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そっけない態度
しおりを挟む家に帰ってもやっぱりピエロはどこにもいなかった。
そのことに安堵しつつも、また明日学校で姿を見せるかもしれない可能性に落胆する。
どうしてピエロは私達を攻撃してくるんだろう。
他の人たちへの被害はまだないんだろうか。
そんなことを考えているとだんだん食欲がなくなってきてしまって、夕飯を半分も残してしまった。
「どうしたの。いつもおかわりまでするのに」
「なんか風邪っぽくて」
両親に適当に嘘をついて早々に部屋に戻ってきてしまった。
スマホを確認してみると竜二から【綾のこと、気にしすぎるなよ】と、メッセージが入っていた。
それには変なスタンプもつけられて自然と笑みがこぼれた。
その夜私はスマホを握りしめてベッドに入ったのだった。
☆☆☆
「おはよう綾。傷は大丈夫?」
翌日A組へ入るとすぐに綾へと近づいて言って質問した。
いつも笑顔を浮かべてくれる綾に笑顔はない。
それどころか私と視線を合わせようともしない。
「綾は少し疲れてるみたいなんだ」
質問への返事もない綾に呆然としていると、健太が間に入ってきた。
「でも……」
「頼むから、今はそっとしておいてくれないか」
健太にキツクそう言われて、私は綾からそっと離れたのだった。
☆☆☆
最初ピエロが現れたとき、綾は私のせいじゃないと言ってくれた。
だけど実際に自分が被害にあって、危うく死んでしまう目に遭った綾はきっと私のことを恨んでいる。
休憩時間、1人で教室を出て人気のない渡り廊下で座り込む。
綾のそっけない態度を思い出すと目尻にジワリと涙が浮かんできて、慌てて手の甲でそれを拭った。
怪我をしたのも一番こわい目にあったのも綾なのに、自分が泣いてちゃダメだと叱咤する。
「とにかく、ピエロをどうにかしなきゃ」
「そんなの1人でどうにかできるもんじゃないだろ」
その声に驚いて振り向くといつの間にか竜二が立っていた。
「竜二……」
「泣くなよ、千夏らしくない」
横に立ち、私の背中をポンッと叩く。
「泣いてないよ」
「本当かよ」
カラカラと明るい声で笑う竜二に心が少しだけ軽くなる気がした。
「今日の放課後もピエロが出てくると思うか?」
「わからない。でも、来るかもしれないよね」
もしそうなったら、今度は全力で綾を守る。
もう絶対に怪我をさせたりなんかしない。
「もし出てきても、俺が一緒にいる。1人で解決しようとするなよ」
「……うん。ありがとう」
竜二の優しさがくすぐったくて顔をうつむける。
1人じゃない。
そう伝えてくれるように竜二が強く手を握りしめてくれたのだった。
☆☆☆
放課後になる頃には綾も少しは私と会話してくれるようになっていたけれど、今日は1人で早めに帰宅してしまい、図書委員会の仕事をしに来たのは3人だけだった。
「水野さんはどうしたの?」
図書の先生に質問されて健太が「家の用事があるみたいで、先に帰りました」と、説明していたのが心苦しい。
今日は
人手が1人分足りない状態での仕事になるのが申し訳なかった。
昨日は綾と健太にまかせていた掃除を、今日は私と竜二のふたりでやる。
健太は他のクラスの子と一緒にカウンターに座っていた。
「はぁ……」
ため息を吐き出してつい、手を止めてしまう。
竜二が両手に抱えるくらい一杯の本を持って戻ってきた。
「大丈夫か? まだ綾のこと気にしてんのか?」
本を台に置いて聞いてくる竜二に私は頷く。
「図書委員の仕事も綾抜きになっちゃったし。本当にごめん」
「気にするなって言ったのに」
ため息交じりの竜二はちょっとだけ呆れているみたいだ。
だけど全く気にしないなんて無理だった。
どう考えても私がみんなを巻き込んでしまっているんだから。
「さっき綾からグループメッセージが届いたけど、無事に家に帰ったってさ」
「そっか。それならよかった」
誰もいないところで綾がピエロに襲われるようなことはなかったみたいだ。
だけどまだ安心はできない。
ピエロが出てくるのは委員会の仕事が終わった後なんだから。
「しっかし、あのピエロは一体なんなんだろうな? 遠隔操作で動いてるとかか?」
竜二が持ってきた本のページを開いて確認しながら言う。
古くなった本の中身を確認して、破れなどがあったら修復するためだ。
私も本に手を伸ばして作業を手伝う。
「わからない。遠隔操作だとしても、あんな風に動くかなぁ?」
ピエロが顔を傾けたときに妙なねじれ方をしていたのを思い出す。
タイヤだって、本当はまっすぐに進まないから無理やり方向転換していた。
遠隔操作できるオモチャなら、もっとスムーズに動くと思う。
「あのピエロを操ってるヤツがいるとすれば、許せないよな。綾は本当に怪我したんだからさ」
竜二は怒りを顔に見せて言った。
「そうだよね。冗談とか遊びじゃ済まされないと思う」
そう言ってから、私はカウンターへと近づいて行った。
「健太、ちょっといい?」
利用者が比較的少ないことを確認してから、私は健太を呼び出して竜二と合流した。
「今竜二と話をしてたんだけど、もしあのピエロが遠隔操作されていたとしたら、どこから操作していると思う?」
その質問に健太は顎に指を当ててしばらく考え込んだ。
「たぶん、学校内だろうね。屋上とか、2階以上のどこかの教室とか。グランドが見渡せるような高い場所だと思う」
「屋上かありえるかもしれないな」
竜二が頷いている。
この学校では屋上へ出るための鍵を職員室で借りてくることができる。
特に理由はいらないくて、どんな生徒でも出入り自由なのだ。
「屋上って監視カメラがあるよね?」
1年生の頃集合写真の撮影のときにあがったことがあるので、そのことを知っていた。
「そうだな。先生に頼んで監視カメラんの映像を見ることができれば、ピエロを遠隔操作してる人物を探すことができるかもしれない!」
健太の目が輝いた。
綾を攻撃した人間を特定することができるかもしれないんだ、嬉しいに決まっている。
「そうと決まったらさっさと仕事を終わらせて職員室に行こうぜ」
竜二の言葉に私たちは持ち場へと戻ったのだった。
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