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愛花ちゃん
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和斗が好きになった愛花ちゃんは隣のクラスの女の子だった。
生まれつき栗色の髪の毛はフワフワしていて、まるでお人形さんみたいなのだ。
小柄な愛花ちゃんはみんなの人気者だった。
愛花ちゃんの柔らかな髪の毛に触れてみたいと思う子が多いみたいで、休憩時間になるといつも友達に囲まれていた。
自分もあの髪に触れてみたいと思うけれど、男の和斗がそんな事を言えばきっと気持ち悪がられてしまう。
だから和斗はいつも遠目から愛花ちゃんの姿を目で追いかけるしかできなのだ。
それでも、自分から頑張って声をかけたこともあった。
算数の教科書を忘れてしまって、愛花ちゃんのクラスにいる友達に借りに行った時の事だった。
「愛花ちゃんの髪ってほんとフワフワで気持ちいいよね」
「いいなぁ。天然だから先生にも怒られないんだよね」
その時もまた女子たちが愛花ちゃんを取り囲んで騒いでいた。
毎日毎日愛花ちゃんの髪に触れている女子たちを見ると、胸の奥がウズウズした。
羨ましいと思った。
気が付けば和斗は貸してもらった教科書を持ったまま、愛花ちゃんの席へと近づいていた。
何でもいい、愛花ちゃんと話がしたい。
挨拶でもなんでも、それができれば一歩前進だ。
「なによ?」
4年生の頃同じクラスだった女子が、怪訝そうな顔でそう声をかけて来た。
気が強くて男子に混ざっていても違和感のないような女子生徒だ。
和斗はチラリとその子の方へ視線を向け「別に」と呟いて愛花ちゃんを見た。
会話をしたことのない和斗が近くに来たことで、愛花ちゃんは戸惑った顔をしていた。
多少変だと思われてもいいから、『やっぱりなんでもない』と言って教室を出ればよかった。
だけど、和斗はそうしなかった。
目の前に好きな子がいる。
その事で心臓は大きく高鳴り、緊張して上手く考えがまとまらなかった。
「お前らさ、いつもベタベタし過ぎてて気持ち悪いよな」
違う。こんなことが言いたいんじゃない。
それなのに、和斗は言ってしまった。
女子たちが顔を歪めるのが見えた。
愛花ちゃんも困っているような、悲しんでいるような顔をする。
それがどんな感情で歪んでしまったのかわからなかったけれど、和斗の中に強烈な後悔が生まれた。
「なに言ってんのあんた」
昔の同級生が軽蔑した視線を和斗へ向ける。
ほんと、その通りだと和斗は思った。
何言ってんだ、俺。
だけど和斗は何も言えなかった。
女子たちに睨まれ、悲しまれたまま、そこから逃げるようにして教室から出た。
あの日から、和斗と愛花ちゃんの間には大きな亀裂が入っていた。
あれ以来、愛花ちゃんと会話をしていないのだから。
生まれつき栗色の髪の毛はフワフワしていて、まるでお人形さんみたいなのだ。
小柄な愛花ちゃんはみんなの人気者だった。
愛花ちゃんの柔らかな髪の毛に触れてみたいと思う子が多いみたいで、休憩時間になるといつも友達に囲まれていた。
自分もあの髪に触れてみたいと思うけれど、男の和斗がそんな事を言えばきっと気持ち悪がられてしまう。
だから和斗はいつも遠目から愛花ちゃんの姿を目で追いかけるしかできなのだ。
それでも、自分から頑張って声をかけたこともあった。
算数の教科書を忘れてしまって、愛花ちゃんのクラスにいる友達に借りに行った時の事だった。
「愛花ちゃんの髪ってほんとフワフワで気持ちいいよね」
「いいなぁ。天然だから先生にも怒られないんだよね」
その時もまた女子たちが愛花ちゃんを取り囲んで騒いでいた。
毎日毎日愛花ちゃんの髪に触れている女子たちを見ると、胸の奥がウズウズした。
羨ましいと思った。
気が付けば和斗は貸してもらった教科書を持ったまま、愛花ちゃんの席へと近づいていた。
何でもいい、愛花ちゃんと話がしたい。
挨拶でもなんでも、それができれば一歩前進だ。
「なによ?」
4年生の頃同じクラスだった女子が、怪訝そうな顔でそう声をかけて来た。
気が強くて男子に混ざっていても違和感のないような女子生徒だ。
和斗はチラリとその子の方へ視線を向け「別に」と呟いて愛花ちゃんを見た。
会話をしたことのない和斗が近くに来たことで、愛花ちゃんは戸惑った顔をしていた。
多少変だと思われてもいいから、『やっぱりなんでもない』と言って教室を出ればよかった。
だけど、和斗はそうしなかった。
目の前に好きな子がいる。
その事で心臓は大きく高鳴り、緊張して上手く考えがまとまらなかった。
「お前らさ、いつもベタベタし過ぎてて気持ち悪いよな」
違う。こんなことが言いたいんじゃない。
それなのに、和斗は言ってしまった。
女子たちが顔を歪めるのが見えた。
愛花ちゃんも困っているような、悲しんでいるような顔をする。
それがどんな感情で歪んでしまったのかわからなかったけれど、和斗の中に強烈な後悔が生まれた。
「なに言ってんのあんた」
昔の同級生が軽蔑した視線を和斗へ向ける。
ほんと、その通りだと和斗は思った。
何言ってんだ、俺。
だけど和斗は何も言えなかった。
女子たちに睨まれ、悲しまれたまま、そこから逃げるようにして教室から出た。
あの日から、和斗と愛花ちゃんの間には大きな亀裂が入っていた。
あれ以来、愛花ちゃんと会話をしていないのだから。
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