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学校
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元々千秋は弱い子ではなかった。
だからこそ、目覚めた後イジメっ子たちを見てもちゃんと自分の気持を伝えることができたんだろう。
千秋のようにちゃんと『簡単には許せない』と伝えられる子がどれくらいいるだろうか。
ほとんどが、謝罪されればすぐに許してしまうかもしれない。
本心が別のところにあったとしても。
☆☆☆
一週間後、千秋は松葉杖をついて学校の階段を上がっていた。
よこには奈穂と珠美がついている。
「少しずつでいいからね」
「ゆっくりね」
声をかけられるたびに千秋は「うん、うん」と返事をする。
ようやく教室にたどり着くと珠美がドアを開けてくれた。
「ありがとう」
「ううん」
千秋に謝罪した日を堺に4人は毎日お見舞いへ行くようになった。
そこではできるだけ明るい話題をして、学校内での笑い話を聞かせた。
そうすることで少しでも学校へのハードルが低くなればと思ったのだ。
これくらいしか、自分たちにできることはないから。
Bその組の教室へ千秋が入って来た瞬間、すでに登校してきた生徒たちが静かになった。
みんなの視線が千秋へ向かうが、その中の数人は気まずそうに視線をそらした。
そうした反応を見せたのは千秋がイジメられているのを見て率先して笑っていた生徒たちだった。
千秋が戻って来る前に、そういう生徒たちにも謝罪をした。
千秋はなにも悪くないのだと伝えたが、それでもやっぱり関係が簡単に修復されることはないみたいだ。
その反応に悲しさを感じるが、奈穂はすぐにその感情を追い払った。
悲しいのも、辛いのも自分じゃない。
千秋なんだ。
そう言い聞かせて前を向く。
「おはよう」
千秋が誰にともなく声をかける。
瞬時に反応はなかった。
けれど千秋と最も仲が良かった3人の女子生徒たちが立ち上がり、近づいてきた。
「おはよう千秋」
「おはよ!」
「今日からまた復活だね!」
彼女たちの明るい声が教室の雰囲気を変えた。
千秋が入ってきたことで静かに様子を見守っていた生徒たち数人が席をたち、「おかえり」と、声をかけてくれたのだ。
千秋が嬉しそうに「ただいま」と返事をする。
その頬は高揚して赤く染まっている。
「今まで見て見ぬ振りをしてごめんね」
「千秋に直接話しを聞けばカンニングが嘘だってわかったのに、信じなくてごめん」
みんな、それぞれに感じることがあったようで口々に謝罪の言葉を述べる。
千秋はそのすべてに耳を貸して「うん、うん」と頷いて答えた。
それを見ていると、やっぱりイジメはクラス全員がなにかしら関係していたことなんだと、千秋は強く痛感した。
見て見ぬ振りも知らなかったも言い訳にはならない。
自分たちはこれから先全員で償っていく必要がある。
それでも千秋は今笑っていた。
目に涙を浮かべて、みんなの声を聞いて、そして笑っていたのだった。
END
だからこそ、目覚めた後イジメっ子たちを見てもちゃんと自分の気持を伝えることができたんだろう。
千秋のようにちゃんと『簡単には許せない』と伝えられる子がどれくらいいるだろうか。
ほとんどが、謝罪されればすぐに許してしまうかもしれない。
本心が別のところにあったとしても。
☆☆☆
一週間後、千秋は松葉杖をついて学校の階段を上がっていた。
よこには奈穂と珠美がついている。
「少しずつでいいからね」
「ゆっくりね」
声をかけられるたびに千秋は「うん、うん」と返事をする。
ようやく教室にたどり着くと珠美がドアを開けてくれた。
「ありがとう」
「ううん」
千秋に謝罪した日を堺に4人は毎日お見舞いへ行くようになった。
そこではできるだけ明るい話題をして、学校内での笑い話を聞かせた。
そうすることで少しでも学校へのハードルが低くなればと思ったのだ。
これくらいしか、自分たちにできることはないから。
Bその組の教室へ千秋が入って来た瞬間、すでに登校してきた生徒たちが静かになった。
みんなの視線が千秋へ向かうが、その中の数人は気まずそうに視線をそらした。
そうした反応を見せたのは千秋がイジメられているのを見て率先して笑っていた生徒たちだった。
千秋が戻って来る前に、そういう生徒たちにも謝罪をした。
千秋はなにも悪くないのだと伝えたが、それでもやっぱり関係が簡単に修復されることはないみたいだ。
その反応に悲しさを感じるが、奈穂はすぐにその感情を追い払った。
悲しいのも、辛いのも自分じゃない。
千秋なんだ。
そう言い聞かせて前を向く。
「おはよう」
千秋が誰にともなく声をかける。
瞬時に反応はなかった。
けれど千秋と最も仲が良かった3人の女子生徒たちが立ち上がり、近づいてきた。
「おはよう千秋」
「おはよ!」
「今日からまた復活だね!」
彼女たちの明るい声が教室の雰囲気を変えた。
千秋が入ってきたことで静かに様子を見守っていた生徒たち数人が席をたち、「おかえり」と、声をかけてくれたのだ。
千秋が嬉しそうに「ただいま」と返事をする。
その頬は高揚して赤く染まっている。
「今まで見て見ぬ振りをしてごめんね」
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みんな、それぞれに感じることがあったようで口々に謝罪の言葉を述べる。
千秋はそのすべてに耳を貸して「うん、うん」と頷いて答えた。
それを見ていると、やっぱりイジメはクラス全員がなにかしら関係していたことなんだと、千秋は強く痛感した。
見て見ぬ振りも知らなかったも言い訳にはならない。
自分たちはこれから先全員で償っていく必要がある。
それでも千秋は今笑っていた。
目に涙を浮かべて、みんなの声を聞いて、そして笑っていたのだった。
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