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第19話 ぷすぅ……

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 変態男爵は一歩進む事に二度腰をカクカクと振りながら歩み出ると、変態仙人がそれを制止するように口を開いた。

「変態男爵よ、止まるのじゃ。お主『変態に関する東西の包括的及び先進的な協定』を忘れたか」

 すると変態男爵はニンマリと笑って答えた。

「もちろん忘れてはおりません。東の変態仙人、西の変態男爵。どちらもお互いに敬意を払いあらそわないという協定」

「ならば、なぜこの東のコンチ山に来たのだ」

「くっくっく。変態仙人殿、お間違えなく。私はあなたではなく、この変態騎士団長にようがあるのです」

「なにっ」

 するとその時、小屋の外から必死に叫ぶ声が聞こえた。

「に! 逃げてください! こ、この変態男爵は……」

 なんとそれは身ぐるみをがされて、後ろ手に縛った縄とち◯こを結びつけられた修羅の青年だった。

 ズシャァアア……

 修羅の青年はその格好かっこうで必死に山頂まで登ってきたが、力尽きてその場に倒れ込み、動かなくなった。

 それを見た変態仙人は変態男爵に声を荒げた。

「わたしの可愛い修羅に何をしたのだ!」

 しかし変態男爵は表情一つ変えずに答えた。

「先に手を出してきたのは、あの青年ですよ。そちらこそ協定違反では? くっくっく」

 それを聞いた変態仙人は何も言えずに黙り込んだ。

 変態男爵はその様子を見て満足そうな笑みを浮かべると、鋭く変態騎士団長に目線を送った。

 しかしその視線をさえぎるように、珍念ちんねん木念もくねんが割って入るように滑り込んできた。

 ズザァァ……

 低い姿勢でポーズを決めた珍念ちんねん木念もくねんは背後にいる変態騎士団長に背中で語った。

「ったく、ゆっくり茶ぐらい飲ませろっつぅの」

「この身砕けようとも、大切な後輩には指一本触れさせない」

 変態男爵は珍念ちんねん木念もくねんを薄ら笑いで見下ろすと、つま先立ちで伸び上がり、ゆっくりと美しいY字バランスを披露した。

 スゥッ……

 そして静かに珍念ちんねん木念もくねんを指差すと、紳士的かつ威圧するような口調で言い放った。

「あたなたちなど、Y字バランスをしたままで十分。さぁ、かかってきたまえ」

 すると、その言葉を合図とするように珍念ちんねん木念もくねんは同時に飛び出した。

「いくぞ弟者おとじゃ!」
「ああ、兄者あにじゃ!」

 飛び出した珍念ちんねん木念もくねんは空中で同時にズボンをおろして尻を丸出しにすると、猛然もうぜんと尻で変態男爵の顔へと襲いかかった。

「「くらえ! スカイケツ・ハリケー……!!」」

「ぐはっ!」

「お、弟者おとじゃ!!」

 なんと、変態男爵は飛び出した珍念ちんねん木念もくねんよりも素早く片足で飛び出し、Y字バランスのまま木念もくねんの股間をり上げていた。

 それを見た変態仙人と、変態騎士団長は驚愕の表情で声を漏らした。

「なんじゃと!」
「なっ! なんという身体能力だ!」

 木念もくねんの股間を蹴り上げた変態男爵は片足のまま宙返りして着地すると、きびすを返して、まだ空中にいる珍念ちんねんめがけて飛び込んだ。

 そして変態男爵は空中で回転を加えると、その遠心力で珍念ちんねんの股間を狙いに行った。

 ブワッ!

 それを見た珍念ちんねんは変態男爵の攻撃を避けようと、渾身こんしんの力で屁をこいた。しかし、

 ぷすぅ……

 なんと、珍念ちんねんは屁をスカシてしまった。

「しまった!」
「ふっ、好機!」

 屁をスカシたことで上昇力を得られなかった珍念は、草原で猛禽類もうきんるいねらわれた野兎のうさぎのごとく逃げることがかなわなくなってしまった。

 それを察した珍念ちんねんは一瞬変態騎士団長に目線を送ると静かに目を閉じながら声を投げた。

「あとは頼んだぞ! おれのしかばねを超えてゆけ!」

 変態騎士団長は涙ながらに言葉を聞くと、変態男爵に猛然と襲われてゆく珍念ちんねんに叫びをあげた。

「ち、ちん、ちんちん! 珍念先輩ちんねんせんぱい!!!」

 しかしその声はむなしく虚空こくうに消え、変態男爵の鋭い蹴りが珍念ちんねんの股間を寸分の狂いもなくり抜いた。

 バチイィン! チイィン…… イィン……

「はうぁっ!」

 珍念ちんねんは尻を突き出したまま恥ずかしい格好で吹き飛ばされると、そのまま地面に叩きつけられた。

 ズシャァアア……

 変態男爵はY字バランスのまま静かに着地すると、ゆっくりとY字バランスを崩して右足を地につけた。

 そして変態騎士団長をにらみつけると薄ら笑いを浮かべながら口を開いた。

「ご心配なさらず。彼らは気絶しているだけ。だが、変態騎士団長。あなたは覚醒してしまった。その変態力へんたいリキは間違いなく我が男爵一族を殺し、根絶やしにする」

 それを聞いた変態騎士団長は驚きながらも変態男爵に言った。

「何を言っているのだ! わたしは誰も殺したりはしない! 今までも敵は全て気絶させてきた!」

 すると変態男爵は諭すような口調で答えた。

「強大なる力は人を狂わせる。お前は覚醒し、すでに超絶的破壊兵器スーパーウェポンになってしまったのだ。だから力が増大する前に……、殺す」

 そして変態男爵は変態仙人を指差して続けた。

「変態騎士団長をそそのかし、超絶的破壊兵器スーパーウェポンを作り出したお前も同罪! 覚悟しておくのだな!」

 しかし、その言葉を聞いた変態仙人は静かに笑うと変態男爵に答えた。

「見くびるな変態男爵よ。このわしが見極めもせずに覚醒させたと思ったか。お主はこの変態騎士団長の素直さ、優しさ、力強さが見えぬのか!」

 それを聞いた変態男爵は一瞬怯いっしゅんひるんだ。

 そしてその表情を見た変態仙人は眼光鋭く変態男爵に言った。

「お主……、嫉妬しっとしておるな」

「はっ!!」

 変態男爵は核心を突かれ思わす声を漏らした。

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