いぢわる王子様

西羽咲 花月

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パーティー

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パーティーは、いたずらというショックな事件が起きたその数時間後には開かれていた。


「碧、今から家にこないか?」


ゴミ箱の中身を人の少ない学校の裏庭で、すぐるが『偶然』持っていたというライターで燃やし尽くしてからの、一言。


「へ?」


私の隣には、律もいる。


「俺、今日誕生日なんだ」


「誕生日!?」


そんなこと全く知らなかった私は、驚いた後に何の準備もしていないことに気づく。


「私、知らなくてプレゼントとか用意してない」


「言ってないんだから、知らなくて当たり前だろ」


すぐるはそう言い、灰になった写真を靴で踏みつけた。


バラバラに原型をなくした写真が、風に乗って飛んでいく。


「パーティーってどんなのですか?」


律が、興味津々に聞いている。


元々、パーティーやお祭りが大好きで、そういう行事には目がないのだ。


「普通のだよ」


そう言うすぐるに私は思う。


あんな豪邸でする『普通のパーティー』は、きっと私たちからしたら普通じゃない。


「いつからやるの? ぜひ、行きたい!!」


目をキラキラと輝かせる律は、もう止められない。


私は小さくため息を吐き出して、携帯電話の時計を見た。


もうすぐでホームルームが終わる。


しかし……。


「今から」


と、すぐるが一言言ったのだ。


「今から!?」


律が、更に目を輝かせる。


「あぁ。俺の誕生日は毎年1日中かけてやるんだ。今頃、父親たちはワインでも飲んで騒いでるよ」


その時、ホームルームが終わるチャイムが鳴り響いた。


今から教室へ戻れば、授業には余裕で間に合う。


「律、教室戻ろ」


と、私は律の腕を引っ張る。


けれど、律はまるで大きな岩にでもなったかのように、ピクリとも動かない。


「碧!!」


突然、律に怒鳴られ、私はビクリとして手を離した。


「なに?」


律の目が、普通じゃない。


いつもの2倍くらいに見開かれた目には『パーティーに行きたい! 今すぐ!!』とハッキリと書かれていて、ギラギラと輝いている。


あぁ……。


嫌な予感がする……。


すぐるは困った表情の私に微笑みかけてきた。


王子様……。


本当に、そう思う。


綺麗で、カッコイイ笑顔。


けど、その王子様の口から出たのは、想像通り私を困らせる言葉だった。


「今から3人でパーティーに出よう」


やっぱり!!


そう言われるとわかっていたはずなのに、すぐるの言葉がズンッとのしかかる。


確かに、嫌なことがあって今はあんまり授業に出たい気分でもない。


けど、だからってサボることはないハズだ。


私が悩んでうつむいていると、律が背中を叩いてきた。


「いいじゃん、今日1日くらい。碧も嫌なことがあったんだからさ、パーティーに出てスッキリしようよ!!」


「碧の友達はいい事を言うな」


すぐるまでそんなことを言ってバンッと背中を叩くものだから、私は軽く咳き込んだ。


バカ力!!


「彼女に誕生日をド忘れされていた俺の気持ちがわからないのか?」


すぐるはそう言って、ズイッと顔を近づけてくる。


うっ……カッコイイ。


「ド忘れじゃなくて、知らなかったんだってば」


「頭に入ってないんだから同じことだ」


全然違う!!


眉を寄せて口をヘの字にしていると、すぐるが私のほっぺをグイッと押し上げた。


強引に、笑顔を作らされる格好になる。


「にゃに、しゅんにょよ!」


ジタバタと暴れる私に、すぐるが不意にキスをしてきた。


律が、「きゃぁ~!」と飛び上がって喜ぶ。



「ほら、行くぞ」





呆然と立ち尽くす私に、すぐるはそう言って歩き出した……。

☆☆☆

結局、きてしまった……。


目の前には、あの豪邸が建っていた。


初めてこの家を見る律は口をポカンとあけて、目をパチクリしている。


「こんな家だとは知らなかった……」


「でしょ? パーティーって、絶対普通とは違うよ」


コソコソと話す私たちを尻目に、すぐるが大きな扉を開けた。


その瞬間、私たちは同時に息を飲んだ。


目の前に広がるホールには、大勢の人。


その大半が外人で、みんな豪華なドレスを身にまとっている。


まるで、おとぎ話なんかで見るような武道会だ。



思い思いに飲んだり食べたりしていた人たちの視線が、いっせいに集まる。


私は、緊張から律のスカートを握り締めた。


律も、私のスカートをギュッと握り締めている。


「オォ! スグル!!」


金髪で、白いタキシードを着た男がすぐるに微笑みかける。


「やぁ、ルイス」


すぐるも、その青年に挨拶をする。


ルイス!?


なにこれ、マジで世界が違うんですけど!?


私は、律と2人してたじろく。

「ちょっと、なんか私たち場違いじゃない?」


「だから嫌だったのに、律が行きたがったんでしょ!」


「っていうかさ……、森山すぐるって一体何者!?」


確かに、そうだよね……。


16歳の誕生日にこれだけの人が、しかも外人が集まる。


そんなこと、私たちには絶対にないことだ。


「みんな父親関係の人間だよ。一応、俺も知り合いだけどな」


私たちの心の中をのぞき見たように、すぐるがタイミングよく説明をしてくれた。


「へぇ……」


としか、返事ができない。


ホール中がきらびやかすぎて、紺色の制服がやけに浮いている。


それだけで十分居心地が悪かった。


「ねぇ、すぐる。着替えなくてもいいの?」


真っ白なテーブルの上に並べられた料理を取っていくすぐるに、声をかける。


「着替えたいのか?」


「そう言う意味じゃないけどさ……ほら」


と、辺りを見回す。


「確かに、私ら浮いてる」


律も、何度か頷いて言った。


「よし、じゃぁドレスを着ればいい」


ドレス!?


「来い」


「ま、待ってよ!!」


人ごみの中ズンズン歩いていくすぐるを追いかけるだけで、私たちは精一杯。


けれど、すぐるは歩きながら一言二言ずつ挨拶をしていく。


本当に、森山すぐるって何者よ――!?


☆☆☆

衣裳部屋というところに通されたときには、私と律は肩で息をしていた。


「すっごい、人」


律の言葉に、私は何度も頷く。


「どれでも、好きなのを選べ」


すぐるの言葉に顔を上げると……、そこには、ドレス。


ドレス。


ドレス。


ドレス……。


山のようなドレスがズラーッと並べられていた。


「なに……これ」


唖然をして聞く私に、すぐるがピンク色のドレス私に突き出してきた。


思わずそれを手にとってから「え?」と、首をかしげる。


「碧はそれを着ろ」


え?


これ?


そういわれて、私は手の中のドレスをマジマジを見る。


薄いピンク色で一見すると可愛いのだけど、背中が広く開いていて、丈も短い。


これ、露出高すぎない!?


「うわぁ、セクシーじゃん!!」


それを見て、律が目を輝かせる。


「けど、私には無理だよこんなの」


とてもじゃないけど、恥ずかしくて着れない。


ブンブンと首をふる私に「大丈夫だ」と、すぐるが言った。


……?


「碧は、制服でかくれてるだけで胸も尻もある。絶対に、似合う」


そう言いきって、すぐるは微笑んだ。


その笑顔に、服の中をすべて見られているようで、顔が赤くなる。


なんか、最近私赤くなってばかりだな……。


体がむずがゆくて溶けそうになったり、触れてほしくなったり……。


ポーッとする頭をブンブンと振り、「わかった」と笑顔を見せた。


☆☆☆

ドレスは、想像通り露出が高く、太もものギリギリの場所まで見えてしまう。


高いヒールを履いて足を長く見せているのだから、もう少し長くてもいいのに……。


「碧……」


「すぐる……。ねぇ、やっぱり恥ずかしいよこれ」


私が言うと、すぐるは大きく首を振った。


「すっげ……似合ってる」


そう言って、白いタキシードを着ていつもより大人になったすぐるが、痛いほどに抱きしめてくる。


「あらあら、お熱いこと」


薄いブルーのドレスを着た律がそう言い、ヒョイと肩をすくめたかと思うと、人並みの中にまぎれていった。


「律!!」


呼び止めようとする私の手を、すぐるがつかんだ。


「気をきかしてくれたんだ。甘えればいい」


「でも……」


こんな格好じゃ恥ずかしくて2人でなんていられない!!


きっと、今も私は顔が真っ赤に違いない。


すぐるを、見てられない。


「碧、部屋を移動しよう」


「え?」


「顔が赤い。人に酔ったんじゃないのか?」


そう言ったかと思うと、私を簡単に抱き上げた。


お姫様抱っこ!!


近くにいた人たちから、冷やかしの声が飛ぶ。


「すぐるっ! 下ろして!」


ドレス姿だけでも十分に恥ずかしいのに、こんなことされたら死んじゃうくらい恥ずかしい!


そう思うのに、すぐるは下ろしてくれない。


かと言って、この状況で暴れたら絶対にパンツが見えてしまう。


私はしかたなく、すぐるの腕の中におとなしく納まっていることしか、できなかった……。
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