! ……ですから、お願いです。すべてを国民の前で白状しろとも言いません。罰を受けろなんていいません。だから――だからどうか、わたしたちのエストリアから、出ていってはもらえないですか?』」

「ルーシーさんの言いたいことはよくわかるよ。でも、出ていく事は出来ないんだ。なぜなら、エストリアは僕たちの国でもあるからね。ここを変えたい。ここで変えたい。これが僕たちの結論だ。エストリア以外じゃダメなんだ」

「『理解……できません』」

「だろうね。理解されなくてもやるだけだからさ」

『でも――』

「……いや、もうやめようルーシー。これ以上は無駄だ」


 タカシがルーシーの言葉を遮った。


「そうだね。これ以上はなにを話したとしても、平行線をたどるだけだ。こっちには曲がるつもりはないし、そっちにもないんだよね?」

「はい」

「だったらその直線・・は永遠に交わるわけがない。それにその直線は他の直線の存在を認めようとはしない。そうなってきたら、もうやることはひとつしかないよね」

「そうですね、じゃあお茶にしますか」

「ええ? いままでの話を聞いてなか――」


 タカシが大きくデフに対し踏み込む。
 手にはいつの間にか抜かれている剣。
 それをデフの首筋めがけ、振りかぶっていた。
「あなたをぶっ倒した後でね」
 デフはそれに反応すると、咄嗟に身を翻す。

 ガィィィィィン!!

 デフは辛うじて、タカシの剣を背中の盾で剣を防いだ。


かった……! なんなんすか、その盾」

「いきなり不意打ちかい? これじゃあ、誰がルーシーさんのいう、ワルモノかわからないね」

「勝ちゃいいんですよ。デフ殿もできれば、そのまま大人しく、首を刎ねられてください」

「それはできない相談だ――ね」


 デフは目を見開くと、盾でタカシを殴りつけた。
 避けきれず、直撃を食らったタカシはそのまま後方へ吹っ飛んでいく。

 ドゴォン!

 と執務室の壁を破壊し、地上四階から真っ逆さまに落ちていった。


『大丈夫ですか? タカシさん!』

「大丈夫だ。直撃は――うっ、かふ……!?」

『タカシさん!?』


 タカシが喀血する。
 デフに殴られた鎧の場所がボロボロに砕かれていた。
 タカシはすばやくその場所に手をあてると、回復魔法を使用しようとした。


「ちっ、まじか。直撃を避けても――な!? 回復魔法が――!?」

『タカシさん、着地! 着地しないと!』

「くそ、いそがしいな!」


 タカシはくるんとその場で一回転すると、ずだん! と足から着地した。
「ッ!」
 タカシの足元の影が次第に大きくなる。

 ズガアアアアアアアン!

 刹那、タカシは上から降ってきたデフの大盾に圧し潰された。

 ――かに見えた。
 タカシは咄嗟の反応で、横へ飛び退いていた。


「いまの、よく避けたね」

「……それより、なんか魔法が使えないんですけど」


 デフが無言で、無色透明の宝石がついたペンダントを取り出す。


「それは相殺の魔石……ですか」

「うん。魔法を使われると、どうしても分が悪くなっちゃうからね」

「そういうことですか……ちなみにそれは――」

「そう。察しの通り、マーノン君対策だよ。でも、キミにも十分有用みたいだ」

『どどど、どうするんですか、タカシさん! ヤバいですよ! これじゃ回復魔法も肉体強化も使えません! 肉弾戦でデフさんに勝てるんですか? 無理じゃないんですか?』

「うるせえな、いま対策と傾向を考えてんだよ」

「考えさせる暇は与えないよ」


 間髪を入れずにデフがタカシに突進する。
 タカシはマタドールのようにそれを躱すと、背を向けて逃げだした。


「なるほど、そうくるか」

「これが古より人々が口伝している必勝戦闘法『逃げるが勝ちランアウェイ』ですよ! オニさんこちら!」

『な、なにバカこと言ってんですか!』

「バカ言え! 生身で岩とかぶち割る人間に勝てるわけねえだろ!」

『で……、でもでも、そんなこと言って、ほんとはなにか奥の手があるんでしょ? そうなんですよね? そうと言ってください! そうと言わなければ泣きますよ!?』

「…………?」

『いやいや! 困った顔されても、困るのはこっちなんですけど! え? マジですか? 真面目に打つ手無しなんですか……? ちょ、しぬぅー! わたしの体が粉々になるぅー!』

「うるせーよ! 幸い、ここは平地や広場じゃねえ。だからその分、小回りのきくおまえみたいなチンチクリンな体が有利なだけだ」

『ち、チクチク!? どさくさに紛れてドセクハラですか!』

「褒めてんだよ、アホ」

『あ、そうなんですか? あはは……チンチクリンなんて言われたから、てっきり貶されてるのかと……あれ? まてよ? チンチクリンに貶す以外の用法ってありましたっけ?』

「とにかく、あれだ。いまは逃げ回るしかねえ。ちなみに、この前の戦争でカライが使ってきた、相殺の魔石の効果時間ってどれくらいだった?」

『えっと、戦争中ほとんど魔法が使えませんでしたから……だいたい半日。十二時間弱じゃないですかね。……って、こんなの作戦でもなんでもないですよ!』

「だったら、今から十二時間耐久マラソンの始まりだな」

『ほ、本気ですか!?』

「本気だとも。とりあえず、追いつかれたら死ぬ。もしくは――」

『も、もしくは?』

「その間になにか考える!」
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